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足立慎吾の「出席番号2番の絵たわけ」

人気アニメーター・足立慎吾の原風景は母にあり!?

2015年09月07日 20:34配信
人気アニメーター・足立慎吾の原風景は母にあり!?

韓国の空港で一心不乱に光の呪文を唱えるその姿は、偉大な魔法使いか聖者か、もしくは……(編集部)

「WORKING!!」「ソードアート・オンライン」シリーズなどを手がけるクリエイターの足立慎吾さんによる月刊コラム「出席番号2番の絵たわけ」。第3回では、絵を職業に選んだ足立さんの原風景が明らかに!

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職業として絵を描く人々を知ったのはいつの頃だろう。

子供は、漫画やアニメのキャラクターは生きていて、それが人間の手で作られたものだとは考えていないものです。幼稚園の頃は子供がなりたい職業としてはメジャーだったパイロットになることと表明していた自分も、小学校3年生の頃には「夢があるから…」という理由で唯一、母に買ってもらえた「ドラえもん」に触れることで、どーやらこれは漫画家という人間が紙に描いているものだと気づき、ほどなくパイロットから漫画家へ転職することにしたのです。

それを危惧した母は、自分がお寿司をタダで食べたいからという理由で寿司職人になることを薦め、大人になっても夏休みがあるという甘い誘惑をもって教師を薦めたりと、息子に夢の変更を促していました。

それでも翻意することなく日夜ドラえもんばかりを描いている息子にクイズダービーで大活躍のはらたいらを例に出し、「かくのごとく漫画家とは頭が良くないとなれないから」と、漫画家までの過程に勉強があることを設定することで、学業そっちのけで絵を描くことにくさびを打ち込み、なんとか勉強させることに成功していました。

若い世代のためにお知らせしておきますと、はらたいらさんとは「クイズダービー」という人気クイズ番組のレギュラー解答者で、圧倒的な正解率の高さで、当時子供から大人まで知らない者はいないほどの人気者でした。司会の大橋巨泉さんがテレビで「漫画家のはらたいらさん~」と紹介してただけで、彼の漫画を見たこともないのに、足立さんの中で彼は漫画家代表だったし、クイズの正解率の高さからも「漫画家=頭がいい」という母親の設定に説得力を持たすに十分な存在でした。

そもそも漫画家を含む画業という職業選択自体が「篠沢教授に全部」な選択なんですけどね…

母は結婚前はデザイナーで広告の文字やカットイラストを描く仕事をしていたから、画業自体が厳しい仕事だと知っていただろうけど、絵を描くことを頭からは否定はしませんでした。

ある日、母が古びたプラスチック箱を押入れから取り出して、ご機嫌でドラえもんを描いてる僕の横に座りました。使い込んで蓋が少し割れているその箱から見たこともない道具を取り出し、僕のドラえもんにインクでペンを入れて、あの縦縞のスクリーントーンを貼って見せてくれました。

おまけにカラス口でコマの線も引いて、吹き出しまで描かれたソレはもう漫画本で見る「ドラえもん」そのもので、さっきまで鉛筆で描かれた「僕の絵」だったドラえもんに命が入ったように見えて感動したものです。

今思い返すとあの経験が大きかったかもしれませんね。

10歳の頃にペン入れしたり、スクリーントーンを貼ったりする経験をさせておいて、寿司職人にさせようとしたって無理ってものですよ(笑)。些細な親の言動・行動が子供のその後を形成するわけです。我が子をミニコンや男性恐怖症にするのは十分に注意しましょう。

親とは何か? 子育てとは何か? そのすべてを教えてくれるアニメ「WORKING!!!」を制作中の足立さんです、こんにちは。

さて、この幼少期の体験が後押ししたのか、その後も地味に絵を描き続け、ロクなアルバイトも経験せずアニメーターになり、鉛筆ではなく重い荷物を持たされ、ケムリ吹き出す飛行機に乗って韓国の金浦空港に降り立った足立さん。初めての外国で先導してくれる人もおらず、こういう時人間はあらかじめインプットされた行動しかできません。とりあえず会社に言われた通り、預けた原画やら動画やらの荷物を受け取り、税関へ向かいました。

荷物を見た職員が何やら言ってくるが、当然言葉はわからない。こんな時、日本で授けられた魔法の言葉がありました。

「アニメーションペーパー」

これを言えばだいたい大丈夫とインプットされていた足立さんは、高らかに宣言します。「あにめいしょんぺいぱーーーー!!!!」と。

すると、先ほどまでの税関職員の疑いの目が一転、「ああ…はいはい、わかった…」みたいな顔をして通してくれるではないですか!? というのも当時韓国には日本のアニメ会社が頻繁に空港を出入りしていたから、アニメ素材だとわかるとすぐ通してくれたんですね。

こうして絶大な信頼感を得たこの光の呪文を、浴びせられるすべての韓国語に食い気味に唱えて解決していきます。もう名前やトイレの場所を聞かれていたとしても、一心不乱にこの呪文を唱えながら出口へ向かいます!

段ボールを積み上げた台車を押しながらインプットされた最後の行動を実行。

「税関を通ったら、この『インボイス』という紙を『コトラ』という窓口に出しなさい」

…正直、クエスト内容はさっぱりわかりません。

「コトラコトラコトラ…KOTRA、あれか…」 見つけた窓口に「インボイス」という呪文書を手渡すと激しい呪文攻撃を受けましたが、ここでも光の呪文「あにめいしょんぺいぱーーーー!!!!」もう、パルプンテ並みの期待感を込めた呪文です。

異国の地で数々のクエストをこなし、冷房の効いた空港から熱風をかき分けるように夏のソウルに躍り出た足立さん。にじむ汗もすがすがしい…ついにやりきった…

直後!!! 見知らぬ人々が韓国語を発しながら台車に大挙して押し寄せ、次々に段ボールを下ろしていくじゃないですか!

実はアニメ業界には原画や動画などのアニメ素材を日本と韓国で運搬する“第一協会”というものがあって、それに参加している日本の各制作会社が持ち回りで人を出して、複数の会社の作品素材を一挙に運搬しているのです。そう、この時の自分は韓国に動画チェックで行くついでに、この持ち回りの運び屋を兼任してたというわけなのです。

多くのアニメ制作会社が根っこの部分でこのように協力体制にあることは、あまり知られていないかもしれませんが、つまり到着したら韓国のアニメ会社が日本からの素材を待ち受けていて、宛先の書かれた段ボールをテキパキと仕分けをして持っていくんですね。

そのことをよく知らない自分は、言葉もなく次々に身元不明の人達に荷物を奪われていくようにしか思えず…

異国の夏の空、そんな自分ができること、それは…

最後のMP で放つ渾身の

「アニメーションペーパーーーー!」

…あだち の こえは やまびことなってむなしく あたりに ひびきわたった。

【次回に続く!】

第12話「『大虐殺』Massacre」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「『大虐殺』Massacre」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「『大虐殺』Massacre」より 第12話「『大虐殺』Massacre」より 第12話「『大虐殺』Massacre」より 第12話「『大虐殺』Massacre」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より 第12話「出血性ショック(前編)」より #26「あやかしお宿に美味い肴あります。」より

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