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へそ曲がりの幼女が戦争を生き抜く姿を――「幼女戦記」シリーズ構成・脚本 猪原健太インタビュー

テレビ 2017年02月11日 01:30配信
「原作ノベルを読んで“ブラックなコメディ路線“骨太な戦記物路線”の2つが大きく心に残りました」(猪原さん)

「原作ノベルを読んで“ブラックなコメディ路線“骨太な戦記物路線”の2つが大きく心に残りました」(猪原さん)

テレビアニメ「幼女戦記」のシリーズ構成・脚本を担当しているのは猪原健太さん。アニメだけでなく、テレビドラマや小説なども執筆し幅広く活躍する脚本家です。テレビアニメでは「デス・パレード」や「亜人」などに関わり、本作で初のシリーズ構成。加えて全話脚本を執筆と、テレビアニメ「幼女戦記」の世界観を大きく支えるひとりです。今回は猪原さんにお話を聞き、原作ノベルからどのように脚本へ再構成していったのか、また、「幼女戦記」の魅力などを存分に語ってもらいました。

――猪原さんと上村監督は、「残響のテロル」第8話で演出補と脚本という立場で作品上では共演されているんですよね。

猪原健太(以下、猪原):そうなんですよね。でも実際は、当時はお会いすることもなく、その情報も後から知りました。

――そんなお2人が監督とシリーズ構成ということで本作に関わられています。猪原さんは今回が初のシリーズ構成ということですが、どのような経緯でお声がかかったのでしょうか。

猪原:アニメーション制作を担当しているNUTの角木卓哉プロデューサーからお声をいただきました。こういう原作があるのでちょっと読んでみてくれないかと。

――原作ノベルを読んだ印象はいかがでしたか?

猪原:そうですね、大きく2つ心に残りました。ひとつはターニャの思惑とそれに対する周りのギャップが生み出すシニカルでブラックなコメディ路線。もうひとつはカルロ(・ゼン)先生の膨大な知識量に支えられている骨太な戦記物路線。情報量的にも内容的にも重厚な作品だな、と。やはり情報量の多さは印象に残りました。アニメにするなら、できるだけ原作の会話をそのまま使いたいんですけど、例えば第4話なら会話だけで1話が終わってしまうくらいのボリュームが原作にはあって、どう取捨選択するかを読みながら考えていました。

――原作で印象深かったところは?

猪原:アニメで言うと終盤のネタバレになってしまうので伏せますが、「どうしてもここは使いたい」という部分がありました。アニメでは、そこに向けてターニャの心の動きを丁寧に追っていったつもりです。

――原作を全12話のテレビアニメに落とし込むに当たって、構成ではかなり気を遣われたのではないでしょうか。特に第1話の時系列を変えた部分など、原作ファンからも驚きの声が上がっていたようですが。

猪原:最初の構成案は、ほぼ原作通りの時系列でした。ただ、やっぱり第1話にインパクトが欲しい。打ち合わせでも「プライベート・ライアン」のように冒頭で一気に戦場へ引きずり込む感じが欲しいとなって。その中で「何なの、この人?」と思ってもらうためにターニャの内面描写を省き、視点をヴィーシャに持っていきました。あとはターニャの異常性には気づいているもうひとり、レルゲン。この2人に語り部を担ってもらいました。

――戦火の中、ヴィーシャからの視点であることで、まさにターニャが「幼女の皮をかぶった化物」然としたインパクトがありました。それからの第2話も、また驚かされました。

猪原:何の説明もなくガラッと変えてしまいました。普通なら回想の繋ぎを入れたりするんですけど、そういう手続きを一切省いて、いきなり現代の話に。海外ドラマでは次の話数で突然違う人の話から始まったりしますよね。僕が海外ドラマ好きというのもあり、サブタイトルで「プロローグ」と出しておけば伝わるかな、と話し合い、視聴者の皆さんを信頼してやらせていただきました。

――シナリオを書いていく中で苦労したポイントはどういったところでしょうか。

猪原:やはり膨大な情報量をどう整理していくのかということと、軍事関連の描写ですね。例えば第4話にある「編成官にねじ込んでおいた」というセリフ。とても重要なセリフなんですけど、実際は軍隊内で形骸化している”編成官”という位を経ることで階級を上げることができるという裏技的なものらしいです。今回作品に関わる前に、ある程度知識を入れていたのですが、こういうところではカルロ先生のフォローなくては追いつかなかったですね。

――ひと言に込められている意味合いの深さが絶妙ですね。

猪原:そうなんです。ただ、アニメは小説みたいに読み返せないので、どうしても焦点を絞らなくてはいけません。カットせざるを得ない箇所も多く、原作ファンの方には申し訳ないとも思っています。アニメでは各話数毎に伝えたいことをまとめたら、更にグッと引き締めていくんです。上村監督がそこにリズム感というか、シーンの切り替えなどですごく気持ちよく演出して下さっていますね。例えば、サブタイトルがポンッと出るタイミングなんかもうまくて、文字以上の情報が伝えられるようになっていると思います。

――舞台はいわゆる世界大戦の末期戦。各国の勢力がどんどん変化していくところは書いていて苦労されたのではないでしょうか。

猪原:詳しい勢力変化に関しては原作に委ねて、アニメではターニャがどう動いていくのか、その中で物語にうねりを作っていこうとしました。原作では各国の内情も描かれますが、アニメでは帝国軍・ターニャから見た周辺各国の動きとなっています。その分、ターニャにとっての各国の描写はできるだけ丁寧にしようと心がけました。

――キャラクター像についてもうかがいたいのですが、ターニャはどういった人物だと捉えていらっしゃいますか?

猪原:どうなんでしょう…。ある意味イヤな奴なんですけど、人間味もある。天才と思っているわけではなく、コンプレックスの塊のくせに、それでいてプライドの高いところや高慢なところもある。世渡りがうまいかと思えばうまく行かなかったりと、「こういう人物」と言えないところが実に人間臭いと思います。

――まさに振り幅が大きいキャラクターですが、描く時に気をつけた部分はありますか?

猪原:基本は原作通りですが、1本筋を通さないと見ている人が話に取り残されてしまうと思ったので、何を考えているのか、こういう性格だからこうする、という部分はより分かりやすくするよう意識しました。

――ヴィーシャはいかがでしょうか。

猪原 彼女はわからないですよね…。ターニャに心酔するわけでもないけど畏怖や尊敬の念は持ち、同性としての気の置けなさもあり。どう切り取っても成り立つキャラクターにしたいな、と思っていました。ただ、いつもターニャのそばにいる人間なので、あまりリアルな描写にしすぎず、フワッと受け止められるキャラクターというのは心がけていますね。だから、息が詰まるようなシーンではヴィーシャに振って空気を抜いてもらいました。捉えどころがないながらも、コメディ要員的な役割も任せられるし、書きやすいキャラクターではありますね。

――書きやすいキャラクターはヴィーシャの他にいましたか?

猪原 203大隊のグランツやヴァイスも、役割として明確なキャラクターだったので悩まずに書けました。でも、やっぱりヴィーシャが一番勝手に動いてくれましたね。

――今、放送は第6話まで終了しました。放送をご覧になってどうお感じですか?

猪原:シナリオを書いている時に難しいかなと思っていたのは動きの少なさでした。特に第4話は完全な会話劇になってしまって画(え)が持つかな、と。でも、そこをアニメにしかできない絶妙な表情芝居で見せてくれて、「アニメではこういう表現ができるんだ」と感動しました。

――猪原さんはこの作品の魅力はどういうところにあると感じられていますか?

猪原:先ほども言ったシニカルでブラック、自分の思惑と外の評価のギャップや「どうしてこうなった!」というセリフにも見られるコメディ部分。それからやはり、普遍的なテーマを扱っている部分です。人生における逆境の中をどう生きていくのか。それを「戦争に抗う幼女」という形で描いていると思うので、アニメの最終的な落としどころとしても、その点を強調しました。

――逆境を生き抜く。

猪原:戦争はダメ、平和がいい、という単純なものじゃなくて、ターニャは存在Xの言いなりにはなりたくないというモチベーション、ある種の意地や自己の尊厳で生き延びる。存在Xが「過酷な戦争時代に送り込んでやろう」と言うから、「じゃあ、その戦争を終わらせて平和な場所に行ってやろう」と生き延びる。逆境にあらがうターニャの生き様、というのが物語としても普遍的な力強さを持つのだと思います。

――第7話以降の見どころでは、よりそういう部分も前面に見えてくるんですね。

猪原:この先はコメディ的な部分に加え、ハードな戦記物としての面も大きくなっていきます。それから田中翔プロデューサーとも話していたんですけど、全12話中10話に戦闘、もしくは激しい飛行シーンがあるということにシナリオを書き終わってから気づいて…。なんてカロリーの高いものを作ってしまったんだろう!と(笑)。ですが、「カロリーが高いからやめて」と言われなかったのは、ありがたかったですね。

――それだけ現場の士気が高いと。今後の展開も非常に楽しみです。最後にメッセージをお願いできますか?

猪原:まず原作ファンの方へ。クライマックスに向けての緻密な作戦展開は、アニメなりに原作を再構成して丁寧に描いたつもりですので、ぜひ確認していただきたいと思います。そしてアニメから入った方に。少しでも「幼女戦記」に興味を持っていただけたら、コミックなり原作小説なりを手にとっていただいて、より深く作品を楽しんでいただければ、これほど嬉しいことはないなと思います。【取材・文=細川洋平】

■テレビアニメ「幼女戦記」
放送  :AT-X…毎週金曜22:00~ ※リピート放送あり
     TOKYO MX…毎週金曜25:05~
     サンテレビ…毎週日曜25:00~
     KBS京都…毎週日曜23:30~
     テレビ愛知…毎週日曜26:05~
     BS11…毎週月曜24:30~
先行配信:AbemaTV…毎週金曜25:35~
一般配信:ニコニコ動画・GYAO!ストア・Rakuten SHOWTIME・ひかりTV・バンダイチャンネル・U-NEXT・J:COM オン デマンド・PlayStation®Store・DMM.com・ビデオマーケット・HAPPY!動画・ムービーフルPlus
スタッフ:原作…カルロ・ゼン(「幼女戦記」/KADOKAWA刊)/キャラクター原案…篠月しのぶ/監督…上村泰/キャラクターデザイン・総作画監督…細越裕治/シリーズ構成・脚本…猪原健太/アニメーション制作…NUT
キャスト:ターニャ・デグレチャフ…悠木碧/ヴィーシャ…早見沙織/レルゲン…三木眞一郎/ゼートゥーア…大塚芳忠/ルーデルドルフ…玄田哲章

リンク:アニメ「幼女戦記」公式サイト