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「重神機パンドーラ」CGディレクター・後藤浩幸インタビュー『さらに”進化”した世界CGの要素を』

イベント 2018年05月30日 20:00配信
「重神機パンドーラ」CGディレクター・後藤浩幸インタビュー『さらに”進化”した世界CGの要素を』

「重神機パンドーラ」より

(C)2017 Shoji Kawamori, Satelight / Xiamen Skyloong Media

レオンたち特殊部隊パンドーラは、可変ビークル・MOEVを駆り特異進化生物B.R.A.Iと戦う。本作の重要な見せ場の一つであるMOEVとB.R.A.Iとの戦闘シーンは、3DCGを中心に描かれています。その見せ場を担当するCGセクションはどんなお仕事をしているのでしょうか。本編作業が佳境に突入中の後藤浩幸CGディレクターに「パンドーラ」の制作現場の試行錯誤を伺いました。

――後藤さんは、この「重神機パンドーラ」という作品について、最初どんな印象をお持ちになりましたか?

後藤:弊社では「アクエリオン」シリーズや「マクロス」シリーズといった、ロボットアニメをシリーズ作品としてつくらせていただいているのですが、それとは違う世界観や新しいロボットアニメの開拓を任せていただいたことをうれしく思いましたし、同時にプレッシャーも感じましたね。「パンドーラ」という作品は「進化」というテーマがあるのですが、ほかの作品からさらに「進化」したCGの要素を入れていきたいなと思ってここまでやってきました。

――今回「進化」したことはどんなことですか?

後藤:この作品の舞台は、荒廃した大地に特異進化生物B.R.A.Iというクリーチャーがいて、人間が隅っこに暮らしている世界。だから「きれいなロボットにしたくない」と(総監督の)河森(正治)さんからリクエストがありまして。メカの質感が、あまりにもきれいすぎると荒廃した感じがでないので、メカに汚しを入れて背景となじませるようにしています。今回はリアルな汚しのテクスチャを作るためSubstance Painterというペインティングツールを取り入れました。このツールを使うことで通常のアニメのセル質感とは違った面白い質感が表現できたかと思います。

――今回の3DCGセクションのお仕事は具体的にどんなものになるのでしょうか?

後藤:そうですね。最も派手なものはB.R.A.Iと可変ビークル・MOEVのメカアクションですね。B.R.A.Iはものによっては作画さんにも描いていただいていますが、基本は3DCGが担当しています。また、MOEV格納庫やブリッジなどの背景についてもかなり複雑な形状でしたので、3DCGでレイアウトを出力しています

――今回の作業量はどれくらいの規模ですか?

後藤:だいたい2話に一度、敵となるB.R.A.Iが新規で登場しますし、MOEVを含めると全部で30体前後をモデリングしています。

――今回のMOEVの3DCGモデリングにあたっては重神機をデザインされた河森さんと直接やりとりされたと思います。どんなやりとりだったのでしょうか?

後藤:河森さんとのやりとりは少し特殊でして、河森さんは変形メカをデザインされる時、最初はレゴブロックで作業されます。ですので、最初の打ち合わせは、河森さんがレゴブロックでつくられたメカを用いて、その場で変形の機構を実演していただくというもの。僕たちは皆カメラをもって、それを写真と動画で撮影するんです。そして、それを参考にまずはレゴブロックのかたちのまま3DCGでモデリングしていきます。

――3DCGでレゴブロックを再現するわけですね。

後藤:そうです。そうすることで、変形に嘘がない3DCGモデルがつくれるようになります。そのモデルの画像を河森さんにお渡しして、加筆・肉付けしていただくわけです。さらにその加筆した画像をもとに、モデルをつくりこんでいき、またそのモデルの画像を河森さんにチェックしていただく。そのやりとりを何十回も繰り返して、メカをつくりあげていきます。例えばP1などは、こういったやり取りのなかで、バルカン砲の位置を腹部に変更したり、腕の長さを調整したり、デザインの細部も変更していたりします。

――レゴブロックをベースにしたことでMOEVの完全変形が実現するという。

後藤:そうですね。ただ難しいのは、レゴブロックって微妙に遊び(隙間)があるんです。レゴブロックそのものがたわんだり、ゆがんだりしている。そのため、レゴブロックでは上手くハマっていても、3DCGで作り込んでいくと少しズレたりするんです。そこも含めて3DCGで調整しながらつくっていきます。これは「アクエリオン」シリーズや「マクロス」シリーズでも行っている伝統的な作業ですね。

――P1やP2は地上を走るビークルです。「マクロス」シリーズのような飛行機との違いはどんなところに感じましたか?

後藤:そうですね。今回に限ったことではないのですが、車やバイクの動きは人がよく目にしているものなので少しでも動きがおかしいと違和感を感じてしまう。そのため、このプロジェクトが始まる前から、3DCGのスタッフには車のムービーを見て挙動を勉強していただき、またアニメーション練習も繰り返し行っていただきました。また、車やバイクのモデルを作るにあたっては、河森さんの東京オートサロンの取材にモデリングスタッフも同行させていただきました。空力の効いたクルマのフォルムにある機能的な美しさなど、河森さんがこだわる部分を予め共有していただいたおかげで、それらをMOEVの形状に反映させることができたかなと思っています。

――特異進化生物B.R.A.Iを3DCGで表現してみて、いかがでしょうか。

後藤:(B.R.A.Iデザインの)宮崎(真一)さんがB.R.A.Iのコンセプトやデザインをつくってくださったのですが、大きさや迫力が出るようにモデリングするのが難しかったですね。そこで、ディティールをかなり細かく入れて、スケール感を出すようにしたり、左右非対称にして生物感が出るようにしたり。身体に金属のパーツがあるときは、反射光を強く入れて強調したりもしています。

――スタッフ面ではどんな編成で臨んでいるのでしょうか。

後藤:20人弱のスタッフで制作しています。3DCGのモデリングでは、MOEVのテラロイド形態をP1、P2、P3で、それぞれ違うスタッフがモデリングを担当していまして、3種3様、各モデラーの個性が出すことができたかなと思っています。アニメーションを担当するスタッフは4チームに分かれていて、ローテーションで回しています。ただし、第1話などは140カット近く3DCGのカットがありましたので、2チーム体制でつくりました。

――現時点まで印象に残っているお仕事はありますか?

後藤:サテライトで作品をつくっていると、たまに見せ場のシーンで、「3DCGにお任せ」というシーンがあるんです。第6話の鳥B.R.A.Iとクイニーが戦うシーンがまさにそれでした。このカットは(CGスーパーバイザーの)原田(丈)さんに担当していただきました。クイニーは空神拳という拳法の使い手ということでしたが、空神拳自体設定がありませんでしたので原田さんに空神拳を考えていただくことから始めました。その期待に応えるべく、ジャッキー・チェンの「蛇拳」をアクションをベースに構成し、見事な空神拳を作り上げてくださいました。あがってきた本編を見て感動しましたね。そういったオマージュの部分も含め、楽しんでいただければと思っています。

【取材・文:志田英邦】

■テレビアニメ「重神機パンドーラ」

放送:TOKYO MX…毎週水曜23:30~

WOWOW…毎週金曜21:30〜

BS11…毎週金曜23:30~

    MBS…毎週土曜27:38〜

配信:Netflixにて日本先行独占配信/全世界展開決定

スタッフ:原作、総監督、重神機デザイン…河森正治/監督…佐藤英一/シリーズ構成…根元歳三/キャラクター原案…江端里沙/キャラクターデザイン…安彦英二/B.R.A.Iデザイン…宮崎真一/アニメーション制作…サテライト

キャスト:レオン・ラウ…前野智昭/クイニー・ヨウ…花澤香菜/ダグ・ホーバット…津田健次郎/クロエ・ラウ…東山奈央/グレン・ディン…内田雄馬/ケイン・イブラヒーム・ハサン…石塚運昇/ジェイ・ユン…梅原裕一郎/セシル・スー…茅野愛衣/ジーク…中村悠一/ワン…近藤孝行/フォー…石川界人/ロン・ウー…石田彰

リンク:「重神機パンドーラ」公式サイト

    公式Twitterアカウント・@unit_pandora

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