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業界志望者必見!神戸電子専門学校「アニメ・声優業界スクランブルトーク!」レポート

その他 2019年09月12日 19:19配信
業界志望者必見!神戸電子専門学校「アニメ・声優業界スクランブルトーク!」レポート

神戸電子専門学校の「アニメ・声優業界スクランブルトーク!」に登壇した岸誠二監督、脚本家の上江洲誠さん、音響監督の飯田里樹さん、声優の花守ゆみりさん

さる8月18日に神戸電子専門学校にて、アニメーション監督の岸誠二さん、脚本家の上江洲誠さん、音響監督の飯田里樹さん、声優の花守ゆみりさんによる特別講義「アニメ・声優業界スクランブルトーク!」が開催され、プロを目指す学生の皆さんが熱心に聞き入りました。

前半は「実録版 アニメが出来るまで」と題し、アニメの制作過程について、包み隠しのないトークが繰り広げられました。

初めに"これからプロになる皆さんに知ってほしいこと"として、プロの日々の暮らしが説明されました。まず、常日頃から映画や漫画、ゲームや演劇等を好きで観まくること。他の人の作品を観て一喜一憂すること。そして逆に、映像作品のことを忘れて旅行やスポーツ、趣味に励むこと。これらは、アウトプットばかりでは枯渇しまうので、インプットするためです。

岸さんは自分のやりたいことが引き出しになって仕事に活きてくるから、いろんなことをやっておいた方が良いと実感を込めて語りました。上江洲さんは何でも調べて詳しくならなくてはならないので、昔は嫌いだった運動や勉強なども好きになっていくことを発見したと語りました。「(フリーランスは)振り込まれるギャラに喜び、目減りする貯金に怯える」などと笑いも交えながら講義は盛り上がりました。

次に、作品の準備段階であるプリプロダクションが説明されました。まず、各社のプロデューサーと監督、脚本家による企画・シナリオ会議を行ないます。何をどう作るのか、どのような成功を目指すのか、最終的にどのような形で売り上げを出すのかを決めます。作りたい物を好き勝手に作るわけではなく、クライアントの要望に応えて予算やスケジュール等の条件内で出来ることの取捨選択を、とても冷徹に判断します。

そして内容が決まり、脚本が出来上がったら、監督のプランを元に設定、絵コンテ等を発注して、後に続く大勢のスタッフにプランが伝わる物を作ってもらいます。岸さんは、作品の方向性からずれている物が上がってくることが一番大変だと語りました。

それから作画、ペイントと進めていきます。画が出来てきたら音響作業に入ります。音響監督はまず監督と打ち合わせして、音の方向性を探ります。飯田さんは音響を"すでに形ある物をお化粧するセクション"だと語りました。同じ映像でも、音の違いでまったく印象が変わるのが面白いそうです。

そして終盤。撮影と編集によって出来の良くない箇所を修正したり、万が一の場合はカットしたりと、岸さんはこの工程を"作品の質を守る最後の砦"としてこだわるそうです。そうして完成し、放送された後は、視聴者の感想に一喜一憂し、天狗になったり、反省したり、楽しく打ち上げをしたりして、そしてまた作品を作りたくなる、と締めました。

後半は「花守ゆみり先生に聞く声優の頑張り方」と題し、花守さんが様々な質問に答えました。声優に運動神経や筋肉は必要かとの問いに、発声する時の体幹が大切だったり、体を動かすイベントの仕事も増えていたりと、必要と思う機会は多々あると答えました。飯田さんは補足として、長時間の収録を乗り切れるように、特に顎の筋肉を鍛えておくと良いと語りました。

何のアニメが好きだったかという問いには、幼い頃はディズニーチャンネルや「ポケットモンスター」を好んで観ていたと答えました。アニメ以外では読書が好きで、これは今の仕事に生きているそうです。声優は台本の読解力を求められるので、読書量は重要だと飯田さんは説明しました。上江洲さんは、収録時には声優の質問に努めて答えるようにしており、そのやりとりで作品が更に良くなると語りました。

花守さんはデビュー間もない頃の苦労として、収録現場は、自分が思った以上に他人に見られ聞かれ評価され、それでも自分の思った物を出さないといけない場だということに、人見知りだったのでとても緊張したと語りました。

スタジオでのオーディションは、1人でセリフを喋ることもあれば、掛け合いすることもあります。その場合、他のオーディション参加者とその場で話し合って演技プランをすぐ決めるそうです。岸さんと飯田さんは、それらの振る舞いも見ていると語りました。

オーディションは何十という人たちが参加するので、昨今はテープオーディションを一次選考とすることが多いようです。岸さんは、自分の中のキャラクターの印象と合っているか、お芝居が出来ているかを見ているとのこと。「1人を選ぶというより99人を落とす作業なので、数秒聞いてダメならもう落とす」そうです。なので「落ちて当たり前であり、むしろ自分を魅せる場だと考えてほしい」と飯田さんは説明しました。印象に残れば、その役には受からなくても別のキャラクターで採用したいとなる可能性があるそうです。花守さんは、キャラを理解して良い芝居をするのは勿論、抜きん出るために自分なりの一味を足すことを意識していると語りました。

台本を受け取ってから本番までの準備として、花守さんいわく、一読目は話の大まかな流れを見ます。二読目は担当キャラの感情を把握し、登場しないシーンでもどうしているかと行間を埋める作業をして、三読目で尺の中での演技を考えます。そして四読目で整ったところで、それを本番では逆に壊しますと語りました。壊すというのは、現場は多人数で会話のキャッチボールをする生ものだからです。飯田さんは、作り過ぎると現場で対応できないのでその工程は正しいと説明しました。また、花守さんは台本に表情をイラストとしてメモするそうです。

役作りについて、花守さんは自分はキャラクターの声帯だと思っていると語りました。そのキャラを理解しようと努め、自分を消して演じるタイプだそうです。キャラはいろんな方の考えがある中で装飾するようにして作ってゆくもので、自分の解釈だけでなく周りの意見を聞くことが大切だと強調しました。上江洲さんは、自分をキャラクターと同一にするタイプもいたりと、いろんな役者がいて良いと説明しました。

それから花守さんは、声優の仕事はすごい先輩方が大勢いて、どんなに頑張っても自信を失くしてしまう時が多々あるので、心の拠り所を仕事だけに置くと潰れてしまうと思うそうです。なので家族だったり友人だったり何でもいいから、素の自分を受け入れてくれる、自分を許せる場所を作ってくださいと語りました。初めは何でも出来なくて当たり前で、ダメだったら「泣いて寝て食べて復活してください!」と声優志望者たちに熱く語りました。

そして最後に、学生の皆さんに向けて。飯田さんは、入ったら何をするかを考えて業界に来てほしいこと、分からないことがあれば聞くことが大切と説きました。上江洲さんは、「やれと言われればやりますけど……」と消極的な態度は厳禁であると説きました。積極的に「やるやる!」と手を上げた者が前に進めるのだと、自分たちもそうやって戦ってきたから今があるのだと語りました。

花守さんは、この業界は頑張る人には優しいので、流されず誰かのせいにせず、自分の意志と覚悟を持って進んでほしいと説きました。そして岸さんは「フィルムを作るのは楽しい、これに尽きる」と説きました。好きなことに真剣に取り組めば大変なのは当たり前で、どんなに辛くとも「面白いフィルムを作りたい!」と楽しめる人が業界に来ればいいと語りました。

4人の先生からの「現場で待ってます!」という激励で、濃密な講義は終了しました。

【取材・文:山田花名】