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「蜘蛛ですが、なにか?」リレーインタビュー フィリメス役・奥野香耶「“キャラを作っているフィリメスを作る”イメージで演じています」

フィリメスを演じる奥野香耶さん
フィリメスを演じる奥野香耶さん(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


ユーゴーの暴走により、人間サイドが大きく動き出した『蜘蛛ですが、なにか?』。リレー連載第10回は、前世でシュンたちの担任を務めていたフィリメス役の奥野香耶さんにお話を伺いました。フィリメスといえば、親しみやすい先生「岡ちゃん」としての顔と、この世界の裏側を知っているかのような素振りを見せる、ミステリアスなキャラクター。その彼女をどのように演じられているのでしょうか。

フィリメス
フィリメス(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――第7話をご覧になった方は、フィリメスって一体何者なのだろうと思ったはずです。

奥野 第7話は、フィリメスのかっこいいところが見せられるエピソードなので嬉しかったです!

――ユーゴーのスキルを封印するシーンがありましたが、これまでの印象とは全然違いますね。

奥野 本来はこっち側の性格の人だと捉えて、かっこよく、冷静で冷淡な印象を意識しました。このときの「支配者権限を発動」からのセリフはオーディション原稿にもあったセリフなんです。オーディションのセリフが本編に出てくるときってドキドキするんですが、緊張しつつも「あのときのセリフだ!」と思って楽しく演じさせていただきました。

――オーディションは最初からフィリメスで受けられたんですか。

奥野 はい。あとは……カティア、フェイ、スーと、女性キャラクターはだいたい受けた気がします。

――そのときのフィリメスの第一印象はいかがでしたか。

奥野 先生だから大人っぽい雰囲気なのかなと思いきや、語尾を伸ばすように話すかわいらしい人だったので、声色や言い方をどのラインにしようか最初は少し悩みました。それこそより大人っぽくしたり、子どもっぽくしたり、その中間もあったり。ただ、先ほどもお話ししたようにユーゴーのスキルを剥奪するときのセリフは、かっこよく、別人のように話すようにしました。

――アフレコが始まってからは、どんなことを意識するようにしていますか。

奥野 板垣(伸)監督がマスコットのような雰囲気を出してほしいとおっしゃっていたので、普段から明るい話し方を意識して、何かを誤魔化しているときはより明るく演じるようにしています。フィリメスは、本当はこの世界の状況をそれなりに知っている、実はシリアスなキャラクターです。それをあえて隠しているので、そういうときはよりあっけらかんとした感じを大事にしています。

TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より
TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――「実はシリアスなキャラクター」というのは、最初から意識されていたんですね。

奥野 はい。第2話で若葉さんについて尋ねられ、「まだわからないんですよねぇ」と返すシーンがあるんですが、本当に知っているのか知らないのか、どちらにも取れる思わせぶりな感じを意識しました。監督からも「この時点でフィリメスはいろいろと調べて生徒の状況を把握しているけれど、誤魔化している感じを出していきましょう」と言われたんです。ここ以外でも、「キャラを作っているフィリメスを作る」というイメージで演じるところは多いです。

――第7話の後半は「ですぅ」という喋り方もなくなりましたよね。

奥野 これがフィリメスの本来の姿で、普段はかなりキャラを作っているんです。

――フィリメスのミステリアスさが強調された第7話でしたが、今後、どんな形で活躍するのかとても楽しみです。

奥野 ほかの生徒よりも情報を持っていますし、今後現れる敵についても彼女は知っていたりするので、その行動や発言にはぜひ注目していただきたいです。ただ先生としては、復讐心を募らせるユーゴーに対してやっぱり複雑な気持ちがあると思います。仮に、敵になったとしても生徒を捨てきれないんじゃないかなと思いますし、ユーゴーにどう向き合うのかも注目していただけたら嬉しいです。

 TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より
TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――ちなみに、演じていて印象に残っているシーンはどこですか。

奥野 第7話の前半のセリフは、実は何度かやり直したんです。「~そのうち四人は死亡を確認しています」辺りですね。深刻に言い過ぎてもフィリメスではないし、明るすぎてもセリフとの違和感がある。あまり恐怖心を煽らず、でもちゃんと情報は伝えるような、いいバランスを探るイメージでした。その調整が難しかったです。

――元生徒たちとの関係性についてはどうご覧になっていますか。

奥野 演じていて気づいたのは、「シュン君!」というセリフが意外と多いことですね。シュンを呼んだり、心配したりするセリフがたくさんあって、どの生徒のことも大切に思っているけれど、その中でも特にシュンのことを気づかっているのかなと思いました。私も、シュンは守ってあげたくなるような子だなと思います(笑)。

――奥野さんご自身も、そう感じているんですね。

奥野 はい。優しいし、いい子だし、正義感もあって。その上で、堀江(瞬)さんの声がシュンの弱さを意識されているのか、守ってあげたくなるような声なので、シュンを見ているとそういう気持ちになります。

――フィリメスは生徒からの信頼も厚いですよね。

奥野 あのユーゴーですら気さくに「岡ちゃん」と呼んでくれて、なんだかかわいいなって思いました。ただ、生徒たちからするとちょっと不穏な存在でもあるのかなと思います。戦わなければいけない世界なのに、スキルを鍛えてはいけないと忠告してくるし、しかもその理由を教えてくれない。信頼できる先生が敵とも味方ともつかない感じは、不安なんじゃないかなと思います。

――奥野さんは、人間サイドの関係性をどうご覧になっていますか。

奥野 私自身もフィリメスを通して作品を見ているので、生徒みんなを守りたいという気持ちが強いです。シュンに反発するユーゴーについても、元生徒だと思うとどこか愛おしさを感じます。もともとそんなに悪い子ではないと思うんです。でも、せっかく転生して王子になり、才能もあるのに、それよりもずっと好条件のシュンがいて、みんなからもてはやされている。すごく嫌だろうし、生きづらかっただろうなと。フィリメスを演じる身としては、そこで暴走して道を踏み外そうとしているのがとても残念です。

――フィリメスがシュンとユーゴーの人間関係を気づかうシーンがありましたよね。

奥野 第7話でシュンに「友達と仲良くしなければなりませんよぉ」って言っていましたね。本気で言いすぎても生徒に鬱陶しがられそうですし、その辺、先生としても気が重かっただろうなと思います。

――ほかに気になるキャラクターはいますか。

奥野 オーディションで受けた役なので、カティアはすごく気になります。女性として喋るときとシュンたちと喋るときで口調が変わるんですが、たぶん役者さんによって演じ方が大きく変わるキャラクターだと思うんです。完全に声を分けるやり方もあるでしょうし、声は変えずに口調だけを変えるやり方もある。東山(奈央)さんは一体どう演じられるのか、お芝居がずっと気になっていて。実際に拝見して、なるほどこう演じられるのかと納得させられました。ちょっとした勉強気分で見ているところもあります(笑)。カティアとシュンの関係性がどうなっていくかも気になるので、今後も注目していきたいです。

――では、蜘蛛子パートの感想についても聞かせていただけますか。

奥野 私、もともと蜘蛛が好きなので、原作小説の表紙にいるピンク色の蜘蛛子ちゃんを見て、「かわいい!」って思ったんです。ただ、実際に読ませていただくと、こんなにかわいい子が過酷なサバイバルをしているんだってびっくりしてしまって。映像もその過酷さが前面に出ていますし、何より私はカエルが苦手なので、エルローフロッグを食べるシーンは強烈な印象がありました。

TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より
TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――蜘蛛は大丈夫なのに、カエルはダメなんですね。

奥野 そうなんです。私だったら、目の前にエルローフロッグが現れた時点で死を選んでしまうかも(笑)。ちゃんと立ち向かっていける蜘蛛子ちゃんはすごいなと思います。あとは蜘蛛子ちゃんの喋り口調も大好きです! セリフもモノローグも全部面白くて、この明るい性格を前世で生かせなかったのかなと、ちょっともったいないなと思いました。

――確かにそうですね。

奥野 クラスでおとなしい子が意外と才能を隠し持っていたりすることもありますよね? 蜘蛛子ちゃんもあの内面を出していれば、クラスでも人気の生徒になれたと思うんです。蜘蛛子ちゃんのセリフと絶対くじけないメンタルは、本当に好きです。

TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より
TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」より(C)馬場翁・輝竜司/KADOKAWA/蜘蛛ですが、なにか?製作委員会


――ありがとうございます。では、最後に第8話以降の見どころを教えてください。

奥野 第8話は、フィリメスやシュンたちの前世が掘り下げられるので、みんながどんな生徒であり、先生だったのかぜひ確認していただきたいです。蜘蛛子ちゃんパートも人間パートも、お話が大きく動き出す話数なので楽しみにしていてください。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」
放送 AT-X 毎週金曜 21:30~ ※リピート放送有り
TOKYO MX 毎週金曜 22:30~
テレビ愛知 毎週金曜 27:05~
KBS京都 毎週金曜 24:00~
サンテレビ 毎週金曜 24:00~
BS11 毎週金曜 23:00~

配信 ひかりTV 毎週金曜22:00~
   dTVチャンネル 毎週火曜22:30~
   ABEMA 毎週水曜22:00
   そのほかのサイトでも1月15日より毎週金曜22:00以降順次配信

スタッフ:原作…馬場 翁『蜘蛛ですが、なにか?』(カドカワBOOKS刊)/原作イラスト…輝竜 司/監督…板垣 伸/シリーズ構成…馬場 翁、百瀬祐一郎/キャラクターデザイン…田中紀衣/モンスターデザイン…鈴木政彦、ヒラタリョウ、木村博美/チーフアニメーター…吉田智裕/美術監督/美術設定…長岡慎治/色彩設計…日比智恵子/撮影監督…今泉秀樹/編集…櫻井 崇/CGディレクター…山口一夫/CGアニメーション制作…exsa(制作協力ENGI)/音楽…片山修志/音響監督…今泉雄一、板垣 伸/助監督…上田慎一郎/アニメーション制作…ミルパンセ/製作:蜘蛛ですが、なにか?製作委員会

キャスト:「私」…悠木碧/シュン…堀江瞬/カティア…東山奈央/ユーゴー…石川界人/スー…小倉唯/フェイ…喜多村英梨/フィリメス…奥野香耶/ユーリ…田中あいみ/ユリウス…榎木淳弥


リンク: TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」公式サイト
    公式Twitter・@kumoko_anime
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