新作&おすすめアニメのすべてがわかる!「月刊ニュータイプ」公式サイト

rssボタン

実力派アーティストとアイマス、花澤香菜の出会い。中塚武ロングインタビュー

2012年03月27日 00:03配信




 中塚武。SMAPや広瀬香美など数多くのアーティストへの楽曲提供、「金麦(サントリー)」などのCM音楽や、「セクシーボイスアンドロボ」「ニュースZERO」などのドラマや番組音楽を担当するなど、非常に多彩な活動で知られるアーティストだ。そんな中塚が、アニメ「アイドルマスター」Blu-ray&DVD第5巻の特典CD「PERFECT IDOL3」に楽曲「君のままで」を作曲作詞編曲を手がける形で提供した。また、先日アーティストデビューが発表された花澤香菜に楽曲提供することも公表され、話題となっている。中塚の目から見たアニメや声優ソング作りの現場、そして楽曲作りへの思いについてたっぷりと語ってもらった。


◆ナムコとの深いつながりと、バンド時代の出会いがきっかけ

──まずは「アイドルマスター」に楽曲を提供した経緯からお願いします。

中塚 10年くらい前、僕がバンド(QYPTHONE)をやっていた頃にライブに来てくれていたファンの子がいたんですよ。彼はその頃はジブリにいたんですが、今は「アイドルマスター」のアニメの仕事をしていると連絡が来たんです。それから僕が昔ナムコにいて、その頃同期の奴も「アイドルマスター」を作っていて。その2人から話が来た感じですね。


──そのお2人のお名前をうかがってもいいですか?

中塚 鳥羽くんと石原って2人です。


──アニプレックスの鳥羽洋典プロデューサーとバンダイナムコゲームスの石原章弘総合ディレクターですね。現場のトップ2人じゃないですか!

中塚 そうなんだ? 僕がナムコにいたのが'99年ぐらいまでなんで、当時いっしょにやっていた連中が、結構あちこちで偉そうな感じになってるんですよ(笑)。


──(笑)。ナムコ時代は企画担当だったとのことですが、サウンドにはタッチしてたんですか?

中塚 タッチしていなかったですね。サウンドチームの部屋に遊びに行くぐらいです。もちろん自分が担当するゲームのサウンド担当と打ち合わせはしますが、ナムコ時代にサウンド制作には関わってないです。


──その後、PS Vitaのゲーム「塊魂 ノ・ビ~タ」に「塊オンザファンク」と「シャバドゥビー」の中塚武editを提供していますね。

中塚 あれも同期と一個下の後輩の楽曲をアレンジしてるんですよ。それを知ってればもっとハチャメチャにしたんですけど、知らなかったのでイイ感じにしちゃいました(笑)。ナムコは昔からおもしろいこと優先で、頭の柔らかい会社なんです。そういう社風に憧れて入ってきた人たちが、作る側でそれなりに責任ある立場になって、いい感じになってきてる気がします。


──往年のナムコサウンドが中塚さんに与えている影響は大きい?

中塚 ありますあります、めちゃめちゃ大きいです。ゲームのサウンドトラックを最初に出したのってナムコなんです。「ビデオ・ゲーム・ミュージック(現タイトル:ナムコ・ビデオ・ゲーム・ミュージック)」といって、細野晴臣さんが手がけていて。細野さんが筐体をスタジオに置いていたぐらい「ゼビウス」が大好きな人で、その後12インチ盤の「スーパー・ゼビウス」や「ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック」が立て続けに出たんです。僕は小学校のころ、めちゃめちゃ聞きましたね。最初は基盤の音源そのままだったのが、細野さんのアレンジが入るようになり、B面にナムコサウンドチームのアレンジが入るようになったんです。「ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック」のB面が本当にすばらしくて、弦楽カルテットだけでドビュッシーみたいな音を作っていたり……本当に影響を受けました。


──あこがれて育ったナムコ作品に楽曲を提供した感慨はいかがでしたか。

中塚 うれしさよりも、なんでもっと早く話持ってこないのって(笑)。「塊魂」のシリーズがずっとあって、友達とかは入ってるんですよ。YMCKとかサイゲンジとか。なんでそのタイミングで僕に来ないんだって思いました(笑)。


──アイマスに楽曲を作るにあたって、アイマス曲は聞きましたか?

中塚 聞かなかったですね。こういう声の方なんです、と歌う3人のサンプルはいただきました。今ある曲を聞くと、そっちに引っ張られるような気がしたんです。せっかく鳥羽くんが自分に頼んでくれて、打ち合わせでも好きにやってくださいという感じだったので。僕の曲でこういうのが好きだとは伝えてきてくれましたが、細かい指定はなかったです。誰が歌うか(春香、雪歩、律子)はわかってたんですが、パート分けに関しては鳥羽くんたちのチームにこだわりがあったようなので、任せました。


──「君のままで」は曲と詞はどちらを先に作ったんですか?

中塚 僕はいつも両方別に、同時期に作るんですよ。歌詞を考えながら別の頭で曲を作ってたりするんです。詩で言いたいことを羅列して、並べていくと長くなって文章みたいになってしまうので、メロディに合わせることで端折っていく感じです。同時進行ですね。


──リアルタイムで微調整が効くのは作詞作曲編曲をトータルで手がける強みでしょうか。

中塚 そうですね。曲と歌詞をいっしょに作れるのは制約がなくなるからいいですね。


──詞を作る上で伝えたい事や、持っていたイメージはありますか?

中塚 来る人には来るような歌詞にしたかったんです。男が女の子の気持ちになって恋愛を語るのは、僕はリアルじゃない感じがするんです。それだったら中性的な友達目線で励ます歌がいいなって思ったんです。最近のこの国の人たち、特に男は僕も含めて心が弱いじゃないですか。何かと凹みがちで。それを支える歌詞にもしたかったんです。


──キャラクターで言えば春香っぽいのかなと思いました。

中塚 そう感じられたのであれば、それもいいんじゃないかと思います(笑)。いろんな感じ方をしてもらえるとうれしいです。


──中塚さんは映画音楽やCM音楽、非常に多彩な音楽を手がけていますが、アニメーションのキャラクター・声優さんが歌う曲ならではの作り方、意識はありますか?

中塚 あんまりないですね。狙っていくと、あざとさが出てしまうと思ったんです。僕はアニメやゲームの曲はあまり手がけたことがないんですが、最近のそのジャンルの曲ってすごいクオリティじゃないですか。アニメを見る人たちの耳が肥えてるんじゃないかと思ったんです。だから僕がいわゆるアニメらしさを狙って行ったところで、耳が肥えた人たちには「何これ?」って逆にガッカリされる気がした。それならいつもの自分のやり方を貫いた方が伝わるんじゃないかと思ったんです。今回は鳥羽くんからの話なので、楽器も生音をふんだんに使って、僕自身が自分で歌ってもいいと思える曲を作ろうと考えました。


──アニメファンの耳が肥えている、というのはどのあたりから感じますか?

中塚 僕はドラマとかの音楽を作っていることもあって、アニメも含めていろんなサントラを聴くんですよ。ナムコに入ったぐらいだからもともとゲーム音楽は大好きですし。聴いていると僕が子供のころとは全然違いますね。生音を使ってしっかりと予算もかけて作っている感じがあるので、作曲家としても言い訳がきかない、力量がはっきり分かられてしまう感覚があります。


──「君のままで」の曲作りで意識したこともうかがえますか?

中塚 メロは良くしないといけないなとは思ったんですが、メロとコードが合いすぎて、すんなり流れてしまわないようにはしました。メロを作った時のコードを一回外して、別のコードを当てたりしています。そうすると、ちょっといびつになるんです。


──サビにちょっと印象に残るひっかかりあって、サビ前をもう少しくせのある崩し方をすることで、よりサビが引き立つような印象を受けました。

中塚 ありがとうございます。コードを外して変えるのはリハモ(リハーモナイゼーション)って言うんですが、自分のアルバムではCD一枚そのまま出せる分の楽曲をいったん全部アレンジしてから、さらに全曲のコードをつけなおしたりもするんですよ。最近はパソコンでリミックスをする人は多いと思うんですが、僕はがっつり生音用にアレンジし直すのが好きですね。

──聞きこむとトランペットやピアノの印象が強く出てきますが、全体としてはリッチな生音をさらっと使っている印象があります。

中塚 何曲かあるのであれば、その中の一曲だけサウンド面を前に出すのもアリだと思ったんですが、今回のように一曲だけだと「生音を前面に出しました!」という感じがあってそれもあざといじゃないですか。僕、狙ったあざとさが嫌いみたいです(笑)。さりげなく使うかわりに、ミュージシャンの方々は超一流の方々です。三管と弦がカルテット、ベースがいて8人ですね。声がどう乗るかわからなかったので、ドラムは打ち込みにしました。


──生音ならではの良さって、どのあたりに出てくるんでしょうか。

中塚 周波数のレンジが全く違うんです。シンセサイザーで仮の音を組んでアレンジすると、楽譜の音としては問題ないんです。でも、実際に生音で録ってみるとそれぞれの存在感が違うんです。低い方から高い方まで声はこのあたり、ベースはこのあたり、金物はこのあたりと周波数帯があって、シンセだとその楽器の一番特徴的なところだけが出るんですね。でもスタジオで録ると、スタジオの中にアンビエンスマイクを立ててスタジオ内の空気も一緒に録るので、もっと広いレンジの音がワッと出るんです。それが楽器ごとにさらに重なりあうので、生音だと思った以上にリッチな音になって、EQで周波数帯を泣く泣く削るぐらいなんです。後からリズムの打ち込みの音を抜いても成り立つ広がりがあるのが、生音の特徴ですね。



──歌収録には立ちあったんですか?

中塚 行ってないです。僕が立ちあうと門外漢だし部外者だし、壁ができてしまうかもしれないと思ったんです。自分でも、歌のレコーディングってすごくナーバスになるんですよ。役に入りきって歌う場に僕は入らないほうがいい、コントロールしないほうがいいと思ったんです。僕は「アイドルマスター」という歴史の大きな流れの中の点なので、やりたいように自分に作れる曲を作って、収録に関してはお任せする。曲作りで僕を信頼して任せてくれたので、収録に関しては信頼して任せるということです。


──歌が入って戻ってきた音を聞いてどうでしたか。

中塚 できあがったものを聞いて、結構変わったんだなと思いました。自分が歌ってみたものがあって、仮歌さんのものがあって、声優さんたちが歌ったものがあって。それぞれ違いがあっておもしろかったです。


──声優さんが歌う歌から感じた違いを敢えてことばにすると?

中塚 音程とか技術じゃないってことかな、もちろんいい意味で。歌そのものが台詞や演技のひとつだと思ったんです。ことばのひとつひとつを強く伝えることを仕事にしている人たちなので。


──先ほど生音の強さの話がありましたが、声優さんの「声」はひとつの音、楽器としてかなり強いのでは。

中塚 強いですね。人間の声って、すっごく強いんですよ。これはレンジの問題じゃなくて、聴く側の人間の耳の問題として、人の声をいちばん聞き分けるようになってるんです。カクテルパーティ効果で、どんなリッチな音の中でも人間が「あっ」と発すればそれは聞こえるんですね。だから受け止める音をリッチにした方が、力のある声優さん、力のある歌い手ほど心強くなるんじゃないかと思います。


──楽曲のテンポについてですが、今回はゆったりしたミディアムテンポです。ハイテンポなタカタカっとした音に比べて、ごまかしはききにくいですよね。

中塚 先ほど言った、門外漢がイメージだけで作ると、そういう速いものになる気もするんです。タカタカっとしたノリのいいテクノやエレクトロ的な曲なら気に入るんじゃないかという錯覚というか誤解というか。そこは違って、耳の肥えた人たちに向けて腰を据えて作らないと、足元をすくわれるぞという気持ちを持って作りました。


──そうして出来あがった楽曲に対する鳥羽さんや石原さんの反応はいかがでした?

中塚 そういえば石原とはあれから会ってないですね! まったくどういうことでしょう?「お疲れさま」とメールの一本くらいもほしいですよね! 石原には連絡乞うと書いておいてください(笑)。鳥羽くんはすばらしい楽曲だと喜んでくれていたので良かったです。


──今後アイマスに関わることがあった時に、やってみたいことはありますか?

中塚 連作してみたいですね。二曲以上とか。CDの中での曲の物語が作れると思うので、ちょっとスピンオフ的な遊びが何曲かでできればと思います。



◆自分の音をまっすぐ出す「花澤香菜vs中塚武」

──話は変わりますが、先日発表した花澤香菜さんのメジャーデビューに、楽曲提供者として名前を連ねたのが話題となっています。

中塚 花澤さんのマネージメントをしている方がどんなものにしようと色々な音源を聞く中で、僕の音を気に入ってくれたみたいです。


──花澤さんのCDでどんな曲にしてみたい、どんなイメージを引き出したいという構想を聞かせてください。

中塚 僕は「プロデュース」って原則お受けしてないんですよ。たまに何かの記事などでサウンドプロデュースと書かれていることもありますが、僕がやっているのは作曲であり、編曲なんです。サウンドプロデュースって響きはかっこいいんですが、サウンドプロデュースというなら、その人の人生をプロデュースするぐらいの覚悟がいる。楽曲を一曲提供したぐらいでは、プロデュースとは言いたくないんです。そのかわり、いち作曲家にしては、いい物を作るために踏み込んでいきたい。花澤さんのチームは、物作りの体制として非常にいい形で、花澤香菜のCDをどう作っていくかの構想がきっちり固まって共有されているのを感じます。だからアイマスの話と一緒で、僕の音を気に入って頼んでくれたのであれば、自分の音をまずは全力でドーンとぶつけてみればいいと思ってるんです。ミスマッチも出てくるかもしれないけど、それはそれでおもしろい。全部レタッチされた見てくれだけのものを出すぐらいなら「花澤香菜vs中塚武」ぐらいの気持ちでちょうどいいと思ってます。


──今回北川勝利さん、神前暁さんと名を連ねています。ナムコサウンドチーム出身の神前暁さんとは接点はあったんですか?

中塚 この前Twitterで初めてあいさつしました。神前さんが所属するMONACAって会社自体、ナムコ時代の僕の先輩だった、サウンドの岡部啓一さんが立ち上げた会社なんですよね。


──ナムコサウンドを源流に持つヒットメーカーがいっしょに参加するのは刺激になるのでは。

中塚 なんていうか素直にうれしいですよね。北川さんのROUND TABLEも割と近くにいたはずなんですけど、今回が初めての接点です。


──Twitterならではのつながりが生まれてるんですね。

中塚 Twitterおもしろいですよ。だから今最新楽曲の無料配信をやってるんですが、新しい楽曲が出来上がった瞬間にアップロードする。すると数分後にTwitterで感想がもらえるんです。その感覚はすごくおもしろい。僕は楽曲ができあがったりライブ直前までつぶやかないほうなんで、花澤香菜さん楽曲についても、実際にCDが出てからどんな反応が来るか楽しみですね。




中塚武公式サイト
http://www.nakatsukatakeshi.com/

アニメ「THE IDOLM@STER」公式サイト
http://www.idolmaster-anime.jp/

花澤香菜オフィシャルサイト
http://www.hanazawakana-music.net/


(文・構成:中里キリ)