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スタッフ&特別ゲスト登場! 全ての人に祝福を「オービタル・クリスマス」凱旋上映会レポート

2018年に実施されたクラウドファンディングで、国内の実写映画としては最高額となる2182万円を調達した短編SF映画「オービタル・クリスマス ~聖夜を祝う全ての人に~(以下、オービタル・クリスマス)」。その凱旋上映会が12月11日、グランドシネマサンシャイン池袋にて開催されました。

笑顔はじける堺三保監督
笑顔はじける堺三保監督(C) Mitsuyasu Sakai

本作は、海外SFの解説者として活躍するかたわら、アニメ作品の脚本や翻訳も手掛ける堺三保さんが脚本・監督を務め、ハリウッドの俳優やスタッフも参加し、低予算のインディー映画ながら日米合作として制作された一作。SFアートの第一人者である加藤直之さんがコンセプトアートを務め、また映画『硫黄島からの手紙』など、ハリウッドで活躍する尾崎英二郎さんが重要な役どころで出演するなど、豪華なスタッフ陣が参加し、オースティン・レボリューション映画祭(最優秀国際短編賞)、ベルリン・インディペンデント映画祭(最優秀SF短編賞)など、数々の映画祭で入賞を果たすなど、注目を集めました。
この凱旋上映会では、まず最初に「オービタル・クリスマス」の本編が上映。舞台となるのは近未来、地球の周囲を回る有人の宇宙ステーション。クリスマス休暇でクルーが出払ってしまったステーションにひとり残り、メンテナンス作業を続けるイスラム教徒の青年のもとに、日本人の少女が密航してくるところから物語は始まります。大きなスクリーンいっぱいに映し出された宇宙空間と、そこで繰り広げられる「小さな奇跡」の物語に、思わずほっこりした気持ちに。

そんな本編の上映に続いて行なわれたのが、参加スタッフによる座談会。本作のノベライズを手がけた池澤春菜さんの司会の元、堺監督のほか、『仮面ライダーギーツ』などで活躍するキムラケイサクさん(特撮監督)、本作のメカニックデザインを担当した園山隆輔さん、編集の岩崎伊津子さんが壇上に登場。舞台となる宇宙ステーション・V3や劇中に登場するロボットポッドのラフイラストを見ながら、制作当時の裏話が披露されました。ロボットポッドのモデルが、ダグラス・トランブル監督のSF映画「サイレント・ランニング」に登場する自律型小型ドローンだったことや、密航してくる少女が脚本段階では少年だったことなど、次々に飛び出す舞台裏トークに、観客席から思わず笑い声が上がる場面も。さらには、アメリカの俳優ギルドに作品の制作規模を誤解されたことで、撮影数日前にすべての作業がストップするなど、日米合作ならではのトラブルも明らかに。編集の岩崎さんからは「全編グリーンバックでの撮影でしたが、むしろ役者さんのお芝居をもとにカットを選ぶことができて、楽しく作業できました」と、意外な裏話も披露されました。

本編上映後のスタッフ座談会登壇者。画面左より司会・コミカライズの池澤春菜さん、特撮監督のキムラケイサクさん、堺三保監督、メカニックデザインの園山隆輔さん、編集の岩崎伊津子さん
本編上映後のスタッフ座談会登壇者。画面左より司会・コミカライズの池澤春菜さん、特撮監督のキムラケイサクさん、堺三保監督、メカニックデザインの園山隆輔さん、編集の岩崎伊津子さん(C) Mitsuyasu Sakai

 

メイキング上映後の後半トークパート登壇者。画面左より、池澤春菜さん、大高健志さん、堺三保監督、中島かずきさん、スペシャルゲストの尾崎英二郎さん
メイキング上映後の後半トークパート登壇者。画面左より、池澤春菜さん、大高健志さん、堺三保監督、中島かずきさん、スペシャルゲストの尾崎英二郎さん(C) Mitsuyasu Sakai

その後、メイキング映像の上映を挟んで、イベントは後半戦に突入。再び壇上に上がった堺監督に加えて、脚本家の中島かずきさん、本作のクラウドファンディングを支援したプラットフォーム「Motion Gallery」の代表・大高健志さん、そしてスペシャルゲストとして尾崎英二郎さんが登場。「日本人が海外で実写映画を作ること」と題して、日本と海外での環境の違いをめぐってトークが繰り広げられました。

スタッフ座談会のようす
スタッフ座談会のようす(C) Mitsuyasu Sakai

 

スタッフ座談会のようす
スタッフ座談会のようす(C) Mitsuyasu Sakai

海外の映画祭で「オービタル・クリスマス」の上映に立ち会ったという尾崎さんは、海外での温かい歓迎ぶりを紹介。エンターテインメントとしての「わかりやすさ」が多くの観客に受け入れられると同時に、テロや分断される社会といったシリアスなテーマを背景にしていることが「オービタル・クリスマス」の評価に繋がったのだろうと語りました。また、脚本を担当した「ニンジャバットマン」でアメリカとの合作を経験した中島さんは、海外向け作品を制作する際に心がけていることとして「世界中のギーク(オタク)に作品を届けようと考えている」と、自身の考えを披露。また「どこの国の人が見てもすごいと思える、そういうエンターテインメントの基本は世界共通だと思う」とも。エンターテインメント系の映画はハリウッドを中心に制作されているが、ドラマ作品はヨーロッパの映画祭で評価されることが目標になっていることなど、世界の映画事情について、シビアな意見が交わされる一幕もありました。

後半トークパートのようす
後半トークパートのようす(C) Mitsuyasu Sakai

 

後半トークパートのようす
後半トークパートのようす(C) Mitsuyasu Sakai

 

「オービタル・クリスマス」のあゆみ
「オービタル・クリスマス」のあゆみ(C) Mitsuyasu Sakai

さらに堺監督が今後の展望を語る場面で、サプライズ発表が。キムラ監督によるスピンオフ作品「レガシー・イン・オービット」が2023年に製作されることが発表されました。作品の世界観は「オービタル・クリスマス」と共通しながら、「もうひとつの物語」が語られることになるという本作。会場を訪れたファンにとっては、これ以上ないほど素敵なクリスマス・プレゼントになったかもしれません。
 そして最後は、主人公の青年の声を故・藤原啓治さんが担当した日本語吹き替え版が上映され、イベントはすべて終了。藤原さんのニュアンスに富んだお芝居によって、英語版を観たとき以上によりストーリーが胸に迫る仕上がりに。短編映画だけに、なかなか気軽に観ることはできない本作ですが、現在、配信なども検討しているとのこと。今後の動きも楽しみなところです。今後の情報は、堺三保監督のSNSよりご確認ください。

キムラケイサクさんから語られた「今後の展望」
キムラケイサクさんから語られた「今後の展望」(C) Mitsuyasu Sakai

【取材・文:宮昌太朗】

■「オービタル・クリスマス ~聖夜を祝う全ての人に~」

スタッフ:監督・脚本・原作…堺三保/撮影監督…トミー・クラフト/特撮監督…キムラケイサク/コンセプトアート…加藤直之/メカニックデザイン…園山隆輔/CGIモデリング…帆足タケヒコ/音響監督…岩浪美和/音楽…市川淳/プロデューサー…里見哲朗、デニス・カステロ/製作…バーナムスタジオ、MSDC Film Partners
キャスト:ライアン・シュライム、カオリ・ネヴィル、ジェナ・パーカー、尾崎英二郎
キャスト(日本語吹き替え):藤原啓治、大和田仁美、本田貴子、安元洋貴

リンク:「オービタル・クリスマス」モーション・ギャラリーページ
    堺三保監督公式Twitter・@Sakai_Sampo
    堺三保監督Instagram

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