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「弱っているときに聴いたら泣けそうな曲」南條愛乃『君のとなり わたしの場所』インタビュー

先日はMVの収録レポをお届けした『君のとなり わたしの場所』。続いては、南條愛乃さんのインタビューをお送りします。作詞ではアイデアが次々と生まれ、レコーディングではある迷いもあったとか。まずはMV収録の振り返りから語っていただきました。

――丸一日のMV収録、おつかれさまでした。何がいちばん思い出深いですか?

南條:やっぱりネコちゃんです。名前までつけさせていただいて。まだ生後数ヶ月だから初めてのお仕事だったそうで、そんなデビューをご一緒させてもらえてうれしかったです。収録の前にネコちゃんたちの写真を見せてもらって、この2匹がちょこちょこ動き回ってたらかわいいなって選んでいたんですよ。決め手になったのは“顔”かな(笑)。

――かわいかったです! ドローンをかなりこわがってましたが。

南條:それはもう、人間でもこわかったですから。目を閉じて寝ているシーンで、見えないから、思ったより近くにいる感じがして。ネコはさらに耳がいいから、もっとこわかったと思います。原作にちなんでMVにもネコ目線を入れたいっていうのは、わたしから提案させてもらいました。もちごめ監督には『ゼロイチキセキ』や『光のはじまり』でも意見を取り入れてもらっているんです。以前流行ったネコの首元につけるカメラはどうですか?とお話ししていたら、ドローンになってましたね(笑)。

――衣装はどうでしたか? 今までにない日常感がありましたね。

南條:衣装案も提案させてもらったんです。なるべく普通っぽい、猫を飼っている人の空気感が出たらいいなと思って。ピンクのパーカーは特に、細かく提案させてもらっていたので思った通りでした。インパクトがすごかったのは最後に着たセーター。変なキャラクターが描かれた寝巻きを着たいと話したら、化粧の濃いウサギみたいな柄のセーターを持ってきていただいて(笑)。パンダのパジャマは、最初は3着でしたけど、ダサそうに着れそうだから着る!って急きょ増えた一着です。あえてズボンにインしました。よりダサくしたくて(笑)。

――いわゆる“ダサかわ”というか(笑)。

南條:何の抵抗もなかったです。むしろ、やりたいくらいな感じ。喜び勇んでやりました!

――他にも南條さんから提案したアイデアが?

南條:原作で主人公の素晴くんが書いている小説『闇夜に光る』を小道具として置いてもらいました。表紙が同じものを用意してもらって。最初はこの本がめっちゃたくさん積んであったんですよ(笑)。でも、わたしの中では「素晴くんの小説を読んでいる人」っていう裏設定があったので、一冊にしてもらいました。いい感じに写り込んでましたね。同じ時間軸で生きていることが見えたらいいなと思ってます。

――食べるシーンもたっぷりと。

南條:もちごめ監督とご一緒したMVのなかで、何も食べてないのは『一切は物語』だけなんです。ここまできたら、一平ちゃんも食べようと。お餅もお汁粉という形で食べて。そこはもう、もちごめ監督とご一緒するときのお約束という感じで、ファンの方にクスッとしてもらえたら。

――作詞を手がけることになった経緯は?

南條:秋のツアーが終わった後、こういうタイアップがあるけど歌詞書く? と言われて。奥華子さんの楽曲だし、ネコがテーマの作品だし、書いていいのなら書きたいです! と。奥さんの曲は一方的に聴かせてもらっていたんです。それが、『Nのハコ』の『ガーネット』のカバーで初めて関わらせていただいて、翌年のアルバム『サントロワ∴』では楽曲を提供していただいて。今回こうやって一緒に曲を作れたというのがすごくうれしいです。

――ネコのハル目線の歌詞になっていますが、作詞のコンセプトはどこから?

南條:制作サイドからの「ハルちゃん目線で」というオーダーと、わたしが原作を読んで楽曲を聴いたときの「ネコの目線を入れたいなあ」という想いがぴったり一致した感じでしたね。

――どんなところからハルの気持ちを掴んでいったんですか?

南條:原作でハルちゃんが「ごはん、ごはん」って言っているのが印象的で。お姉ちゃんぶっていても、やっぱりちっちゃいネコちゃんなんだなっていう。歌詞にある、お気に入りの場所を教えてあげるっていうのもネコからしたらものすごく大きなこと。この歌詞は、ネコ目線で見ると、人間をリードしてあげてるという書き方ですが、人間サイドから見ると、自分のひざうえでネコがスヤスヤ眠っていたり、近くに寄り添っていたり、安心して一緒にいるんだなという、お互いに安らげる空間に共存していることも表現したつもりです。「ごはんを食べよう」というのも、お腹がすいているからではなく、精一杯背伸びしたうえでの提案だったら、かわいいなと。

――ネコの気持ちがわかっている南條さんだからこその歌詞ですね。

南條:最後の最後で「そばにいてあげる」が「ずっとそばにいる」という自分の意思に変わっているんですけど、こう思ってくれていたらいいなって、若干ファンタジーも混ざっています(笑)。ハルちゃんの「陽」という漢字や、「素晴」の漢字も入れて、2人の曲っていう意味合いも足してみました。

――いろんな想いが詰まっていますね。

南條:楽しくなってきちゃって(笑)。これまで作詞させていただいたタイアップ曲はすべて、偶然というか奇跡的に、『ゼロイチキセキ』のネットゲームとか、『光のはじまり』のロボットとか、今回のネコとか、なじみのあるテーマばかりだったので、作品の印象に加えて実体験をプラスできているのは、ありがたいことですね。

――歌詞はどんなスタイルで書いているんですか?

南條:書き始めると止まらなくなることが多いので、まずは移動中とかに曲を思い出して妄想して、イメージが固まってからパソコンに向かってます。一人で考え事ができる環境ならどこでも書けるタイプですね。今はないですけど、昔はファミレスで書いていたくらい。

――レコーディングで歌ってみた感想は?

南條:じつは、1回目のレコーディングの際にレーベルのプロデューサーから「全然ダメだね」って言われて、録り直しになったんです。少し風邪気味だったので、いつもの感じが出ないんじゃない?と言ってくれたんですけど、わたしは「歌い方のせいだな」って思ってたんですよ。いつもはマイク前で声を出すと方向性が定まるほうですけど、この日は落としどころが全然見つからなくて。

――落としどころ?

南條:歌詞はハルちゃん目線だけど、南條愛乃として歌う曲だからハルちゃんっぽい歌い方にするのはちょっと違うし。「やっぱ違うっすよね」って思ってたから、スタッフのみなさんには申し訳ないですけど、歌い直しのチャンスがもらえて良かったです。2回目は、ハルちゃんになるというより、ハルちゃんの気持ちを胸のどこかに収めながら、まだ小さなネコちゃんのピュアっぽさを意識しつつ、思いのままに歌うことができました。

――その結果、優しさを感じさせる癒しの一曲に。

南條:歌詞を書いておいてなんですけど、弱っているときに聴いたら泣けそうって自分で思います(笑)。無償の愛、みたいなところを詰め込んだので。もし今後泣けることがあったら、あらためて「いい歌詞書けたな」って思うかも(笑)。

 南條愛乃さんのニューシングル『君のとなり わたしの場所』は、2月6日(水)にリリース。カップリング曲『わガまま♡ブれいん』(作詞:KOTOKO、作曲:井内舞子、編曲・丸山真由子)を加えた全4曲です。2月23日(土)・24日(日)には全国3ヶ所でCDサイン会が開催されます。さらに、3月13日(水)には、『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION』ED主題歌シングル「サヨナラの惑星」もリリース予定。詳細はオフィシャルサイトをチェック。

【取材・文:吉田有希】




■「君のとなり わたしの場所」
2019年2月6日発売
初回限定盤(CD+特典DVD)税別1800円
通常盤(CD only)税別1200円

<イベント情報>
ニューシングル「君のとなり わたしの場所」発売記念CDサイン会
2月23日(土)大阪市内某所
2月23日(土)名古屋市内某所
2月24日(日)東京都内某所
※詳細はアニメイトイベント情報ページをご確認ください

リンク:「南條愛乃」オフィシャルサイト
    「ごきんじょるの友の会」
    公式Twitter・@nanjolno
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