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「グリザイア:ファントムトリガー」レナ役・内田真礼×トーカ役・佐倉綾音対談「殺伐とした世界をのぞきに来てください」

これまで3 作品がTVアニメ化されてきた、人気PCゲーム『グリザイア』シリーズ。その最新作である『ファントムトリガー』のアニメが、3月15日よりEJアニメシアター新宿ほか、全国5都市の劇場で上映スタートします。本作の物語の中核となるのは、「美浜学園」でごく普通の生徒として過ごしている少女たちです。しかし、それは彼女たちの仮の姿。じつは彼女たちは、警察や自衛隊では対応できない事件の解決を担う組織「SORD(ソード)」のメンバーなのです。ここでは、銃使いのレナを演じた内田真礼さんと、狙撃手のトーカを演じた佐倉綾音さんへのインタビューをお届け。おふたりとも、収録時から血と硝煙の匂いに彩られたハードな世界観に圧倒されていたようです。

――原作ゲームで初めて本作の収録に臨んだ際の印象は?

内田 シナリオを読んで感じたのは、ミリタリー色が強い作品だな、ということでした。作中では銃火器の名前や作戦行動の際に出てくる単語など、ミリタリー用語がたくさん出てくるんです。ミリタリー好きの方の心には刺さりまくる作品だと思うんですけど、なにぶん私はそちら方面には疎いので、シナリオを読んでいてもなかなか内容が頭に入ってこなくて……。

佐倉 ミリタリー用語の意味は調べればわかるんですけど、発生する際のアクセントについては資料がなく、その点も苦労しました。どういうふうに読んだら、日ごろからそういう言葉を使い慣れた人がしゃべっているように聞こえるのか。そんなことを現場で相談しながら、裏の世界で生きてきた「こなれ感」を表現するのに苦心しました。あとは、とにかくセリフの分量が多かった! 一般的なAVGの収録に比べて倍以上はあったように思います。特にトーカは、状況を説明する役割が結構ありましたし、ミリタリー用語も大量に出てくるので、大変でした。

内田 情報量の密度がすさまじかったよね。そこも、この手の作品がお好きな方には楽しんでいただけるポイントだったのではないかと思います。

――おふたりが演じているキャラクターの印象について教えてください。まずはレナからお願いします。

内田 レナはワンワ~ンって尻尾を振りながら、テンション高く主人公のハルトに甘えていくところが、まるで大型犬みたいな子ですね。犬で例えるとゴールデンレトリバー。でも任務の時は、殺伐とした戦闘マシーンのような顔を見せるんです。基本はゆる~い感じでポワ~ッとしているのに、いったん「バーサーカーモード」になると「この子、大丈夫かな」って思うくらいの勢いで、人を殺しにかかってしまうという。そんな二面性を秘めているところは、演じていても楽しかったですし、奥深い魅力になっていると思います。

佐倉 私からすると、レナってすごく恐いんですよね。「バーサーカーモード」になった時はもちろんなんですけど、日常のポワポワしている時でさえ、内にすさまじい狂気を抱えているように思えるんです。頭のネジが何本か外れているというか、いつ何をしでかすかわからない危うさを感じて……。もし実際にいたら、あまり関わりたくないタイプですね(笑)。レナとの掛け合いのシーンでは、そんな思いをトーカに投影して演じていました。ただ、アニメではキャラクターがコミカルなデフォルメキャラで描かれているシーンがあるので、どぎつさが少し緩和されて、かわいいところもあるかも……って思える時もあるんですけど。原作ゲームで想像力を働かせながら音声を聞いていた時は、相当恐かったです。男の人はレナのこと、かわいいって思うのかな?

内田 うーん……。面白い子ではあるけど、結婚したいタイプではないかもね?(笑)。

――一方、トーカはいかがでしょうか?

佐倉 レナに比べたら、比較的常識人だと思います。とはいえ、いつも斜に構えていて、誰かを否定するようなことばかり口にしていて。「どうしてこの子は、いつもこんなに怒っているんだろう?」というのが第一印象でした。ただ、トーカがどんな人生を歩んできて、何を背負っているのか。そうした背景がわかれば、感情移入しやすいと思いますよ。なんだかんだいって、意外と面倒見がいいですしね。

――作中では狙撃に失敗して、ターゲットの脚を撃つつもりで頭を撃ちぬいてしまった時も「あっ、やっちゃった」程度のリアクションをしていましたが……。

佐倉 まあ、「美浜学園」にいる人たちは、みんな頭のネジが何本か抜けていますから(笑)。その中でも、トーカは喜怒哀楽の感情表現がはっきりしているし、仲間たちに対してもちゃんと気を配っていたりと、少しは温かい感情が残っている子なのかなと思います。

内田 私はトーカが恐いんです。

佐倉 恐い!? なんで!?

内田 私はレナ目線から作品を見ているので、すぐに怒ってくるトーカのことがなんだか恐く感じちゃって。レナが「一緒に戦う仲間じゃーん。仲良くしようよー」って寄って行っても、なんだか壁を感じるんですよね。でも、トーカは幼く見えるけれど落ち着いていて、頼りがいがあるところはギャップがあって面白い子だと思います。

――レナやトーカたちは、どこかお互いに一歩引いて接しているような印象を受けます。

佐倉 「みんなで仲良くやっていこうよ」みたいな、生易しい環境ではないからでしょうね。同じ部隊に所属するメンバーではあるけれど、決して「お友達」ではないんです。

内田 もしも、何らかの事情で外部に情報をもらしたら、たとえ仲間であったとしても躊躇なく引き金を引く。そんな関係だから、お互いに一定の距離を保って付き合っているんじゃないかと。

佐倉 表面上はクラスメイトとして仲良くやっているシーンもあるけれど、「友情」だとか「強い絆」といったものは感じないよね。

内田 明日をも知れぬ環境なので。そんなドライで殺伐とした仲間関係は、他作品ではなかなかお目にかかれないと思います。

――完成したアニメをご覧になったご感想は?

内田 映像がすごくきれいで感動しました。原作ゲームから長く付き合ってきた作品なので感慨もひとしおですし、原作ファンの方にも喜んでいただけるクオリティになっていると思います。

佐倉 本当に絵のクオリティはすごいよね。キャラクターデザインと総作画監督を手掛けた渡辺明夫さんの絵が、あんなにきれいに動くのを見られただけでもうれしいです。自分たちが演じたキャラクターが、美しく魅力的に描かれているのをみるのが、役者たちにとっては一番うれしいことですからね。手間暇かけて作られた映像に、制作スタッフ陣の作品に対する愛を感じました。

――特におふたりの印象に残ったシーンは?

内田 レナのストリートチルドレン時代の小汚さが、強く印象に残っています。まだ幼いのに路上で必死に生きてきたレナとマキが、今後殺し屋として生きるか、それとも娼婦として生きるかという過酷な二者択一を迫られて。子供時代のレナたちがかわいらしく描かれているので、余計に心がえぐられるんですよね。そして、彼女がなぜ今、自分の命を危険にさらしてまで戦っているのか。あの幼少期がレナの信念の原点となり、今のレナを形作ったのだと思うと、複雑な気持ちになります。

佐倉 私はシーンというよりも、殺伐とした世界観そのものが心に深く突き刺さりました。作中ではとても簡単に人の命が失われていきます。それなのに、主人公たちはその様子を見ても意に介さず、普通に会話をしている。当たり前のように過ぎ去っていく一コマなんですけど、ふと立ち止まって考えると、なんて恐ろしい世界なんだろうと思ってしまうんですよ。私たちは平和を謳歌しているけれど、世界のどこかにはこういう光景はゴロゴロ転がっている。私たちとは常識がかけ離れた世界が、確かに存在する……。一度立ち止まって考えると、気持ちがしんどくなってしまうけど、そのぶん見ごたえのある作品だと思います。

内田 作品としてはものすごくエンターテイメントしているけれど、感情移入はなかなかできないよね。あまりに私たちの常識とはかけ離れすぎていて。

佐倉 あんな世界の中にあって、唯一まともな人間である有坂秋桜里先生は、数少ない癒しだよね。……いや、レナたちの「本職」を知っても、普通に学校に来ちゃう時点で、この人も頭のネジが何本か飛んでますね(笑)。

――たしかに、あの順応力の高さは常人離れしていると思います。

佐倉 あと、キャスト陣みんなの声がすごくよかったです。ゲームの音質じゃない、劇場版の音質で聞いたキャラクターたちの声を聞いていて、「あ、この人の声ってこんな要素もあるんだ」って新しい発見があったりして。私はムラサキ役の種﨑敦美さんの声が好きなんですけど、劇場の音響設備で聞く種﨑さんの声って、最高だなって思いながら聴いていました。

内田 たしかにそれはあるかも! TVと劇場とでは音響の設備が段違いなので、ちょっと印象が違って聞こえるかもしれないですね。

――では、最後にお二方からメッセージをお願いします。

内田 『ファントムトリガー』ファンのみなさま、お待たせしました。本作では、レナとマキの過去を描いた物語が、がっつり描かれています。ぜひ2人が心だけでなく拳でも語り合うバトルをご覧いただければと思います。内容的にはかなりハードな作品で、ご覧になると一発殴られたような衝撃を受けること確実です!

佐倉 作品の世界観自体は非常に歪んでいるんですが、映像自体はびっくりするくらい美しく描かれています。それってある意味最高のエンターテイメントですし、アニメでしかできないことだと思います。ぜひこの殺伐とした世界をのぞきに来ていただけると嬉しいです。

【取材・文 福西輝明】

「グリザイア:ファントムトリガーTHE ANIMATION」
2019年3月15日(金)よりEJアニメシアター新宿ほかにて上映スタート
スタッフ:原作…フロントウイング/企画・プロデューサー…山川竜一郎/原案…藤崎竜太/監督・シリーズ構成・脚本…天衝/キャラクターデザイン・総作画監督…渡辺明夫/アニメーション制作…バイブリーアニメーションスタジオ
キャスト:レナ…内田真礼/トーカ…佐倉綾音/クリス…名塚佳織/ムラサキ…種﨑敦美/マキ…南條愛乃/ハルト…代永翼/有坂秋桜里…井澤美香子

リンク:「グリザイア:ファントムトリガーTHE ANIMATION」公式サイト
    公式Twitter・@grisaia_fw

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