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大阪、東京を駆け抜ける! BONKLIVE -JAPAN TOUR- 密度1000%レポート

脚本家・上江洲誠さんの「面白いスタッフがすごいことをやっているというのを広く知ってもらいたい」との願いから立ち上げられた、年に数回行われるアニメスタッフによるメイキングなどを紹介するトークライブ『BONKLIVE(ボンクライブ)』。

今回はJAPANツアーと大袈裟に称して、大阪・心斎橋と東京・阿佐ヶ谷の2か所にて開催されました。2019年2月16日と24日に行われたその同行取材レポートをお送りします。

【嵐の大阪編】


昨年は取材やイベント登壇などで世界中を飛び回ったメンバーだけあって、行きの新幹線では登壇メンバーが目配せのみでバラバラに各々の席に着席。コンセントレーションを高めることに互いが干渉しない、プロの姿勢が垣間見えました。さて初となる大阪公演、一体どうなるのでしょうか……!?

■次世代エース監督現る! その名は安藤正臣

コーナーひとつひとつに大きく時間を割くスタイルで始まった大阪公演。上江洲さんの呼び込みで登場したのは安藤正臣監督。まずは『クズの本懐』でチームを組んだ上江洲さんから安藤監督の印象が語られました。「あらゆる場面で、このシーンはどういう意図なのか、を突き詰めていく“哲学する若き監督”」。そんな安藤監督の哲学のルーツはどこにあるのかをぜひ語ってもらいたいという希望から実現したこのコーナー。

しかし上江洲さんの「ご自身の監督作の話をお願いします」という要望にも関わらず、安藤監督はご自身が愛してやまない『機動戦士ガンダム』の話にご執心。特に『機動戦士ガンダムZZ』への偏愛は凄まじく、その熱量と読みの深さが観客を圧倒。皆があまりに唖然とするものだから「言葉が暗闇に飲み込まれていく感覚だった」とは本人の弁。しかし本人の感想とは裏腹に、終演後には安藤旋風が吹き荒れ、次世代エース監督の今後が期待されました。

■岸(監督)×上江洲(脚本家)×飯田(音響監督) 10周年

続いて『トリニティ結成10周年+α』のコーナー。一緒に作品を作り始めて10周年を迎える上江洲さん、岸誠二監督、飯田里樹音響監督の三人が登場。

アニメ『瀬戸の花嫁(2008)』の現場で出会い、「俺達ですごい作品を作るんだ!」そう誓い合ってから早10年。三人で一緒に制作したフィルモグラフィを大きく3シーズンに分けてフリートーク。

『瀬戸の花嫁』から始まる「名を上げたくて仕方なかった」1シーズン目。喧嘩は日常茶飯事、居酒屋で朝まで語り合った思い出に花が咲きます。

続く『結城友奈は勇者である(2014)』などが連なる2シーズン目。上江洲さん曰く「東日本大震災後、アニメ業界に限らず世の中がシリアスになっていく」時期であり、トリニティの3人もその瞬間作品を通して語るべきこと、自らの作家性を模索する苦悩の時期でもあったそうです。

そして『蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-DC/Cadenza(2013~2015)』『乱歩奇譚(2015)』など、チャレンジの幅が広がった3シーズン目へ。より大きな作品が活躍の舞台となり、そして2シーズン目を経て作家性を発揮することが求められるようになりました。しかしその後、各々の活躍が認められて様々な現場に個々で呼ばれ始め、三人が揃って作品を作る現場はなくなります。この空白の時期は「音楽性の違いにより解散」していたと、目を細めて遠き日々に思いを巡らせているようでした。

そんな3人が2年ぶりにチームを再結成して取り組んでいるのが2019年夏にNetflix全世界独占配信が決定した本格格闘アニメ『ケンガンアシュラ』。本作は企業間の問題を各企業が雇った闘技者同士の戦いで決着をつける裏格闘技の世界を描く裏サンデーで連載されていた人気漫画が原作。この作品で、久しぶりに結集した3人がどのような作品を作るのか、配信開始を楽しみに待っていて欲しいと熱く締めくくられました。

■『ゆゆゆ』イベント、一般参加で行ってきました!

続いて上江洲さん・岸さんが再び壇上に上がり『イベントレポートのコーナー』がスタート。香川県は観音寺ハイスタッフホールで行われた『讃州中学文化祭 in 観音寺市2』に上江洲さん・岸さんは忙しい合間を縫ってあくまで一般参加者として参加してきたそうです。

「あまりの楽しさに写真を撮影するのを完全に忘れていた」上江洲さんのTwitter上で呼びかけで集まったファン提供の写真は100枚以上。この写真を前にイベント参加者との交流が語られ、ファンと観音寺市が作品を盛り上げ続けてくれていることに感謝を繰り返し述べていました。これには遠方から遠征してきた客席の『ゆゆゆ』ファンも喜びの表情。お二人のファンを大事にする姿勢、そして『ゆゆゆ』ファンの強い結束が見えました。

【炎の東京編】


大阪での奇跡の夜から一週間。東京は阿佐ヶ谷で行われたツアーファイナル。

上江洲さん曰く「気がついたらとんでもない豪華メンバーが揃ってしまった」伝説の一夜とは、果たして……!?

■熱狂のJAPANツアーファイナルスタート、『劇場版このすば』の進捗報告は?

上江洲さんによる大阪公演の御礼から幕を開け、新作劇場映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』インフォメーション、続いて先日行われた『「この素晴らしい世界に祝福を!」コンサート~この素晴らしい音楽に喝采を!~』の様子が語られました。

朗読劇にオーケストラという贅沢なイベントの様子に、ステージ横のDJブースでDJを務めるつむじさんが「こんなに贅沢なら行きたかった!DVD、DVDを!」と悔しさをにじませていました。上江洲さんも多くの人に観て欲しいと語り、ファンの声がソフト化に繋がることもあると、是非大きな声を上げて欲しいと締め括りました。

■愛あふれる阿佐ヶ谷、安藤監督荒ぶる

第一部は『安藤正臣新作発表祝賀会』と称した、岸誠二監督・橋本裕之監督・上江洲さんBIG3から安藤監督に向けたアドバイスコーナー。

ファンサービスが過ぎるあまり、監督作と関係のない話をする安藤監督にツッコミの花が咲くも、後半は監督心得など先輩ならではの温かいエールがBIG3の面々から送られました。

終盤には安藤監督がアニメ『クズの本懐』原作者・横槍メンゴ先生の結婚ニュースに触れ、会場は温かい祝福の空気に包まれました。

■平成OVAイズム最後の継承者『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』

続く第二部は謎のベールに包まれたオリジナル劇場アニメ『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』スタッフトーク。橋本監督、flyingDOG吉田プロデューサー、そして『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』の主題歌・劇伴を担当した作曲家kzさんの三名を迎え、その全容が明らかになりました。

本作は、魔王が支配する異世界で活躍した革命の英雄たち、そして災厄の元凶である魔王が現代の京都に”逆転生”し、現代日本で問題に直面しながら生活していくコメディ作品であることが上江洲さんから明かされ、キャラクター紹介では内山夕実さんが演じる姫騎士が転生した個性的な犬のデザインが会場の驚きと笑いを誘いました。

吉田プロデューサーの「OVA全盛期の “制作陣が作りたいものを自由に作っている”面白さです」という言葉通り、狂戦士(現ニート)や武道家(現地下アイドル)といった実に”引っかかる”設定を持ったキャラクターや、わずかなイメージボードからでも奥行きを感じさせる作り込まれた世界観が、客席の期待を誘いました。

kzさんの劇伴にも言及。本作はハリウッド大作と同様、フィルムスコア(画に合わせて楽曲が制作される)方式がとられており、キャラクターの感情線に寄り添った曲作りが行われたそうです。

■『ケンガンアシュラ』コーナーパート1 原作担当は軍用格闘術の使い手!?

第三部からは、たっぷりと時間を取っての『ケンガンアシュラ』スタッフトーク。まずは『編集者コバヤシショウとは何者なのか』のコーナーから始まりました。

上江洲さんが「今一番オススメしたい編集者」と称する小学館 マンガワン/裏サンデー編集部のコバヤシショウさんが壇上へ。『だがしかし』『モブサイコ100』などWeb漫画の地平を切り開いた作品群を担当した編集者にして『ケンガンアシュラ』の原作担当編集でもあるコバヤシさんの半生を是非紹介したいという上江洲さんの熱いラブコールに応じた形でこのコーナーが実現しました。

中学生の時に格闘技を習い始めたコバヤシさんは、工場の一角で元傭兵によって空手をベースにした軍用格闘術を叩き込まれ、ほぼ毎週他流派の大会に送り込まれるという漫画のような筋道で格闘技のキャリアをスタート。高校生の時には無差別級全国三位にまで上り詰めます。その頃には格闘技と並行して「みんなで協力する競技をやってみたかった」という動機からオーケストラ部にバイオリン奏者として参加。さらには映画館で映写機を回すバイトも開始。朝まで映画の予告を編集していたそうです。

その後コバヤシさんは、漫画編集者を志して小学館の門を叩くも女性ファッション誌に配属。初めて触れる分野での活躍の後、先輩と裏サンデー、マンガワンを次々に立ち上げ。受賞作品もない新人をデビューさせる手法でWeb漫画界を切り開いていきました。その仕組みに縛られないチャレンジ精神と審美眼に上江洲さんも「漫画家をはじめ、クリエイターにとってこんなにも魅力的な人間はそうそう居ない」と感嘆の声を上げていました。という辺りで時間を迎えてしまった本コーナー。上江洲さんは続きを是非聞きたいと熱望。

■『ケンガンアシュラ』コーナーパート2  2019年首の太さNo.1本格格闘アニメ!

続いては『ケンガンアシュラ メイキング』のコーナー。一年の肉体改造に打ち込んだ結果、「肩にダンプカーが乗ってる」との声援が飛ぶまでになった打撃(ストライカー)系アニメ監督・岸誠二さんが登場。コバヤシさんを交え、ハリウッド級のアニメーション制作術が明かされました。

岸監督曰く「かっこいいリアルな格闘技をやるために」3DCGを選択、さらには毎週実際の格闘家を招き、体重移動や重心、コンビネーションなどを徹底検証。総合格闘、空手、柔術、相撲、プロレスなど、すべて本物のアクター同士が組手を行い、それを元に限りなくリアルにアニメーションに落とし込んでいるそうです。

トーク内では主人公・王馬のメインモーションアクターがコバヤシさんであることが明かされ、またしてもコバヤシさんの底知れなさを感じさせてくれました。

続いて制作陣は着々と行われているアフレコ現場に関しても言及。大阪公演で飯田音響監督が語った「マウントされている時には声の絞り出し方が変わる」など、徹底したリアル路線のディレクション方法が語られました。アフレコ現場は岸さん曰く「この役が出来る役者を集めたら全員首が太かった(強そう、の意)」と興奮気味に語るほどの肉密度。上江洲さんが言うところの「(声優が)『ワイルド・スピード』と『エクスペンダブルズ』全部乗せの座組」にスタッフ一同興奮している様子から格闘技ファン、洋画ファン的にも見逃せない番組になりそうな予感がしました。

■最後の最後まで! サービス精神に大満足のエンディング

抽選コーナーではサイン入りグッズや、岸さん自前のダンベル(3kg)がプレゼントされ、怒涛の4時間にピリオド。

そして最後に、登壇者がステージから姿を消すと、スクリーンに「特報」の文字が!

なにかのキャラクター設定と思しき画像、「上江洲誠×黒山メッキ」の文字がスクリーンに踊り、今後発表されるであろう謎の作品の存在がファンを沸かせました。

まだまだ隠し玉が用意されているBONKLIVE、これからも見逃せません!

主催・上江洲さんの「すごいメンバーのタフな関係性で作られている」との言葉通り、漫画だったらボツになるような設定過多な人物が揃ってしまったBONKLIVE。彼らが作る作品を観てみたい! そう思わせる熱気に満ちています。

今後の開催予定は上江洲さんのTwitter(@UEZUX)で告知されますので、そちらをチェックの上、是非足を運んでみてください!

リンク:「観音寺市」公式サイト
    「レイドバッカーズ」公式サイト
    「ケンガンアシュラ」公式サイト
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