アーティスト

新しい幕を開けたfhanaが魅せた1stワンマン

3月1日(日)、shibuya duo MUSIC EXCHANGEにてfhanaの1stアルバム発売記念ライブ「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」が開催された。

当日はライブタイトルにもあるような“憂鬱”な雨模様だったが、初ワンマンライブを見届けようと会場には650人ものファンが集結。

暗転後、fhanaの4人とベース、ドラムのサポートメンバー2人が登場し、towana(ボーカル)の「せーの!」の掛け声で始まったのは「tiny lamp」。

憂鬱な雰囲気を振り払うかのような爽やかさ満点のfhanaらしい1曲でライブは幕を開けた。

「ソライロピクチャー」を終えての最初のMCで、メンバーは口々に「ついにこの日がやってきたよ!」と感無量の様子を見せる。

そんななか、リーダーの佐藤(キーボード)の「みんなで憂鬱の向こう側に行きましょう」という声と共に奏でられたのは、メジャーデビュー前から存在していたという「lyrical sentence」や、デビュー曲である「ケセラセラ」といった楽曲の数々。

それらに「Paradise Chronicle」や「スウィンギングシティ」などの新曲が織り交ざり、fhanaの過去から現在までを感じさせるような展開でライブは進行していく。

ライブの前半を締め括ったのは、kevin(PC/サンプラー)の鋭い電子音から始まった「街は奏でる」。

ライブ向けにややハードにアレンジされた楽曲を終え、メンバーが舞台裏に引き上げるなか、1人残ったkevinはアウトロの音をループさせながら、さまざまな音とエフェクト、鉄琴のクリアな音色を織り交ぜ、幻想的な世界をステージ上に構築。鮮やかなライティングとともにファンを酔わせた。

世界観を重視するfhanaらしい演出は続く。ライブの後半はレーベルメイトの茅原実里による、アルバムのブックレットに書かれた“序”と“終”の朗読で開幕。

装いを新たに、大量のスモークとともにステージに現われたメンバーは、アニメ「天体のメソッド」7話のエンディングを飾った「ホシノカケラ」、そして茅原による「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラクターソング「雪、無音、窓辺にて。」のカバーと、意外性のある選曲でフロアを沸かせる。

その後のMCで佐藤は「涼宮ハルヒの憂鬱」、特にヒロインの1人である長門有希への愛を語り、カバーの意図を観客へ納得させた。

さらにライブタイトルに込められた思いを訴え、流れるように同名のアルバム表題曲へ。towanaは満面の笑みで歌い上げ、kevinもジャンプでフロアを煽り、「憂鬱や後悔を乗り越えて『今ここにいること』への喜び」(佐藤)を表すかのようなプレイを見せた。

続く「divine intervention」の印象的なイントロから、ライブはラストスパートへ。同曲の間奏ではkevinとyuxuki(ギター)が向い合って、互いを駆り立てるかのようにハイテンションな演奏を披露し、「星屑のインターリュード」ではフロアはこの日最大の歓声をあげて応える。

ライブ本編のラストナンバーはアルバムでも最後を飾る「white light」。落ち着いたバラードがtowanaの叫びにも似たボーカルでシフトチェンジして、6つの音が感情を炸裂させてクライマックスへ。やがて静寂のなかに佐藤のピアノだけが残り、ライブ本編は終了した。

会場中から巻き上がったアンコールに応え、ラフなTシャツ姿でfhanaの4人が再登場。kevinのドラムパターンから始まったのは「光舞う冬の日に」。これはfhanaとしてのライブで初めて歌われた楽曲だが、変拍子で難しいため長らく封印されていたという。

しかし、この日はサビでtowanaが変則的な指フリを見せると、それを真似て客席もすぐに同じフリをしてみせるなど、fhanaだけでなく周囲の成長も感じさせる1曲となった。

再びサポートメンバーを迎え、全員で最後に披露したのは、アルバムの初回限定盤Blu-rayにライブ映像が収録されている「kotonoha breakdown」。

秘めた激情を曝け出すかのような圧巻の演奏のなかでも、特にyuxukiはギターで轟音を鳴り響かせて爆発。初のワンマンライブながら、堂々としたパフォーマンスでこの日の幕は閉じた。

最後のMCで「今日はお客さん10人くらいかと思っていたけど、こんなに入っていてうれしいです。次はもっと大きいところでやりたい!」(yuxuki)、「もっと曲を増やして、さらにやりきりたい」(kevin)と口々にメンバーが語っていたように、さらなるライブへの意気込みを見せるfhana。

すでに発表されていた5月からのライブツアーやイベント「深窓音楽演奏会 其ノ弐」に加え、この日はツアーの追加公演(6月7日、東京LIQUIDROOM)や、アメリカのアニメイベント「Anime Weekend Atlanta」へのゲスト参加も明かされた。アニメ作品に提供される良質なタイアップ楽曲だけでなく、ライブバンドとしてのfhanaの真価も見逃せない。

取材・文=はるのおと
この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2024年5月号
月刊ニュータイプ
2024年5月号
2024年04月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype