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異世界ファンタジーとプロレスの掛け算が、まさに予測不能な化学反応を引き起こしているTVアニメ「旗揚!けものみち」。出会いがしらのお姫様にジャーマン・スープレックスを喰らわせた1話に続き、2話でも大技が繰り出された。オークキングとのまさかのプロレスバトルもあり、見所たくさんのこの回を、さっそくアナウンサー村田晴郎氏に「実況」してもらいましょう!
「旗揚!けものみち」第2話!今回は様々なプロレス技が登場して大変なことになっております。説明しきれないかも……。
エピソード前半でケモナーマスクこと柴田源蔵が凄腕ハンター、陽炎(かげろう)の両脚をつかんでぶん回して放り投げましたが、あれはプロレス技の「ジャイアントスイング」です。
名前の由来はわかりません。「大きい人」(=ジャイアント)を「グルグル回す」(=スイングする)からじゃないですか?(適当)
このジャイアントスイング、回された方は当たり前ですが頭に血が上り目を回します。技を食らった直後はまともに立っていられなくなり、その後の動きに甚大な影響を与えます。相手がフラフラしているその隙に追撃!というのがセオリーです……が、やはりというか技を仕掛けた方も目が回りますし、体力もかなり消耗します。多い時は20回転以上いきますから(時には40回転以上も!)攻めたくても自分もフラフラでダウン、なんてことがよくあります。
なので、ジャイアントスイングは技を仕掛けたあと、いかに自分のダメージを少なくできるかが重要です。得意技にしているプロレスラーによると「目を回さないコツがある」そうです。バランス&平衡感覚と目を回さないコツ、それを兼ね備えた者にしか使いこなせない高難度のプロレス技です。
ちなみに源蔵さんはジャイアントスイングで陽炎を壁にぶん投げてますが、これは人間の力ではほぼ無理です。現実的には「投げ捨てる」が限界でしょう。
3Ⅾ格闘ゲーム「バーチャファイター」でのプレイキャラクター、ウルフ・ホークフィールド (*1)によって「ジャイアントスイング=投げ技」という認識が広まってしまいましたが、正しくは「ジャイアントスイング=回し技」なのです。
さて、今回はなんといってもエピソード後半に繰り広げられる柴田源蔵vsオークキングのバトル(試合?)が熱い!作画と動画も素晴らしい!録画したのを繰り返し見ちゃいましたよ。今回の語りどころはここですよ、ここ。
まずは源蔵さんの強烈なドロップキック!
ドロップキックは、ジャンプして相手に両足で飛び蹴りを叩き込むプロレスの基本的な技。この技にもいくつかのバリエーションが存在します。
仰向けにジャンプして身体をマットと水平に保ったままキックして、背中で受け身(後ろ受け身)を取る「正面飛び式」。
仰向けにジャンプして空中で身体をひねりながらキックし、うつぶせに受け身(前受け身)を取る「スクリュー式」。
ジャンプの踏切り時点で身体が横向きになり、そのまま突き上げるように顔面を打ち抜く「突き上げ式」。
大きくジャンプしてヒットさせた勢いで身体を後方にクルリと1回転させて、前受け身を取る「1回転式」。
顔面を狙うと思いきや、低く飛んで相手の膝を狙う「低空式」。
リングのコーナーを背にした相手に放つ「(コーナー)串刺し式」。
リングのコーナーの上に登り、そこから相手に放つ「ミサイルキック」。
などなど。まだまだたくさんあります。
ちなみに今回の源蔵さんは「スクリュー式」でしたね。実際にプロレスを観戦する機会がありましたら、選手がどんなドロップキックを使うのか注目すると面白いですよ。
オークキングはプロレスラーではないのですが、注目すべき技の数々を見せてくれます。
まずは源蔵さんの胸板へ放った渾身のパンチ。これは往年の怪物ヒール(悪党)レスラー、オックス・ベーカー (*2)の必殺技「ハートパンチ」 (*3)!渋いなぁオークキング。
その後もボディに下から蹴り上げる爪先キック!これは「ガットショット(トーキック)」という技です。続けざまに、その場で腕を相手の喉元に叩き込む「ショートレンジラリアット」、お祈りするように両手を握った状態で上から振り下ろす「ダブルスレッジハンマー(ダブルアックスハンドル)」と体格を活かした打撃技中心で源蔵さんを攻め立てます。まるで、一昔前の外国人プロレスラーが得意とした「ラフファイトスタイル」(*4)みたいだ。オークキング、実は異世界に転生した往年のアメリカンプロレスラーなんじゃないだろうか?
対する源蔵さんは、天龍源一郎さん(*5)を彷彿とさせる喉への逆水平チョップ(痛みと呼吸困難により、地獄の苦しみを味あわせる技)からの、からアントニオ猪木(*6)さんばりの延髄斬り(後頭部への飛び蹴り)&顔面ビンタという昭和のプロレスイズムあふれるムーブを見せたと思ったら、今をときめく内藤哲也選手(*7)のデスティーノ(オークキングの身体を逆上がりするようにジャンプして後頭部を地面に叩きつけた技。実は技の入り方は少し違う)を炸裂させる。なんでもやるなぁ源蔵さん。
フィニッシュは前回アルテナ姫に決めたジャーマン・スープレックスホールド!しかも前回とクラッチの仕方が違う!手首をつかんでいる。アルテナ姫よりもウエストが細いのかオークキング。いずれにせよマニアックな描写だ。
他にも源蔵さんのマイクアピールが高田延彦(*8)さんの物まねとか、源蔵さんとオークキングの闘いを見ているうちにシグレが自然とプロレスファンになりかけているところとか、源蔵さんがギルドマスターのヒゲをつかんで凄むのは外道選手(*9)のオマージュなのかとか。もっと掘り下げたいシーンがありますが、今回は文字数の都合上ここでお別れとなります。
と、いうことで次回はどんなプロレス技が飛び出すのでしょうか?
最後に、これをご覧の皆さまは絶対真似をしないように。技を仕掛けた側も掛けられた側も共に不幸な結末が待っています。ケモナーマスクのようになりたければ身体を鍛えてプロレスラーになりましょう。「Please Don’t try this at home」約束ですよ。
<注釈>
(*1)ウルフ・ホークフィールド
3D格闘ゲーム、バーチャファイターに登場するプロレスラーキャラ。様々なプロレス技を駆使して闘う。ジャイアントスイングは彼を象徴する大技。目測で5メーターくらい相手をぶん投げる。
(*2)オックス・ベーカー
1962年~1988年に活躍したアメリカ人プロレスラー。通称“狂牛”。身長198センチ、体重154キロの巨体に、スキンヘッドと剛毛眉毛&ヒゲという恐ろしい風貌。だが、リングを降りると温厚な紳士だったという。2014年10月20日、80歳で死去。
(*3)ハートパンチ
オックス・ベーカーの必殺技で、相手の心臓めがけて強烈なパンチを叩き込む。とてもシンプルだが、巨漢オックス・ベーカーの岩のような拳から繰り出されると、非常に恐ろしい攻撃。
(*4)ラフファイトスタイル
「殴る」「蹴る」を中心にした荒削りな闘い方。ヒールプロレスラーにこのスタイルが多い。正統派プロレスラーがボコボコにやられるも、技ありの一本でヒールプロレスラーから逆転勝利すると、大いに盛り上がります。
(*5)天龍源一郎
日本を代表するプロレスラーのひとり。通称“風雲昇り龍”、“ミスター・プロレス”。力士からプロレスラーへ転向し、トップレスラーとして人気を博した。得意技は逆水平チョップ、パワーボム。2015年11月15日、65歳で現役を引退。現在はタレントとして活動中。
(*6)アントニオ猪木
ごぞんじ“燃える闘魂”。ジャイアント馬場さんと並ぶ、日本プロレス界の2大巨頭のひとり。馬場さんは全日本プロレスを作り、猪木さんは新日本プロレスを作った。得意技は延髄斬り、卍固め、弓を引くナックルパート、闘魂ビンタ。1998年4月4日現役引退。その後は政界へ闘いの場を移した。
(*7)内藤哲也
新日本プロレス所属のプロレスラー。現在、人気も実力もトップクラス。通称“制御不能なカリスマ”。「LOS INGOBERNABLES de JAPON」(ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン)というユニットを率いており、このユニットのグッズはプロレス界で一番人気。会場では老若男女がTシャツを着て、キャップを被り、内藤選手に大声援を送る。彼の必殺技デスティーノは、スペイン語で「運命」を意味する。
(*8)高田延彦
元プロレスラー&格闘家。現在はタレントとして活動中。格闘技イベント「PRIDE」では統括本部長を務め、選手入場時に「男の中の男、出てこいや!」とマイクで叫び、強い印象を残す。「旗揚!けものみち」劇中で、源蔵さんがやっているのはこれのオマージュ。
(*9)外道
新日本プロレス所属のプロレスラー。リングネームの通り、試合では道を外した反則殺法で相手を翻弄する。実は大変なテクニシャンなのだが、テクニックを突き詰めた上での反則スタイルなので、対戦相手にとっては非常にたちが悪い。長い顎ヒゲがトレードマークだが、反則に怒った相手につかまれ逆襲されることも。