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生声生音と職人芸の「ゆらぎ」が生み出す一期一会のアニメ舞台劇「COCOLORS」シアター再演レポート

2017年02月21日 20:31配信
生声生音と職人芸の「ゆらぎ」が生み出す一期一会のアニメ舞台劇「COCOLORS」シアター再演レポート

劇場の人工的な闇の中、照明に照らし出されるキャストたちはあくまで黒子に徹する「COCOLORS」公演

生まれつき大きな声が出せないかわりに、手先が器用な少年・フユ。そんなフユを優しく見守り、支えようとする少年・アキ。

フユが声を出しての返事のかわりに奏でる笛の音の意味は、ひとつがうん、ふたつめはいいえ、みっつ一緒に押せば、大丈夫──。終わってしまった閉塞した世界で、希望を歌う優しい嘘が、悲劇的な結末を導きます。

COCOLORS。

神風動画が企画・製作を担当し、劇伴は生バンド演奏、声の演技は声優が生アテレコで行なうという前代未聞のプロジェクト初演は、2016年10月の「マチ★アソビ vol.17」眉山山上特設ステージで決行されました。雨は降らないと賭けて、ほぼぶっつけ本番。そんな無謀で奇跡のようなステージは、日没後、秋とは思えないぐらいの寒さの中、このステージを待ち望んで最後の最後まで山頂ステージに残った人たちだけが見届けることができた、宝物のようなステージでした。

そして4か月後のこの日、待望の「COCOLORS」再演が実現しました。2月17日(金)・18日(土)に新宿・バルト9で行なわれた再演には、声優は高田憂希さん・秦佐和子さん・岩中睦樹さん・市来光弘さん・桑原由気さん・高井舞香さんのオリジナルキャストが再集結。演奏と歌唱は音楽監督でもある阿部隆大さん・持山翔子さん・小山尚希さん・工藤明さん・栗林スミレさん・野崎心平さん・Uyuさんが担当しました。

「マチ★アソビ」での初演は、うっそうとした夜の森林の中に突如現れた広いステージに楽器と配線と人が入り乱れて、とてもライブ感がありました。一方、今回の再演のステージは映画館・新宿バルト9。普段は舞台挨拶などを行っているステージに所狭しと生バンドセットが並び、その前列にキャスト用の小さな椅子が6つ。バンドチームはドラム&パーカッション、ギター&シンセなど兼任で大忙しですし、キーボードの持山さんはピアニカっぽい楽器も奏でていました。

しかし、一番「COCOLORS」ならではの音は、栗林スミレさんが奏でるハンドパンでしょう。底の深い金属鍋を二枚貼り合わせた、ドラ焼きのような形の不思議な楽器。叩く場所や強弱によって音階や響きが玄妙に変わります。時には小冊子のような形の道具でスパンと叩いたり。五指をしならせるように叩きつけて複雑な音色を奏でる魔術師のような動きは、彼女の本業がジャズピアニストと聞けば納得です。このハンドパンの不思議な音色が、「COCOLORS」の地底世界の異国感、暗闇の中での閉ざされた祭礼・回収祭の独特の空気感を増幅して、観客を物語の世界へいざなうのです。

初演では、一歩照明の範囲から外れると自分の指先が見えないほどの本物の闇、山々の原初の闇が、アキたちの叫びも想いもすべて吸い込んでいくようなシチュエーションで、絶妙な効果を生み出していました。今回の再演は劇場、それも最新の映像・音響設備を整えた映画館という、テクノロジーが生み出す音と光の粋を尽くした環境です。青い照明はぼんやりと出演者の姿を浮かび上がらせ、徳島ではおぼろげにしか確認できなかった演者の表情を見せてくれます。「あ、高井さんの丸メガネと髪を結い上げる飾り、おしゃれ」みたいなこともギリギリ見て取れる情報量です。アニメ映像も劇場クオリティですから、「COCOLORS」の画面が持つ閉塞感・圧迫感がのしかかってくるようで、特に地底世界の描写力に関しては、屋内の劇場に一日の長があった気がします。

キャスト陣による演技。前回は高田さんの、獣が振り絞るかのようなの哀切の叫び、慟哭に全部持っていかれた感じがあったのですが、今回目を見張ったのは秦佐和子さんの吐息のような演技です。生まれつき声が小さくて、分厚いマスクをかぶったフユのコミュニケーションは、オカリナのような笛が奏でる合成音(効果音)と、生声の吐息のようなニュアンスで表現します。そんなフユがさらに弱った時の芝居を秦さんがどう演じているかというと、自分の喉に手を当てて、絞るようにして息と声の音量をコントロールしているのです! デジタル時代の極めてアナログな工夫です。

ちょっと明るい環境で見ると、岩中さんの激高した芝居や、市来さんの朗々とした演説が、感情のニュアンスを出しながらも舞台を壊さない音量に抑制されていることがわかります。45分以上の生アフレコ一本勝負という環境で、桑原さんや高井さんが囃し立てたり、笑いまわったりする多重のがや声が、名人芸であることも今回改めて認識しました。

声も演奏も生き物であるこの舞台の特性を、ミニトークショーに登壇した横嶋俊久監督は「ゆらぎ」と表現しました。闇の黒と、毒々しいまでに鮮やかな色彩が襲い掛かってくるような極上のアニメーションの世界と、生音・生声が生み出すライブのゆらぎ。ロングラン公演や、無粋を承知での映像収録にもぜひ期待したいところです。【取材・文=中里キリ】