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出会うべくして出会ったケンスケという役柄――「シン・エヴァンゲリオン劇場版」相田ケンスケ役岩永哲哉インタビュー

2021年06月08日 18:00配信
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

公開中の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。完結編となる本作について、そして「エヴァンゲリオン」シリーズについて相田ケンスケ役の岩永哲哉さんにお話を伺いました。

――「エヴァンゲリオン」の相田ケンスケというキャラクターとはとても長いお付き合いの役柄になっているかと思います。岩永さんにとって、ケンスケはどんな存在になっていますか?

岩永 ケンスケは一見すると、ミリタリーオタクでしっかりちゃっかり者で、ちょっと変わったやつみたいな感じに見えると思うんです。でも「エヴァ」に出てくる大人たちはけっこうムチャクチャな人が多い。理不尽な人ばかりです。そんな中14歳のケンスケはとても常識人なんです。(碇)シンジよりも精神年齢が上で、中学生が考えそうもないことを彼は言うんです。

――TVシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」でケンスケは、シンジと葛城ミサトの関係を「それって家族じゃないか」と言ったり、トウジとシンジの仲を取りもったりと大人びた一面を見せています。

岩永 「新世紀エヴァンゲリオン」当時に、どうして彼の精神年齢が上がったのかを考えたことがあるんです。おそらく父親が多忙でほとんど会えないからなんじゃないかと思うんです。父親をずっと求めているけど、そばにいないから、子どもらしからぬ大人びて醒めた目をもってしまった。でも、その裏では愛を求めていて、寂しい。だから、シンジがエヴァから逃げたときに、ケンスケは「碇と一緒だよ」(第四話「雨、逃げ出した後」)というセリフを言えたんだと思うんです。ケンスケも孤独を背負っているから、シンジの理解者のひとりになりえたのかなと。

――孤独なシンジに向けた、「碇と一緒だよ」というケンスケのセリフは、とても印象的なひと言でした。

岩永 あのセリフは台本を見た時に、ことばが浮かび上がって見えたんです。この台詞を成立させないといけない。この台詞でケンスケを表現できなければこの役は死んでしまう。この子の悲しみとか、背負ったものを表現しなきゃいけないと思いを込めて言ったんです。そうしたら、オンエア後に視聴者の方から手紙を何通もいただきました。「あの台詞を聞いてあなたが好きになりました」って。思いを込めればちゃんと伝わるのですね。本当に伝わってよかったなと思いました。

――そういうケンスケの思いがあるから、「シン・」においてもシンジを支える立場になりえたんでしょうね。

岩永 実は、ケンスケって僕自身とリンクするところがあるんです。僕はまだ赤ん坊のころに父親を病気で亡くしていて、父親のことを写真でしか知らないんです。父は昭和ひと桁の人だったので映像も音声も残ってなくて、白黒写真とカラー写真が少し残っているくらいでした。だから父親を求めていた。父親がいなくて、寂しいと思っても、母が悲しむと思ってそんなことは言えない。自分が子供で無力であることがもどかしい。早く大人になりたいと思うようになったんです。そういうところは、もしかしたらケンスケにもあるんじゃないかと思っています。

――「シン・」ではケンスケのみならず、クラスメイトの鈴原トウジ、洞木ヒカリも健在でしたね。

岩永 トウジ、ケンスケ、シンジは第3新東京市立第壱中学校2年A組では3バカトリオと呼ばれていて、辛い日常でもバカをやって楽しんでいました。その3人がみんな生き延びて、トウジと委員長(ヒカリ)が結ばれたのは本当にうれしいことでした。だって、僕らは考察では死んだって言われてたんですから。

――「:Q」ではケンスケやトウジ、ヒカリの生死を明言されていませんでしたからね。

岩永 「:Q」はあえて観ていなかったんです。次の「シン・」がどんな時間軸になるのかわからなかったので、もし「:破」の続きの時系列なら、知らないほうがいいと思っていました。「:Q」は「シン・」の話をうかがってから、あらためて観たんです。その「:Q」を観て、びっくりしましたね。こんなことになっていたのかと。

――「シン・」で印象に残っているシーンをお聞かせください。

岩永 やっぱり印象が強いのは、幼いアスカとのシーンです。アスカの心がスーっと軽くなって救われるところは今思い返してもジーンとします。
あと碇とふたりでドライブして1日を過ごすシーンも好きです。

――26年の歴史をもつ「エヴァ」も、「シン・」でひとまず完結します。「エヴァ」で一番思い出すことはなんですか?

岩永 やはり、TVシリーズの収録ですね。あのピリピリした空気は怖かったです。第四話のケンスケのシーンで、「ヒューダダダ」と言いながらひとりで戦争ごっこするシーンがあるんです。収録時、テストが終わった後、にブースに庵野(秀明)さん(当時・監督)が入ってきて、「普通、男の子だったら、ビューンッダダダダダーッ!ってやるでしょ!」って強い口調で言われたんです。たちまち、みんなシーンとなってしまって。僕も当時は若かったので、なぜそこまで強く言われるのかわからなくて、ちょっと引いてしまったんです。でも、そこから時間が経って「:破」のパーティで庵野さんと久しぶりに話すことができて。そのときに「いやあ、てっちゃんのケンスケよかったよ……」なんて、優しいことばをかけていただいて。庵野さんが優しくなってる!(笑)僕も庵野さんに「庵野さん今までありがとうございました」とお礼を言って。僕も優しくなっていました(笑)。

――「シン・」のラストカットで「終劇」の文字をみたときはどんなお気持ちでしたか。

岩永 嘘だね、って思いました(笑)。もちろん作品は完結しましたが「エヴァ」の世界はファンの皆さんの心の中でこれからもずっと生き続けていくものだと思うんです。空白の14年を想像するだけでも一生かかりますからね。そういう意味でエヴァは完結することはないと思っています。

現在発売中のニュータイプ6月号では、スタッフ・キャスト30名以上のインタビュー&コメントを掲載。総作画監督・錦織敦史さんの描きおろしイラストが目印です。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は好評公開中(C)カラー

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が表紙のニュータイプ6月号は好評発売中(C)カラー


【取材・文:志田英邦】