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TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」渡邉祐記監督インタビュー 「自分の引き出しの中の暗い部分を全力でぶつけさせてくれる作品」

2022年12月02日 22:00配信

10月よりテレビ東京・テレビ大阪にて放送中のTVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」。アプリゲーム「アークナイツ‐明日方舟‐」を原作とした本作は、原因不明の天災がもたらした謎多き“源石(オリジニウム)”を巡る「感染者」たちの戦いが描かれます。物語も後半に突入し、登場人物たちが織りなすドラマがより複雑に、そしてさらなる盛り上がりを見せるなか、渡邉祐記監督のインタビューが到着! TVアニメ化にあたってこだわったポイントをはじめ、演出面で意識したこと、今後の見どころについてなど伺いました。

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」渡邉祐記監督インタビュー 「自分の引き出しの中の暗い部分を全力でぶつけさせてくれる作品」
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」渡邉祐記監督インタビュー 「自分の引き出しの中の暗い部分を全力でぶつけさせてくれる作品」(C)Hypergryph / Studio Montagne

——渡邉監督はゲームアプリ『アークナイツ』のアニメPVを多数手がけられてきましたが、TVアニメ化に際して新たに挑戦したことはありますか?
渡邉 1クール作品での監督経験は初めてで、30分枠の作品でコンテを描いたことも無かったため、自分にとっては作業の全てが挑戦ということになるかもしれません。特別意識したこととしては、既に原作をプレイされている方とアニメから『アークナイツ』を初めて知る方、双方に同じくらい楽しんでいただける作品にする、という点です。メディアミックス作品はいかに原作の魅力を広く伝えるかが至上命題と考えているので、既存プレイヤーの方には原作の雰囲気を可能な限り再現した映像を見ていただきつつ、ゲームをプレイしていない方にも映像を通して疑似的にドクターやアーミヤ達の状況を追体験してもらう作りを意識しています。映像の流れ(テンポ)を止めてしまいがちな「心の声」であったり、以前の出来事を視聴者に思い出してもらうための説明的な回想はなるべく排除し、キャラクターたちの視点に自然と立って、物語を追っていけるような映像を目指しました。

——「映像の流れ(テンポ)」というお話も出ましたが、アプリゲームをアニメにする難しさは、どんなところにあると思われますか。
渡邉 いくつかありますが、やはり一番は主人公=ドクター(CV:甲斐田ゆき)の描写だと思います。プレイヤーが自己投影するための余白が主人公に組み込まれているゲームの場合、主人公像はプレイヤーの数だけ存在します。反面、映像媒体において主人公は視聴者が作品に没入するための橋渡し役を担うことから、主人公像(人格や行動原理)がブレたり曖昧な状態となる展開は特殊な場合を除いて避けるべきだと考えています。この、媒体ごとに異なってしまう主人公像の扱いをどのようにして映像媒体におとしこむ(集約する)のかが、アプリゲームをアニメ化するうえでの一番難しい課題だと思います。まだ放送が終わっていないためこの場では言及できませんが、我々がドクターという存在をどのように解釈し映像に落とし込んだのか、是非最終話まで観て確認していただければ幸いです。

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

——では逆に、どんなところにおもしろさを感じられていますか?
渡邉 逆に、面白い点としては主人公以外の登場人物でしょうか。好きなキャラを選択して配置するシステムやイベントシナリオの存在などによって、どのキャラも主人公として成立するほどに強固な人物像とバックグラウンドを持っています。キャラ同士が隣あって立つだけでも魅力的なシチュエーションが生まれますし、会話や戦闘などのコミュニケーションを介してより複雑な関係性を描くことができます。今回は原作のメインシナリオに準拠したキャラだけに絞って登場させていますが、敵幹部など非プレイアブルのキャラ含め、表現のしがいがある登場人物ばかりだと思います。

——同じくゲームアプリ『アークナイツ』のアニメPVを多数手がけられてきた西川将貴氏が、TVアニメにて副監督を務められています。おふたりで、どんなお話をされましたか?
渡邉 「繰り返し見れる作品にしよう」という共通認識がありました。原作で扱っている主題やモチーフが非常にデリケートなものであるため、繰り返し観てじっくりと作品に向き合ったり、鑑賞後も余韻に浸りながら内容について振り返ることができる作品にしようと話していました。本編の最後に予告映像ではなくサブタイトルを出して終わる構成は副監督からの提案で、観終わった話数とゆっくり向き合う時間を用意するための演出になっています。

——そのような指針があったのですね。お仕事の分担については、いかがですか?
渡邉 分担についてですが、「監督チェック」と呼ばれる工程がありまして、それぞれの話数の担当演出がチェックした各素材を最終的に確認し、次の工程に流すGOサインを出したり、問題があれば担当者に戻して修正指示を出したり、自分で直接修正したりします。この監督チェックを二人で分担している形になります。具体的には、チェルノボーグ編の3話までと最終回を自分が、それ以外の龍門編の話数を副監督が、という形でちょうど半分ずつに分けています。この監督チェックを全話数一人で行うケースでは、作品の雰囲気・質感を容易に統一できるメリットがあると同時に、チェックが遅れた場合には素材が流れず作業進行が滞り、クオリティの過度な低下を招くなどのデメリットもあります。そのため、今作では作業時間を分散し効率よく制作を進めるため、監督チェックを分担する形を採っていました。負担は分散しつつも、脚本の打ち合わせ等で雰囲気や流れを共有し、作品全体の毛色をすり合わせています。そのうえで、リテイク出し(作品完成の一歩手前の調整・ブラッシュアップの段階)では自分が担当外の話数もまとめて確認したり、アイキャッチやサブタイの映像など外枠部分の演出については自分のほうで指示出しをしたり、という具合です。

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

——映像に対する演出面で、とくにこだわった部分を教えてください。
渡邉 前述のように、ドクターたちが置かれている状況を追体験してもらうため、実際に現場にいたらどんな景色を見ることになるのかという点を意識しました。美術・色彩・撮影の各工程の方々と画面の最終的なルックを相談するうえで、原作イラストのもつ埃っぽさ、冬の冷たさ、天災が迫る大気の状態など、観ただけでそこにある空気の質感が分かるようにしたいと話していました。視聴者の方々にも登場人物たちと同じ景色を見て、同じ空気を吸い、同じ危機感を肌で感じてもらうことでより深く作品に没入してもらうという狙いです。

——なるほど。同作の圧倒的な没入感は、背景の力によるところも大きいんですね。
渡邉 一般的なアニメ作品では、キャラを引き立たせるために周囲の環境を整える表現が多いですが、この作品ではおそらく他では許されないくらいキャラが風景に溶け込む画面になっていると思います。原作シナリオでも人間ひとりひとりの非力さや無力さについてたびたび言及されていますが、その価値観に沿う形で主人公もモブのレユニオン兵も例外なく、ひとりひとりがあくまでテラという世界の中に立っているだけの存在であることを意識しました。各工程の方々の素晴らしい作業のおかげで、ドクターたちがどんな場所で活動しているのかがとても明確になったと思います。

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

——キャスト陣の熱演も話題ですが、アフレコ時の演出でとくに意識された部分をお聞かせください。
渡邉 キャストの皆さんが本当に素晴らしい演技をされており、自分はただただ感動するばかりでこだわったところというと難しいのですが、ひとつあげるとすれば生っぽい質感だと思います。2話でMedic(CV:麻倉もも)が霧の中で悲鳴をあげているところが分かりやすいかなと思いますが、本当に犬の牙が腕の肉に食い込んでいる人の悲鳴を、とお願いしていました。視聴者に「このキャラクターは痛がっている」という情報を伝える目的であれば、セリフとしての悲鳴……つまり「やめて!!」と台本に書いてあるテキストの読みをそのままはっきり「やめて!!」と発音することでも、心情の表現として十分成立しうると思うのですが、それだけでは『アークナイツ』という作品のもつ緊迫感や悲壮感を表すのに不十分だと感じていました。そこで、「やめて!!」の「や」の音の出だしが少し弱かったり、「め」と「て」の中間に「へ」の音が混在していたりと、それぞれの音節が成立せず崩れた発音を想定し、キャラクターのシチュエーションに合わせた実感のある印象を重視してディレクションしていました。この作品だからこそ可能な方向性ですし、キャストの皆さんの優れた技術があって初めて成立する表現だと思います。

——ちなみに、個人的にお気に入りのキャラクターは?
渡邉 作品全体をフラットな視点で見ているので難しいですが、強いて言うならメフィストでしょうか。感情の発露が特徴的なキャラクターは、その振れ幅をどれだけ広く確保できるかが重要なので、急激な感情の変遷は演出する上でとても難しく、面白いです。また、演じられた天﨑(滉平)さんの表現がとても素晴らしく、メフィストの突飛な人物描写に深い奥行きを与えていただきました。

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

——物語も折り返しを迎えましたが、後半でぜひ注目してほしいポイントがありましたら教えてください。
渡邉 少しずつ登場人物も増えてここから関係性がより複雑になってゆき、キャストの皆さんの素晴らしい演技を沢山見ることができると思います。舞台も変わり、スラム街などそれぞれの場所の映り方や効果音・BGMもシチュエーションに合わせて少しずつ変化していくので、注目してみてください。また、1話から展開の種を少しずつ蒔きつづけていて、キャラの描き方やセリフのひとつひとつが最終回に向けて収束していきます。序盤話数の時点では、原作を知る人と知らない人で作品の見え方が大きく異なっていたと思いますが、そのギャップがおそらく最終回を迎える頃には埋まり、原作をプレイしている人もアニメだけを見ている人も大体同じような顔のまま見終えることになるのではないかと思います。是非最後までご覧ください。

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より
TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」より(C)Hypergryph / Studio Montagne

——監督にとって、TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」はどのような存在でしょうか?
渡邉 自分が持っている引き出しの中の暗い部分を全力でぶつけさせてくれる作品です。その分、気を抜いたらすぐに握りつぶされてしまうような大きな存在だと思います。

——最後に、今後の展開を楽しみにしていらっしゃるファンの方々へメッセージをお願いします!
渡邉 いつも『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』をご視聴いただきありがとうございます。テラの大地はとても非情で、ドクターやアーミヤが対峙する現実は厳しいものばかりですが、皆さんに最後まで見届けていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

【文:藤谷橙子】

■TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」
●毎週金曜、深夜1.23~ テレビ東京ほかにて放送中

スタッフ:原作…Hypergryph / Studio Montagne/キャラクター原案…唯@W 監督…渡邉祐記 副監督…西川将貴/アニメーションキャラクターデザイン…高藤彩/シリーズ構成…Yostar Pictures/アニメーションプロデューサー…畑岳央/プロップデザイン…若山温/美術監督…大西穣(ビック・スタジオ)/美術設定…坂本 竜(ビック・スタジオ)/色彩設計…後藤恵子/撮影監督…棚田耕平(グラフィニカ)/編集…重村建吾/音響監督…渡邉祐記/音楽…林ゆうき/音楽制作…レジェンドア/オープニングテーマ…ReoNa「Alive」/エンディングテーマ…Doul「BE ME」/制作…Yostar Pictures

キャスト:ドクター…甲斐田ゆき/アーミヤ…黒沢ともよ/ドーベルマン…種﨑敦美/Ace…松山鷹志/ニアール…佐倉綾音/チェン…石上静香/ホシグマ…安野希世乃/フランカ…加隈亜衣/リスカム…石川由依/エクシア…石見舞菜香/テキサス…田所あずさ/メテオリーテ…種田梨沙/ケルシー…日笠陽子/Medic…麻倉もも/Guard…小林千晃/ウェイ・イェンウ…山寺宏一/タルラ…坂本真綾/クラウンスレイヤー…千本木彩花/メフィスト…天﨑滉平/ファウスト…堀江瞬/W…竹達彩奈/ミーシャ…松田颯水/スカルシュレッダー…松田利冴

リンク:アークナイツ公式サイト
    アークナイツ公式twitter・@ArknightsStaff
    Yostar Pictures 公式サイト
    Yostar Pictures公式twitter・@YostarPictures
    TVアニメ「アークナイツ」公式サイト