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大ヒット作品はこうして生まれた―劇場アニメ「名探偵コナン 紺青の拳」制作秘話を監督とプロデューサーが語る

2019年06月11日 16:01配信
大ヒット作品はこうして生まれた―劇場アニメ「名探偵コナン 紺青の拳」制作秘話を監督とプロデューサーが語る

写真左から、モデレーターを務めた高橋光輝さん、永岡智佳監督、諏訪道彦プロデューサー

2019年6月7日(金)、デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパスで公開講座「監督・プロデューサーが語る 映画「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」ができるまで」が行われ、同作品を手がけた永岡智佳監督と、読売テレビで月曜夜7時枠のアニメを数多く手がけた諏訪道彦プロデューサーが登壇しました。

講座では、まず本年の5月5日一日分の世界各国の映画の興行収入を紹介。日本以外の国がすべて公開2週目の「アベンジャーズ/エンドゲーム」であるのに対し、日本のみが公開4週目である「名探偵コナン 紺青の拳」となっていたそうです。諏訪プロデューサーは、この好調ぶりは林原祥一宣伝プロデューサーの手腕によるところも大きいと分析します。「林原さんの手腕による功績のひとつが「アベンジャーズ/エンドゲーム」と「紺青の拳」タッグムービーです。これが実現したことで、「アベンジャーズ/エンドゲーム」の公開時(=「紺青の拳」公開2週目)に、劇場で特報が流れるわけです。上映開始後に劇場で特報を流せるなんて、そうそうないことですよ(諏訪プロデューサー)」。

台本作成時の裏話も披露されました。「紺青の拳」はシンガポールが舞台となっていますが、当初は分かりやすさを重視して、セリフはすべて日本語にしようかという案もあったそうですが、原作者・青山剛昌さんの「海外が舞台なら、やっぱり英語(で話しているところは英語にすべき)でしょう」という声に後押しされ、英語で発せられているセリフはすべて英語に変更。その一方で分かりやすさも担保するため、シングリッシュ(シンガポールの日常会話で用いられる、なまりの強い英語)はあえて使用しない、字幕は簡略化した訳文にする、大事なシーンはあえて日本語にする……など調整を施し、幅広い年齢層が楽しめるように仕上げました。

制作において永岡監督が重視したもののひとつとして、作中の時間の経過も挙げられました。「本作は、コナンたちが3泊4日する間に起きた物語です。視聴者のみなさんにも旅情を味わってほしい、画面が単調にならないようにしたい……そういう思いから、時間の経過を丁寧に描くことは最後まで強く意識していました(永岡監督)」。永岡監督が本作で「コナン」シリーズ初監督をするにあたって静野孔文監督に助言を求めたさいのアドバイスが「2時間という長い時間の中では、見ていてダレてしまいやすいところも出る。どこがそうなってしまいそうか、温度計のようにお客さんの温度をきちんと測りながら作るのがいい」というものだったとのことで、それを受けての思いつきだったと語りました。

時間の描写の中で特に力を入れたのは夕方のシーン。「本作は怪盗キッドにスポットが当たっているのですが、裏をかかれてハメられてしまうことも多い。そのシーンが夕方ばかりだったので、それならば夕方を印象的に使えないかなと。アニメ制作においては、夕方の表現は時間の経過にあわせて"浅い夕方"、"普通の夕方"、"深い夕方"と3パターンくらいに分けて使用することが多いですが、本作ではそのすべてを作品に盛り込んでいます(永岡監督)」

話はそこから、永岡監督が抱く怪盗キッド像へと展開します。「怪盗キッドには"夜"や"バンパイア"というようなイメージがあります。ですので、怪我の治療をするのは月明りの下で、負傷してくずおれるのは太陽をあびながらなんです。太陽は不吉の象徴で、月は癒しの象徴――そんなイメージがあります(永岡監督)」

そして話題は、アフレコでのこぼれ話に。本作の怪盗キッドは、普段の「名探偵コナン」ではあまり見せないようなさまざまな表情を見せていますが、それを受けてのことか、アフレコでキッドを演じる山口勝平さんが"きひ"と、"「コナン」のキッドは絶対にしない笑い方(永岡監督)"をしたとのこと。アフレコ後、山口さんにその意図を聞いてみると「NGを出されてしまうかなとは思ったけれど、本作のキッドなら「まじっく快斗」(の主人公としてのキッド)の要素を入れてもいいのではないかと思って入れてみた」との返答がかえってきたとのことで、そのまま採用されたそうです。「どこでキッドがそういう笑い方をしているか、探してみてください(永岡監督)」。

そして、キッドと同様にスポットが当たっている京極真と鈴木園子の話題に。「コナン」史上最強ともいえる空手家・京極を描くうえで、永岡監督は脚本の大倉崇裕さんと話し合い、園子を一途に思う純粋さをしっかり見せる、そしてそれゆえに、園子が絡んだときだけは弱さを見せてしまう姿を描こうと決めたそうです。京極と思いを通わせる園子は、一部のファンの間では「前髪を下ろした姿が特にかわいい」と評判のキャラクター。前髪を下ろした姿を描いていいか青山さんにおうかがいを立てたところ、「かわいいからいいと思う」と快諾を受けたとのことです。

ここまでにも何度か名前が挙げられたように、原作者の青山剛昌さんがフィルム制作に深く関わっていることも話題に挙げられました。永岡監督は「絵コンテのチェックをお願いして、たった一か所、ちょっとした仕草を直すだけで、すごくそのキャラクターらしくなる。園子のカットでも的確な修正をいただいたところがあり、青山先生は乙女の心を持っているとしか思えません(笑)」と笑みを見せました。諏訪プロデューサーは「青山先生は"原作"という形でクレジットさせていただいていますが、そうした範疇には収まらず、正確な呼び方がない状態。先生が自らそうしたいといって手を入れてくださるところが多々あり、いつもそうしたキャッチボールの繰り返しでフィルムが制作されています」と語りました。また、永岡監督は本作を通してのお気に入りのシーンを問われると「京極と園子がご飯を食べているとき、園子が京極を見つめているトメのカットがすごく好きです。京極を(恋愛対象として)好きな表情をうまく表現できたと思います。心に残る、かわいらしい園子が見られてよかった」と答えました。

来場者からの質疑応答で「フィルムを制作するうえで影響を受けた作品」を問われ、「コナンとキッドのいつもとは異なる関係性を描くのに、「ユニコ 魔法の島へ」におけるユニコと風の精の関係性をちょっとだけ参考にしました」と答えた永岡監督。最後に「また劇場版「コナン」で監督ができるなら、スポットを当てたいキャラ」を問われると「もう一回キッドを描きたい」と笑顔を見せました。

「私くらいの世代の女性にはそういう方が多いのではと思いますが、怪盗キッドがすごく好きなんです(笑)。ですので、今回のお話はすごく光栄でしたし、自分のキッドへの解釈は間違っていないだろうか、合っているだろうかと自問しながらの制作でした」。