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JAM Projectドキュメンタリー映画公開記念インタビュー【前編】「20年一緒だけど知らない話もあった」

影山ヒロノブさん、遠藤正明さん、きただにひろしさん、奥井雅美さん、福山芳樹さんというアニソン界のビッグアーティストが集うユニット・JAM Project。2000年の結成以来、これまで数々の挑戦を続けてきた彼らのドキュメンタリー映画「GET OVER -JAM Project THE MOVIE-」が2月26日(金)から3月11日(木)に公開されます。今回は、そんなアニソン界“初”の快挙をまたもや成し遂げた5人へのインタビューを2回にわたってお届け。前編は今回の公開される映画への思いについて――。

――そもそも、このドキュメンタリー映画はなぜ作られることになったんでしょうか?

遠藤 むしろ僕らが教えてほしいですね。

一同 (笑)。

遠藤 「牙狼」シリーズを作られている東北新社(本作の制作を担当)のプロデューサーさんが僕らにずっと、興味を持ってくれていて。

影山 それからいろんな人の愛が集まって、このドキュメンタリー映画という企画ができたんでしょうね。

――最初にドキュメンタリー映画を作られると聞いたとき、どう思われました?

影山 人生で初めて映画になるから、「ドキュメンタリーって、どういう風になるんだろう」と思った。

遠藤 最初に話を聞いたときは、僕らのドキュメンタリー映画って成立するのか疑問で。撮られてる最中も「何をもって映画として成立させるのだろうか」と疑問だったし。

奥井 私は「作っても、観てくれる人ってどれくらいいるんだろう」とか、お金のこととかも考えて少し不安があって。「牙狼」でずっとお世話になっている東北新社さんに迷惑をかけられないし。でもうちはザルバ(「牙狼」シリーズで影山さんが声をあてるキャラクター)もいるしね。

影山 美人魔戒法師(「牙狼」シリーズで奥井さんが演じるキャラクターの職業)もおるし。

奥井 すごい実力のある魔戒法師ですよ(笑)。そういう縁や愛があっていただけた話だったけど、驚きはしましたね。

福山 僕はドキュメンタリー映画が作られるって聞いたとき、ライブの映像があって、あとはちょろちょろっとインタビューが入るくらいかなと考えていたんですよ。ドキュメンタリーって、これまでのライブBlu-ray/DVDの映像特典くらいのイメージしかなかったから、あれの画質がプロっぽくなるくらいかなと。

きただに (笑)。

福山 ただ撮影が始まったら大澤嘉工監督が僕らのことをずっと撮ってて。上手くいってるときも上手くいってないときも。その内、監督とも普通に話すようになって友達になって。

きただに 最初はカメラを意識したこともあったけど、1年半も一緒にいたら途中からその存在感が薄れていきました。でも監督としては、そういう自然体のほうがいいものが撮れていたのかもしれないですね。

――ライブの密着取材などはこれまでもありましたが、レコーディングまで撮影されるのは結構神経を使われたんじゃないですか?

影山 ダニー(きただに)も言ったように、最初はやっぱり意識してたかもしれないですね。でもレコーディングは毎日のようにあったので、だんだんカメラの存在は空気のようになっていって、その内、平気でカメラの前で喧嘩するようになって。

奥井 喧嘩というより兄さんが……。

影山 あー……レコーディングが忙しくなってきたところで、福ちゃんが中国でのコンサートから帰ってきた翌日、全然声が出てなくて、俺がもう思わず怒っちゃって。

奥井 でもそれを言ってる影山さんの横で監督はじっとカメラで撮ってて。

きただに 監督からしたら「やった!」だったでしょうね。

影山 でも映画ではそこはカットされててホッとした(笑)。福ちゃんも悪いと思って「ごめんね」と言ってたけど…

奥井 後日、録り直したんだよね。

影山 あんな声でも一応歌ってみるのが面白くない? ガラガラ声でパッと歌ってみて「……これをどうしようか」となったよね。

遠藤 今思えば面白い。

――1年半も一緒にいたということですが、監督は合計何時間分くらい撮られたんでしょうね?

影山 この間、監督とリモートで話しているときに、俺たちが喋った言葉をすべてテキストにしてプリントしたものを見せてもらったんですよ。「この中から絞り込んで編集していった」という紙の束を。

奥井 すごい量だったよね。

影山 広辞苑と同じくらいの分厚さでした。

――それだけ膨大な撮影時間から絞り込まれた映像で本作は構成されたと。みなさんはすでに試写会で観られたそうですが率直な感想をお聞かせてください。

遠藤 僕らは2回観たんですけど、1回目はやっぱり自分のことなので恥ずかしかったものの、観終わったあとにすごく感動して。2回目はまた違った感じで観られました。すごくいいものにしていただきましたね。

奥井 撮られているときはまさかこんな形の、ちゃんとしたドキュメンタリー映画になるとは思わなかった。ほかの方のドキュメンタリー映画は観たことあるけど、自分たちだとこんな風になるんだなって。あとは、みんなに対する愛着が今まで以上に湧きました。

きただに 僕はテレビで「セブンルール」や「情熱大陸」といったドキュメンタリー番組が好きでよく観ているんですけど、頑張っている人や壁を乗り越えた人の言葉って共感や感動があるじゃないですか。それらと同じように客観的に見ても、この映画は感動できるいいドキュメンタリーでした。

影山 ドキュメンタリーって例えばコンサートへの道のりとか、かっこいいところや苦労を見せながら何らかのものに至る、みたいなのはよくあるけど。ただ今回の映画はそうじゃなくて途中でコロナ禍に突入してしまった。それでも最後は自分たちの気持ちが前向きになって終わって、僕はすごく感動しました。

福山 僕も20周年記念ツアーがエンディングになるものだと思っていたけど、途中から空っぽの客席が映って……まさにコロナ禍真っ只中の映画になった。

きただに まさかの展開でしたよね。

福山 観たときは遠ちゃんと同じく恥ずかしさもあったけど、それ以上に感動しました。「誰もみたことのないJAM Project」というキャッチコピーが付いているけど、僕も20年一緒にいたのに知らない話がメンバーの口からたくさん語られていて。今さらながらJAM Projectってすごくまとまりがある、絆が強いグループなんだなと思いました。

――映画を観ていて印象的なシーンがレコーディング風景のシーンでした。梶浦さんのディレクションに対して「あー、はいはい」という感じでみなさんがすぐに対応されていて、ゾクッとしました。

きただに まっくん(奥井)が歌うシーンですよね。梶浦さんのディレクションの前後で、普通に聞いてもわかるくらい明らかに変わって。あれは圧巻ですよ。あとその後の梶浦さんの「JAM Projectという塊はこういうものなんだ」というお話も印象的でした。

影山 あの言葉は嬉しかったね。

――ちなみにその流れで伺いたいのですが、そうやってレコーディングしているところで遠藤さんが1人でMacを触っているのが面白かったですが、あれは何をご覧になっていたんですか?

遠藤 え、音の資料とか……。

奥井 次に自分が歌うところを確認していたんだよね。

影山 ヘッドホンで最後に音を確認して自分のレコーディングに向かうんですよ。

遠藤 別に卑猥な動画を観ていたわけではないですよ(笑)。

一同 (笑)。

――先程きただにさんに奥井さんのレコーディング風景を語っていただきましたが、同じようにみなさんも自身のシーン“以外”で本作の印象的なシーンを教えてください。

奥井 私はみんながインタビューされているところ。「こんなに自然体で喋ってるんだ。かっこいいな」と思いました。でもダニーは自分のシーンが嫌らしいんですけど。

きただに 僕の顔ね。

奥井 この期に及んで(笑)。でもみんなナチュラルにかっこいいことを喋っていて、やっぱり50を過ぎて音楽の仕事を続けてきた大人なんだなと思った。ファンの方々にはDVDとかでいつもふざけてるところを見せているけど、そうじゃないところも映画では見られるからキュンとするかも。

影山 俺はレコーディングで「ちょっとこのパートは合わないよね」とメンバーの歌い分けが代わるところ。歌割りを変えたり、1回OKはしたものの2番で同じところを別の人が歌ったらそっちのほうがいいから1番もやり直そうとかよくあるんだよね。そういう風に計画的ではなく模索しながら、「やってみなきゃわからない」ということを前提にやっているのをファンのみんなに知ってもらえるとすごく嬉しいです。

きただに 僕はさっき言ったまっくんの歌以外だと、予告編でも使われている福ちゃんの「JAM Projectの体が重くなってきたのかな」という言葉も結構来ました。発声の仕方も声優さんみたいだし。

福山 重くなってるんだよね。

奥井 自分の見た目ってこと?

福山 はい……。

影山 (お腹を叩きながら)俺のお腹がドキュメンタリーやねん!

きただに 名言出た!

【取材・文:はるのおと】

『GET OVER -JAM Project THE MOVIE-』
2021年2月26日(金)~3月11日(木)まで2週間限定ロードショー
【CAST】
JAM Project:影山ヒロノブ、遠藤正明、きただにひろし、奥井雅美、福山芳樹
Guest Artist:ALI PROJECT/angela/GRANRODEO/FLOW/梶浦由記
【STAFF】
監督:大澤嘉工/製作:井上俊次、二宮清隆/企画:松村起代子、宇田川美雪/プロデューサー:高橋義人/撮影:脇屋弘太郎、西岡章/録音・音響デザイン:石寺健一/オンライン編集:波江野剛/ラインプロデューサー:安養寺紗季、原啓介/制作:東北新社/配給:東宝映像事業部

リンク:映画「GET OVER -JAM Project THE MOVIE-」公式サイト
     公式Twitter・@JAMProject_eiga

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