新作&おすすめアニメのすべてがわかる!
「月刊ニュータイプ」公式サイト
2025年4月クールの話題作「ロックは淑女の嗜みでして」。そのオープニングテーマで、激烈なイントロから一気呵成に突き抜ける衝撃の一曲「Ready to Rock」は、メイド衣装に身を包み、テクニカルなハード・ロックサウンドを奏でるBAND-MAIDの最新シングルだ。さらに本編の演奏シーンのモーションキャプチャー収録のエピソードまで、「ロックは淑女の嗜みでして」とBAND-MAIDが引き起こしたケミストリー(化学反応)を、ボーカルのSAIKI、ギターのKANAMI、ドラムのAKANE、ベースのMISAの4名にたっぷりと語ってもらったインタビューを前後編でお届けしたい。前編では、楽曲の制作背景からMVの撮影秘話などを中心にうかがった。
BAND-MAID
――今日は「ロックは淑女の嗜みでして」(以下、「ロックレディ」)のオープニングテーマ「Ready to Rock」の話題を中心にお話をうかがっていこうと思っているのですが、本題に入る前に……何でもAKANEさんはアニメがかなりお好きだとか。どんな作品がお好きなんですか?
AKANE(Dr.) え、いっぱいあるんですけど、作品名とかも出していいんですか?
SAIKI(Vo.) めちゃくちゃ幅広く見てますよ。
KANAMI(Gt.) あんまりオタクモードに入らないでね(笑)。
AKANE 気をつける(笑)。そうですね……わりと春アニメ、夏アニメみたいなシーズンごとに、新作はなるべくチェックするようにしていて。スポ根もの、青春もの、恋愛もの……何でも見ますし、異世界ものも好きで……確かに多ジャンルですね。
――言葉の選び方がすでに「ガチ」感がありますね。
KANAMI 「ハイキュー!」の聖地巡礼とかしてたよね?
AKANE しました(笑)。
――アニメ好きになったきっかけは何なんですか?
AKANE きっかけは「カードキャプターさくら」なのですが、「シャーマンキング」を好きになってから、がっつりアニメを見るようになった感じです。「自分はアニオタなんだ!」と認識するようになったのは、深夜アニメをたくさん見るようなってからですね。アニソンをよく聴いたりするようにもなって、どんどんアニメにハマっていきました。
――心のアニメはなんですか? 「無人島に1本だけ持っていくとしたら?」みたいな。
AKANE 「エヴァ」がすごく好きで。自分のドラムセットも、いちばん好きなアスカのプラグスーツの色を取り入れたりしてるんです。だからやっぱり、その質問の答えは「エヴァ」ですかね……。
――なるほど。アニメ系の媒体に登場されるのは珍しいと思ったので、せっかくですからうかがっておかねばと。
AKANE うれしいです(笑)。
――では、仕切り直して本題に。まずは「ロックレディ」の原作を読んだ感想からうかがわせてください。
AKANE 音楽、バンドを題材にしているマンガはこれまでもいくつか読ませていただいていたのですが、「ロックレディ」はインストバンドが題材な点が新鮮だったのと、作中に専門的な音楽用語が入っていたのが印象的でした。「こんなにリアルな音楽のマンガがあるんだ!」とびっくりしたんです。それから、実在するバンドのアーティスト名や曲名が出てきて、そうした方々や曲のことを知れる点も魅力的でした。
MISA(Ba.) 私は出てくるキャラクターたちが音楽に対しての気持ちをさらけ出しているところに惹かれました。キャラクターたちには尊敬できる部分もあって、いろいろな意味で刺激的なおもしろさがありましたね。
KANAMI 私の感想は、まず「絵がかわいい! こういう絵、好き!」でした。そのあとで感じたのは、ギャップの魅力ですね。とてもかわいらしい子たちがバチバチに言い合うシーンが印象的だったんです。音楽にも真摯に向き合いつつ、そういうギャップを見せてくれるところに、強く惹かれました。
SAIKI 私もお嬢様とロックのギャップがおもしろかったです。「何だかBAND-MAIDみたいだな」って(笑)。見た目とやっている音楽のギャップのイメージだけじゃなく、音楽に対する熱い気持ちとか、そういったところも自分たちとリンクしてると感じて。とにかく共感できるところが多すぎて、読み進めるうちにどんどんのめり込んでいきましたね。
SAIKI(Vo.)
――出会うべくして出会った作品とバンドっていう感じがありますよね。
SAIKI アニメの制作チームの皆さんがお給仕(ライブ)にごあいさつに来てくださったときにも、そう言ってくださいました。うれしかったです。
――そこから「Ready to Rock」という楽曲は、どのようにつくられたのでしょう?
KANAMI まずマンガからイメージを広げていきました。りりさちゃんと音羽ちゃん……ギターとドラムがかなり目立つ作品な印象だったので、ドラムとギターがバチバチの状態から始まるような楽曲にしました。実は最初に提出したデモは歌始まりだったんですけど、SAIKIから「このアニメはインストバンドが主役なんだから、もっとインスト感を出してもいいんじゃないかな」とアドバイスをもらって、インスト曲っぽく始まるようなイメージにしようと、イントロを伸ばした状態で再度提出させていただいたんです。
KANAMI(Gt.)
――イントロのギターもドラムもテクニカルで、毎週放送で聞くたびにびっくりします。
KANAMI ドラムは最初のデモ段階ではもう少したたきやすいフレーズだったんですけど、デモを提出したときに「音羽みたいに、もっと激しい感じのドラムでお願いします」とアニメのスタッフさんたちからフィードバックをいただいたので、直していったらちょっと難しくなっちゃいました(笑)。
AKANE 大変でしたね(笑)。 でも、ギターとドラムがピックアップされているマンガというのがうれしかったですし、やっぱり目立ちたいっていう気持ちもあるし、音羽ちゃんが超絶技巧のドラマーということなので、私も負けていられないなという気持ちもあって、挑戦するような気持ちで録りきりました。多分、BAND-MAIDとして今まで演奏してきた曲のなかで、過去一ツインペダルを踏んだ曲です。
AKANE(Dr.)
――そうした激しいギターとドラムに、ベースはどんな形で今回絡んでいこうと考えました?
MISA ギターとドラムが遊んでいる分、ベースは土台をしっかりするイメージで弾きました。そこでベースも遊ぶと、音がぶつかってしまいますからね。そのうえで、空いてる隙間があったらスラップを入れてみたり、ちょっとだけベースが前に出てくるような、遊びを入れるイメージでしたね。
MISA(Ba.)
――SAIKIさんはそこに歌詞を書き、ボーカルを乗せていくわけですけど、こちらはいかがでしたか?
SAIKI まず、BAND-MAIDにとってここまでテクニカルに凝っている曲は少し久しぶりだったので、そのなかでどう映えるかの言葉選びにとても悩みました。オケはテクニカルなんですけど、一方でメロ、特にサビのメロがキャッチーなので、そこに負けないような、皆さんの耳にもスッと届くようなバランスで歌詞は考えていきましたね。もうひとつ、曲のメロのなかに、これはきっとライブでお客さんといっしょに歌える部分だなと感じられる部分もあったので、そういうKANAMIの意向というか、狙いも汲み取って、その部分には変に言葉を詰め込まずに、いっしょに歌えるバランスを考えたりもしました。
――なるほど。
SAIKI 歌詞全体としては、原作にとても共感していたので、原作に出てくる言葉……「交わる」「滾る」とかをピックアップしつつ、そうした気持ちにさらにBAND-MAIDの今までの歴史を重ねたりしながら書いていきました。
――BAND-MAIDとしての歩みを曲や作品の内容に重ねた部分というと、どのあたりになるんですか?
SAIKI 主人公のりりさが、お嬢様として生きると決めてもロックを諦められなかったところですね。BAND-MAIDを結成して12年目になるんですけど、最初の2年間ぐらいは「自分たちのロックを見つける」期間だったんです。そのころは今やっているようなハードロック路線だけではなく、いろんなタイプのロックをやっていて、2年かけてようやく、今の形が見つけられました。きっかけになるような曲に出会えたんです。
――代表曲のひとつ、「Thrill」(2015年リリース)ですね。
SAIKI はい。その曲に出会ってからも、やっぱり見た目……私たちはメイド服のことを「戦闘服」とか「正装」と呼んでるんですけど、それを着た外見と音楽性のギャップで、なかなか受け入れてもらえないというか、見た目だけで判断されて曲までたどり着いてくれなくて悔しい思いをしたことも多かったんです。原作でも、「無理な夢を追いかけるのはどうなの?」みたいなことを言われる描写があるんですけど、まさに実際に私たちも言われたことがある言葉だったので、そのころを思い出して普通にムカついちゃったというか。「何言ってんだ!」みたいなことを思って(笑)。「夢を追って何が悪いんだ!」みたいな気持ちになったので、今、原作を手に取ったり、アニメで「ロックレディ」を知った若い子に、「夢をあきらめなくてもいいんじゃないか」とメッセージを伝えたくて、その要素を歌詞にも盛り込みました。
――ますます出会うべくして出会った作品とバンドなんだな、という思いが強くなりました。MVもインパクトがありますが、何か収録秘話はあったりしますか?
SAIKI まず「原作に寄り添ったミュージックビデオにしてみたい」というアイデアがあって、スタッフの皆さんに「撮影できる学校を探してください」とお願いするところから制作が始まったんです。そして、ギターとドラムのバトルが印象的な曲なので、2人だけのバトルシーンを入れるのは必須で、と。それと、最終的に曲がラスサビに向けてどんどん盛り上がっていくので、そういうストーリー性を大事にしたいと思いました。最後は学校でライブしているようにしたいというか、「私たちがいるだけでどこでもライブ会場になる」というのを表現したかったんですよね。
――ああ、なるほどです。
SAIKI あと、もうひとつ、ダンサーさんをいっぱい入れて、エキストラさんも入れて撮影するのが前々から夢だったんです。それもお願いして、この機会にやりたいことを全部言ったら、全部かなった感じでしたね(一同笑)。
KANAMI あと、撮影した学校のすぐ真隣に海がありまして。朝ごはんを海を見ながら食べられたので、私はそこに癒やしを感じておりました(笑)。ねえ? AKANE。
AKANE すっごい気持ちよかったです(笑)。
SAIKI 丸2日かけて撮ったんですけど、これってBAND-MAIDにとって過去最大規模の撮影で。
KANAMI 長かったね。
AKANE あとはやっぱり本物の学校で撮影したので、生徒さんとか先生とかがいらっしゃってあいさつしたりしたのも新鮮で楽しかった。
KANAMI すごい教育熱心な先生がいらっしゃったんだよね。
MISA あの学校の雰囲気が懐かしかった。……あ、思い出した。机の上で演奏するシーンがあって、どうしても机はちょっと揺れるから、すごく怖かったですね。私は別に高所恐怖症じゃないんですけど、それでもあれだけ怖かったのに、高所恐怖症のKANAMIが足を上げてガッツリ演奏していたから、すごくおもしろ……。
KANAMI おもしろかったの!?(笑)
MISA あ、いやいや、カッコよかった(笑)。
SAIKI (笑)。みんなでKANAMIの撮影を裏で見てたんだよね。で、「すごい!」って。
MISA やっぱり豹変するじゃないけど、演奏すると気持ちが変わるんだなって。
SAIKI 何かが憑依してるなって。
MISA そうそう。スイッチ入るんだなって。それが私の撮影の思い出です。
KANAMI ……私のことが思い出なの!? あ、ありがとう(笑)。でも本当に高いところは苦手なので、「あ、また高いところで撮るんだ……」と思いましたね。以前からお世話になっている青木亮二監督が今回も撮ってくださったんですけど、「また高いところですね。すみません、すみません」って何度もおっしゃって(笑)。
AKANE いつも怖いところはKANAMIだもんね。
KANAMI そう。でも、怖くても、「よーい、ドン!」で撮影が始まったら、なんだかできるみたいです。
MISA ホントすごいよ。
BAND-MAID「Ready to Rock」
【取材・文:前田久】
■BAND-MAID「Ready to Rock」
配信中
リンク:BAND-MAID公式サイト
BAND-MAID公式X(Twitter)・@bandmaid
BAND-MAID「Ready to Rock」各配信サイトリンク
「ロックは淑女の嗜みでして」公式サイト