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【第15回「声優アワード」受賞者インタビュー】助演男優賞 子安武人さん

2021年3月6日、2020年度に最も活躍した声優を称える第15回「声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、助演男優賞を受賞した子安武人さんへのオフィシャルインタビューをお届けします。

ーー子安さんは長年最前線で活躍されていますから、てっきりすでに受賞されているものだと思っていました。

子安 周りからも言われたんですけど、残念ながら今回が初受賞です。だから本当にビックリしています。こういう賞には縁がない人生と諦めていましたが、まさかこのキャリアと年齢になっていただけるとは。多少の気恥ずかしさはありますが、でもメチャメチャうれしいです。何よりも、これまでいっしょになって作品をつくってきたスタッフさんたちが僕以上に喜んでくれていて、僕にとってはそれがなによりもうれしいですね。

ーー子安さんにとって賞の選考対象期間はどんな一年でしたか?

子安 特にコロナの影響が大きかったですよね。予定していたものが延期や中止に追い込まれたり、収録を終えていたものも放送が延びたりして、正直「2020年と言えばこのキャラ」っていうのはピンとこないんですよね。

ーー子安さんはアクの強いキャラクターを何年にもわたって演じつづけていたりもするので、一概に「2020年」という一年でくくるのは難しいですね。

子安 選考の対象時期からすると、おそらく「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のクラウディア・ホッジンズが大きかったのかなとも思いますが、でもこれまでもずっと助演的な役柄を演じさせてもらってきたので、僕としてはデビューからこれまでに演じてきたあらゆるキャラクターを含めて、たまたま今回こういう形で賞をいただけたのかなと感じています。

ーーそうだと思います。ちなみにそのホッジンズについては、ご自身のなかではどのような存在になりましたか?

子安 大げさな言い方になりますが、運命というか「役が僕を呼んでくれた」キャラクターです。オファーをもらった時、これはいい作品だというのがビンビンと伝わってきたので、絶対にやりたいと思ったんです。色々やりくりして収録日を空けることが出来てなんとか実現できたんですけど、こういうことはなかなかないんですよ。

ーー思い入れの強い役を、実際に演じることができるケースは意外と少ないんですね。

子安 そうですね。絶対にやりたいと思うキャラクターは、まずできない(笑)。だからこそ、こうして糸を手繰り寄せることができた時は「これは役に呼ばれたんだ」と思うんです。これは「ジョジョの奇妙な冒険」のディオが決まった時も同じ感覚を覚えました。

ーーなるほど。子安さんは若いころから悪役を演じることが多いですが、ヒールを演じるにあたっての美学やこだわりはあるんですか?

子安 それが、特にないんです。僕が考えているのはキャラクター性をどう表現するかで、正義や悪という観点でお芝居をしたことはないんです。それに僕を起用してくださる方々は、それぞれに明確な意図やイメージをもっていることが多いので、僕としては自分のこだわりよりも、まずはその人の期待にこたえることを第一に考えています。

ーーつくっていった芝居の方向性を現場で変更することもあるんですか?

子安 それはしょっちゅうです。たとえば今放送している「SK∞ エスケーエイト」の愛抱夢(アダム)なども、僕がもともと用意していったのはもっとクールでドライな感じだったんです。でも現場でディレクションを受けた結果、ああいう変態チックなキャラになって(笑)。でもオンエアを見たらやっぱりそっちのほうがおもしろいんですよね。そういうときは「新しい芝居を引き出してくれてありがとう」という気持ちもありつつ、ちょっと敗北感も感じます。

ーーそうだったんですね。クセの強い悪役を演じている子安さんは実にノリノリで、自由に楽しんでいると思っていました。

子安 そう思わせることができたなら、僕の勝ちですね(笑)。もちろんマイク前ではそういうテンションにもっていきますけど、そこに至るまでは必死です。確かにヒールを演じることが多いですが、僕としては自分から「イかれた役をやらせてくれ」と言ったことはないんです。なにしろ大変ですから。

ーー「Re:ゼロから始める異世界生活」のロズワールもかなり濃ゆいキャラクターですが、これも現場で仕上がったんですか?

子安 ロズワールは最初から今のキャラクターでつくっていて、珍しく修正はなかったですね。最初に披露したときにはスタッフさんから「なんでこのセリフが読めるの?」って言われたんですけど(笑)。

ーー「だぁ〜あね」など、語尾を伸ばす話し方が個性的ですが、子安さんの頭のなかでは最初からあのイントネーションで響いていたんですね。

子安 そうですね。単純に語尾に「だぁ〜あね」を置くだけでは聞くに耐えないものになっていくと思ったので、そこにニュアンスや感情を加えることで世界観になじませようとしたんです。今では彼の口調に疑問を抱く人はいませんから、ちゃんと馴染んでくれたのかなと思います。

ーー奥深いですね。では最後にこれからの目標について教えてください。

子安 もちろん主演男優賞です(笑)。子安にチャンスをあげようじゃないかという業界の方々がいたら、ぜひ主人公役でお声掛けください。まあそれは半分冗談で、これからも「子安さんがいると華が出るね」とか「物語が締まるね」など、「子安さんがいると○○だね」と言っていただけるような声優をめざして努力しつづけていたいと思います。


●こやす・たけひと/5月5日生まれ。神奈川県出身。ティーズファクトリー所属。主な出演作に「銀魂」(高杉晋助)、「ONE PIECE」(クザン)、「進撃の巨人」(ジーク)など

【取材・文:岡本大介】

第15回「声優アワード」受賞者、受賞作品(敬称略)

●主演男優賞:津田健次郎
●主演女優賞:石川由依
●助演男優賞:子安武人、島﨑信長
●助演女優賞:上田麗奈、鬼頭明里
●新人男優賞:伊藤昌弘、小林千晃、土屋神葉
●新人女優賞:逢来りん、市ノ瀬加那、杉山里穂、藤原夏海、和氣あず未
●歌唱賞:ワルキューレ
●パーソナリティ賞:安元洋貴
●功労賞:増山江威子、津嘉山正種
●シナジー賞:プレミア音楽朗読劇「VOICARION IX 帝国声歌舞伎~信長の犬~」
●富山敬賞:関俊彦
●高橋和枝賞:榊原良子
●キッズファミリー賞:中川里江
●外国映画・ドラマ賞:山路和弘、小宮和枝
●インフルエンサー賞:小岩井ことり
●MVS(Most Valuable Seiyu):下野紘
●特別栄誉賞:鬼滅の刃
※今回は、ゲーム賞の該当者なし
※今回は、特別功労賞に代えて、本年度ご逝去された声優を顕彰しました。

リンク:「声優アワード」公式サイト
    公式Twitter・@seiyuawards
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