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「四畳半」が12年ぶりに完全新作として帰ってきた!
9月30日(金)より全国劇場で公開される「四畳半タイムマシンブルース」。
最高に贅沢で、確実に必要な「無駄な夏休み」を描く本作。主人公である「私」を演じる浅沼晋太郎さん、そして「私」にまとわりつく大学生・小津を演じた吉野裕行さんの対談をお届けします。
――2010年放送のTVシリーズから12年。「四畳半」の新作制作の報が届いたときの思いは?
浅沼 またあのキャラクターたちに出会える、演じられるんだっていう純粋な喜びと、今の自分にあれができるだろうかという不安が入り混じってましたね。振り返ってみても、自分にとって「四畳半神話大系」はターニングポイントになった特別な作品で、脚本を上田(誠)さんが手がけられていたこともあるんでしょうけど、演劇界だったりふだんアニメを観られないような方々にも届いた作品だったので、再び臨むにあたっては、やはりプレッシャーもありました。
吉野 単純に久々なので、うれしかったですね。今回は「四畳半神話大系」のときの小津とはキャラクターのポジションがまた少し異なると思うので、また新たな小津に関われるのがうれしい、という気持ちが強かったです。
――原作あるいは台本を読まれて、物語にどんな魅力を感じましたか?
浅沼 僕は元々、実写映画の「サマータイムマシンブルース」を観ていたんですね。なので、この物語が「四畳半」の世界観とこんなに違和感なく混ざり合うんだって、こんなに親和性が高いんだって、ちょっとした感動を覚えました。なんというか、から揚げにマヨネーズをかけたときの驚き、みたいな(笑)。そうか、鶏と卵だもんな、そりゃ相性いいよな、みたいな変な納得がありました。
吉野 まず、タイムマシーン……SFものだ!と思って、あとは、この中で小津としてやっていくということに集中して読み解いていったので、僕はどの作品でもそうなんですが、客観的な感想はあまりなかったかもしれません。特に小津は、物語の流れとかに関係なくあっち行ったりこっち行ったりしますしね。ただ、全体の印象としては、「四畳半神話大系」の座組の人たちが違う演目をやってるような、そんな印象もありました。
――久しぶりに演じられて、いかがでしたか?
浅沼 僕はもう本当に、めちゃめちゃ時間をかけて収録していただいたんです。「私」について夏目(真悟)監督とディスカッションしたり、その結果、すでに録り終わっていた部分のナレーションを録り直ししていただいたり。その日まだ時間に余裕があったとしても、「今日はここまでにしておきましょうか」と一呼吸おいてくださることもありました。日数を置きながら収録したので、後半になるにしたがって、収録の済んだキャラの声が映像に加わっていくわけです。そして、最後に(坂本)真綾さんの声が入ったときに、ああっ、明石さんが戻ってきたあって、やっぱりとてもうれしくて。少しずつ作品が出来上がっていく感じをリアルタイムに味わえた収録になりました。
――どんなことをディスカッションされたのでしょう。
浅沼 僕にとって、特別な作品、特別なキャラだったので、技術面でもキャラクター性に関しても、最初はちょっと凝り固まった考えをしたまま臨んでしまったんですよね。技術面で言うなら、12年前より劣っていてはいけない、みたいな。でも、当然ですが今回は今回の「私」を描くわけで、12年前の「私」をなぞろうとするのは、必ずしも正解ではなくて。そのあたりの焦点がズレてしまっていたので、途中、監督とお話しながら見出していきました。キャラクター性については、それまでは、成長しない、どこまでも愚かで不毛なところが「私」の魅力だと思っていたんですけど、それでも「私」だって少しは成長しているのだ、これは別の世界線の「私」なのだ、という監督のお話を伺って、そうかと思って。今まで自分が思い込んでいたものを一度捨てて、新たに「四畳半タイムマシンブルース」という作品を受け入れることで、すっきりした気持ちで「私」役に臨むことができました。
吉野 たしかに僕も、なんかあの頃やってた小津に踊らされないようしないと、って考えていた気がします。揺るがず変わらずやりたいという役者としての欲がでちゃうんですけど、でも、時は経つし、歳もとるし、感性も変わりますしね。TVシリーズの収録現場には毎週レギュラーでやっていくからこそ生まれるリズムというかグルーヴがありましたが、今作は1本で完成する物語なので、やっぱり別物でしたね。
浅沼 今回の小津は、もしかしたら、少しおとなしいな、と思う人もいるかもしれないけど、逆にすごく人間味があって、チャーミングに見えるんじゃないかって思います。その変化って、僕はむしろお気に入りでした。
吉野 そもそも小津って「私」にいつも迷惑かけてるかのような言われようですけど、いや、かけてますけど、そんなに悪い間柄でもないよねって思いますよね。樋口師匠とか相島先輩だって大概ですしね(笑)。
――作中に描かれる夏の情景や青春模様にシンパシーを抱く部分はありますか?
浅沼 僕も大学で映画を撮っていたんですけど、あんな規模じゃなかったので、スタッフいっぱいいてうらやましいなあとは思いました(笑)。あと、東京に出てきてすぐの夏、めちゃくちゃ暑かったのは覚えてます。北国育ちにはコタえましたね。そしたら大家さんが「この夏、何もなしじゃ死んじゃうから」って言ってエアコンつけてくれました(笑)。あとはバイトばっかしてましたねぇ……。
吉野 一方、僕は、学生時代はエアコンガンガンかけてファミコンやってました。で、なぜだかエアコンがギュイーンってなるとTVの画面が波打つという光景をめちゃくちゃ覚えています(笑)。
浅沼 お互いどうでもいい夏ばかり(笑)。
吉野 ほんとね。でも、どうでもいい夏こそが、青春なんです。
――最後に、公開を楽しみにしているみなさんへメッセージを!
浅沼 12年間待ってましたという方にも、この作品で「四畳半」の世界に初めて触れる方にも、心からオススメしたい映画です。2022年の小さなお土産みたいな作品になりましたので、ぜひ大切な人と一緒に観ていただければと思います。
吉野 この1本で完結してる物語ですしね。とにかく、ひと夏の思い出を下鴨幽水荘でみんなが共有するような物語になっているので、あの面々が一堂に会してる!っていう楽しさを味わっていただきたいです。ちっぽけな問題で右往左往して騒ぎ立ててる奴ら、本当しょうもないなって思いながら観ていただけたなら、何よりです。
10月7日発売・ニュータイプ11月号では、監督・夏目真悟さんと脚本・上田誠さんの対談を掲載! 悪魔的融合とうたわれた本作がいかにして出来上がったのか?に迫ります。こちらもチェック!
【取材・文:ワダヒトミ】