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天才的な頭脳をもつ平賀と、古文書や暗号の専門家のロベルト。2人の若き神父は、世界各地の教会から申請された「奇跡」の真偽を、現地に赴き調査する「奇跡調査官」。藤木稟さん原作の人気小説を、荘厳かつ神秘的にビジュアル化した、TVアニメ「バチカン奇跡調査官」。世界観を表わす独特なことばや、謎を解明する長い説明など、難しいセリフが多い主人公・平賀を好演中の岡本信彦さんに、作品やキャラクターの魅力を伺いました。
――原作や世界観の感想をお聞かせください。
岡本:パズルのピースがどんどん積み重なっていて、謎解きの答えへと導いてもらえるような、ミステリー小説初心者の方でも楽しめる内容だと思いました。あと、アニメが好きな方なら一度は聞いたことがあるような単語が出てくるので、興味を引かれるし、初めて触れる方は単語の意味を調べてみたくなるんじゃないかと感じています。
――岡本さんが演じる平賀と、諏訪部順一さんが演じるロベルトについては、どんなキャラクターだと受け止めていますか?
岡本:ロベルトはキャラクター設定に「秀才」と書かれているんですけど、僕は天才だと思っています。勉強ができる、努力の天才。ロベルトの一番優れた能力は、平賀と会話ができるほどコミュニケーション能力が高い、というところですね。天才の人って会話が成立しないイメージがあって(笑)、相手に伝えようという感覚がなかったり、相手も理解して当然という意識があるから起こる現象だと思うんですけど、ロベルトは平賀以外の人としゃべっているときも高いコミュニケーション能力を感じるし、相手のレベルに合わせて会話できる人だと思います。平賀は少し天然な部分もありつつ、常人とは違う考え方ができる人で、ギャップがある天才というイメージがあります。会話が成り立つのがロベルトと(斉藤壮馬さん演じる)ローレンだけなので、自然と独り言が多くなってしまい、独り言の中で自分の考えを整理しているのかな、と思っています。
――平賀とロベルトの2人の関係性に対する印象はいかがですか?
岡本:際限なく絆が深まる関係性だと思います。2人とも知識量が多く、理系と文系に分かれているじゃないですか。自分の得意ではない部分を教えてもらえる、知識が満たされていくという感覚は、楽しいんじゃないかと思います。あと、すべての事件が、平賀とロベルトのためにあると思ってますね。吊り橋効果じゃないですけど(笑)、2人の絆を深めるために事件が存在している気がします。
――平賀を演じるにあたって、役作りのポイントや気をつけていることは?
岡本:ロベルトもそうなんですけど、説明セリフが多いんですよ(笑)。技術的な面では、硬くなりすぎず、皆さんにわかってもらえる限度の速いスピードで読めたらという、というところですね。事件が2人のためにあると感じたのがなぜかと言うと、会話するごとに、2人の関係性を積み上げているような印象を受けたからなんです。それが1話ごとにあればいいな、と思いながら演じています。平賀が言ったことに関して、ロベルトが難しい単語も繰り返して会話として成立させてくれてる感じがするんですよ。平賀として、「ロベルトはこんなことも知ってるんだ」という感心や、「自分と会話してくれている」という喜びを深めていけたら、と思っています。あとは神々しさとギャップですね。ギャップは、原作を読んでいるときには気づかなかったんですけど、演じていくにあたって、天然っぽさに加えて冷徹さもあるな、と。硫酸をかけちゃうところ(第4話)は、普通の人にはない感覚で、その普通の人との差が平賀の奥行きになっていて、彼の怖さでもあり、魅力でもある気がします。
――難しさやりがいという点ではいかがでしょう?
岡本:とにかくセリフが多いので、そこが難しさでもあるんですけど、限られた時間の中でやり遂げていることは、やりがいにもなっていますね。このギリギリ感とセリフ量は、今後ないと思うんですよ。制作の方々も、やりたくてギリギリにしているわけではないと思うんですけど(笑)、逆に自分へのステップアップの材料になっていると思います。長い説明セリフの中で苦手なことばをどう克服するか、また読むだけではなく何を入れられるか、キャラクターをどう魅力的に見せられるか……それを瞬間的にやらなければいけないので、この現場こそ「声優の現場」というイメージが強いですね。声優以外にはできない現場だと、胸を張って言える気がします。
――ED主題歌「サクラメント」も担当なさっていますね。
岡本:歌手としてデビューさせていただいてから、ずっとアニメのOP、EDをやりたいと言って続けていまして、ようやく願いが叶いました。僕はもともとアニメが好きなので、その“顔”であるOP、EDを歌えるというのは、ものすごく幸せで特別なことなんです。キャラクターソングではなく、自分の名義で歌えたのもうれしかったです。
――楽曲の印象は?
岡本:曲を誰にお願いするかという話になったとき、何人か希望を出させていただいた中で、「ぜひ」と言ってくださったのが少女病さんだったんです。楽曲もいい感じですし、作品の世界観にも溶け込んでいて、いい仕上がりになったと思います。
――レコーディングはいかがでしたか?
岡本:三拍子も、裏拍から入るのも難しかったです。セリフっぽく歌うというのも難しかくて、タイミングがはずれると音痴っぽく聞こえちゃうんですよね。自分の持ち歌の中では、一番難しいです。ライブで歌ったときに、CDの歌声との差異をなくしたかったので、少女病さんには「簡単にしてください」ってお願いしたんですけどね(笑)。
――岡本さんが感じる、アニメ「バチカン奇跡調査官」の魅力は?
岡本:平賀もロベルトも天才なので、わかりやすくトントン拍子に解決していくんですよね。それをどう受け止めるかで、ライトにもヘビーにも楽しめるんです。謎解きは平賀たちに任せて、2人が解決していく様子を見ているだけならライトに楽しめて、友達にも薦めやすい作品になる。また、ことばの意味をひとつひとつ調べ、裏の裏まで読みながら、いっしょに謎解きをしていくと、相当ヘビーに楽しめると思います。
――岡本さんが体験したり起こしたりした奇跡はありますか?
岡本:この収録ですね(笑)。「バチカン奇跡調査官」の収録は、毎回奇跡を起こしています。セリフ量はすごいのに、収録はめちゃくちゃ早いんですよ。
――最後に、ファンの方々へメッセージをお願いします。
岡本:最終回も間近ということで、ラストがどうなるか、僕たちといっしょに楽しんでいただけたらと思います。勝手な想像なんですけど、平賀とロベルトの関係値がもっと深まったことを示すような会話劇で終わるような気がするんですよね。皆さんはどう予想しますか? その予想もおもしろさのひとつにしていただけたらと思います。
【取材・文/垳田はるよ】