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脱サラし、ネットゲームの世界でイケメンとして生まれ変わった”30歳・独身・ニート”の盛岡森子の冒険を描くアニメ「ネト充のススメ」OP/ED主題歌は、気鋭のバンドマンたちと、揺るぎない思いを持った二人のシンガーによるコラボレーションから生まれました。その、あたたかな”光”を放つ歌声が導く先は――? 中島 愛さん、相坂優歌さんが、それぞれに特別なものとなったという今回の楽曲について語り合います。
――それぞれの楽曲の印象や好きなところを教えてください。まず、フジファブリックさんと中島さんによるOP曲「サタデー・ナイト・クエスチョン」からお願いします。
中島:完成した曲を聞いたときは、フジファブリックさんの世界にボーカルとして飛び込ませていただけたようで、ただただ幸せでした。好きなところは……ありすぎます! 私、あまりにこの曲が好きすぎて、自分は本当に好きなものを前にすると素直に「好き」って口にできないタイプなんだってわかりました(笑)。言えば言うほど、嘘に聞こえてしまう気がするといいますか。
相坂:お気持ちはとてもわかります!
中島:あえて言葉にするなら……ヒリヒリした感じが好きです。曲の終わりに向けて希望が感じられる展開ではあるのですが、全体を通して心を擦りむいてしまったような痛みが感じられるなって。
相坂:オープニングから森子の閉塞感を表現するようで、本当に中島さんの歌い方があっての曲だなと感じました。特に、サビの「夢と光」の伸ばし方がすごく好きです。うまく説明できないのですが……胸にジーンと響くものがあります。
中島:うれしいです! まさに、部屋でボソボソつぶやくようなイメージからサビに向けて徐々に開いていくよう、こだわって収録していただいた箇所なんです。私としては、中性的な感じにしたかったんですね。この曲の芯には、日々、荒波にもまれながら、いろんなことを感じて生きている男女ともに共感できるものがあると思ったから。でも、それをどう表現しようって悩んでいたら、フジファブリックの山内さんが「最大限マイクに近づいて、一番小さい声で歌ってみたら」とアドバイスしてくださって。曲に一番合った歌い方を引き出していただき、私としても新しい扉をいくつも開けられたような貴重な経験になりました。
――「ネト充」という作品を踏まえて聴くと「おっ」となる遊び心も感じられる曲ですね。
中島:そうなんですよ。わかりやすいフレーズもありますが、実は、私の好きなものもエッセンスとして散りばめてくださっていて……面白いギミックが満載なので、歌詞カードを見ながらじっくり楽しんでいただきたいです。
――続いて、クリープハイプと相坂さんによるED曲「ひかり、ひかり」は、いかがですか?
相坂:私はもともとクリープハイプさんが大好きで、いつか絶対に尾崎世界観さんとお仕事させていただきたいと熱望していました。尾崎さんも「ネト充」の世界を大事にしてつくってくださったのですが、そんな中でも随所でクリープハイプ節が感じられる曲です。個人的には、2番の頭の綴られたところが大好きで、それから落ちサビの「どうしていつも言えないんだろう」というフレーズは「その言葉、待っていた!」となりました(笑)。クリープハイプさんの楽曲には、そういう素直になれない気持ちが共通して描かれているように思うんです。まさに、先ほど中島さんがおっしゃっていたことなのですが。
中島:好きなものを好きって言えない、ですね。私も聴かせていただいたときにとても共感しましたし、それ以上に”時代”を切り取る曲だなと思いました。2010年代の今だからこその、周りや自分自身との対峙の仕方を表現した音楽だな、と。
――相坂さんの歌声も胸に迫ります。
相坂:アニメでは、最初にワンコーラスだけレコーディングしたものを使っていただいています。そのときは、尾崎さんからいただいた「気だるく」というニュアンスのディレクションを自分の中に落とし込みきれなかったのではと悔しい思いをしたのですが、フルでやったときは納得のいくものができたので、違いを聴き比べてみても面白いのかなと思います。
中島:私、相坂さんの歌声の輪郭がはっきりしているところが好きなんです。ぼやけず、ストレートに切り込んでくる感じがあって。聴く人の心に真っ直ぐに刺さるんだけど屈折した感じがすごくマッチしていて、一枚の絵のように素晴らしい曲だと思いました。
相坂:わあ、ありがとうございます。私は、発言の一つをとってもドのつくくらいストレートこそ正義だと思っている人間なので、歌にもそれがあらわれているのならいいなと思います。たぶん……自分が尾崎さんの楽曲に惹かれるのも、正直な方だからなのかなって。この曲を通して、正直者同士がぶつかったときにどうなるのか感じていただけたら嬉しいです。
中島:たしかに、お互いに手加減なしにやりたいことをぶつけあっているバトル感があるよね(笑)。
相坂:「フリースタイルダンジョン」みたいな(笑)。
――MVでは、それぞれに表現された「光」も印象的です。
相坂:ネットゲームという、ひとつの救いに対してどうアプローチするかという作品なので、自然とそうなったのかなと思います。私は、絶対に寂しい感じを入れたいとお願いしました。白いけど暗い部屋で、パソコンが主人公のすべて。ドレス姿で抱えているプレゼントは、自分に届く”希望”です。
中島:相坂さんが可愛くて可愛くて「ウチにいてほしい!」と思いました。
相坂:いやいや! 私は、あの「?」を浮かべた中島さんを抱きしめたくなります。
中島:あの「?」、実は電球とカメラの絞りを使った手作りの装飾なんですよ。今回、デジタルに見えてアナログなところが多く、人のぬくもりも感じられるのではないかと思います。
相坂:ドキッとするカットもありますよね。
中島:脇は初めて出したかもしれませんね(笑)。あれは、ちょっと気にしなさすぎかなっていうくらいベッドでゴロゴロした結果です! 今までだったら「きちんとしなきゃ」「笑わなきゃ」って隠していたようなところをあえて出してみたら「大人っぽい」と言っていただける映像になりました。
――「ネト充」という作品については、どのような印象を持たれましたか?
相坂:私は、ネットゲーム中のキャラクターであるライラックを演じさせていただいています。共感される方も多いと思うので、そういう時代にあった作品に出演できることが嬉しいです。
中島:ネットゲームというだけで敬遠されてしまうこともあるかもしれませんが、この作品は、大人として頑張っている人たちの気持ちの矛先を全部否定しないところが素敵だなと思いました。森子はやるべきことをやった上で、のびのびできる空間に飛び込んで、人生を謳歌している。それって、本当は誰にとっても必要なことなのではないでしょうか。特に私は一時歌の仕事をお休みしていたこともあって、原作のコミックを読みながら、ものすごく感情移入してしまいました。ファンタジーとリアルが織り交ざって、その根底に深いものが流れていると思うので、普段はアニメを見ない方たちも含めてぜひ見て欲しいですね。
相坂:そうですね。今はネットの世界に充足感を得ている森子ですが、その先でリアルに希望はあるのかという点にも注目して見ていただければと思います。
――お二人の気になる男性キャラクターは?
中島:森子と縁の深い桜井優太さんです。ベタでしょうか? 基本、戦隊モノならレッドが好きなタイプです(笑)。
相坂:桜井さんはステキですもん! 私は、メガネ男子ということで藤本和臣くんかな。まだ就活中ですが将来に希望も込めてということで!
――ちなみに、お二人は今秋「何充」される計画でしょうか?
相坂:ミニ・ファミコン(ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ)が気になっています。ネットゲームもいいけど、たまには、あの頃にしかないノスタルジックな優しさにふれるのも良いのではないかな、と。なんとか手に入れて、この秋は懐かしい気持ちで暖まりたいですね。
中島:レトロつながりで……私は80年代から活躍されているアイドルさんがすごく好きなのですが、新しいベスト・アルバムなどがリリースされることもあり、渡辺満里奈さんや工藤静香さん”充”したいと思います!
――最後に、あらためて本作の主題歌を担う中で感じられていることを教えてください。
中島:作品を大切にした、昔から続く伝統的なアニソンとしてのかたちを守っている曲だと思います。この曲と出会って、あらためて、これからもアニメにぴったりと寄り添って歌っていけるような歌手でありたいと思いました。歌を続けてこられて良かったです。
相坂:個人的にも夢が叶い、本当に「ネト充」以外には考えられない奇跡の曲だと思っています。本編ではいろいろなことがありますが、この曲がエンディングに流れることで、その夜、あたたかい気持ちで眠っていただけたなら嬉しいです。
取材・文:キツカワトモ