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7月から放送開始となるTVアニメ「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」で主人公・ディアヴロ役を演じる若手声優・水中雅章さんの連載「俺より強い奴に会ってみる」がスタート。毎回、水中さんが尊敬する先輩方をゲストに迎え、アニメの面白さからお仕事の極意までを教わります。作中ではネトゲ界の最強プレイヤー・ディアヴロを演じる水中さん。この連載を通し、声優としてのレベルを上げることができるのか!? 第一回のゲストは、本作でエミール役を演じる置鮎龍太郎さんです!
水中:記念すべき第一回のご登場ありがとうございます! 尊敬する先輩方にお会いしていく企画です。早速ですが、置鮎さんはこれまでにターニングポイントになるような人との出会いはありましたか?
置鮎:事務所の先輩の塩沢兼人さんの存在が僕の中では大きいですね。ビデオアニメで一度だけご一緒したときに飲みに連れて行ってくれて。いっぱい説教を食らった思い出があります(笑)。塩沢さんのように初共演の若手にも関わらず声をかけてくれる方は、後にも先にもあまりいらっしゃらなかった。そんな方がいなくなってしまった喪失感は大きくて、今でも心の師匠のような存在ですね。もしもっと共演できていたら教えてもらえることがたくさんあったかもしれない。
水中:先輩方のお話を聞かせて頂きたくて、飲みの場にご一緒したい!とは思うのですが、なかなか勇気が出なかったりします。
置鮎:声優はお酒好きが多いから、気軽に声をかければ、みんな連れ回してくれると思いますよ。
水中:「連れ回される」んですね(笑)。
置鮎:そう。ボロボロになって次の仕事にどう影響するかは自己管理次第(笑)。
水中:ひええ、それはそれで楽しみです(笑)。自己管理といえば、普段の喉のケアはどうされてますか? 僕はいつもがむしゃらすぎて、次の現場が控えているような収録でも全力で叫んでしまうことが悩みなんです……。
置鮎:もし許されるならば、喉に負担がかからないようにセリフの順番を調整してもらう。でもそれが難しいときは頑張るしかない(笑)。あとは、自分の喉の状態を知っておくといい。どれくらい叫ぶとどうなるのか、何日くらいで回復するのか、必要なのは吸入器なのかのど飴なのか。安心できるお医者さんを先輩に聞いておくのもいいと思う。
水中:なるほど! そこまでいろいろ試したことがなかったです。
置鮎:自分が考えうる範囲でいろいろ試して見つけるものだから、たぶん正解ってないんだよね。失敗しないと身につかないこともあると思う。それはお芝居や周りの皆さんとのコミュニケーションも同じで。「あのしゃべり方はまずかったから次はこうしよう」と思いつくのは失敗してからでしょ? もちろん失敗しないほうがいいけど、失敗が大きいほど凹んで身にしみるから、成功するよりも学ぶことが多い。特に若手の場合、周りの人はまずその人の芝居で熱量を感じてみたいっていうのが本音だろうから。人を傷つけるような失敗じゃなければ、みんな叱りながらも許してくれますよ(笑)。
水中:ありがとうございます! メモしておきます!(と、本当にメモする)。がむしゃらは間違ってはいないんですね。僕の場合、緊張からくる「がむしゃら」だと思います。特にこの作品は初めてのことが多いので緊張しっぱなしで。でも全力で楽しめるようになりたいんです。
置鮎:イベントやニコ生も初めて?
水中:「マチ★アソビVol.20」(2018年5月5日)が初イベントだったんですけど、マイクを下ろしたまましゃべってしまって「マイクマイク!」と注意されました。
置鮎:そういうのも初々しくていいんじゃないですか(笑)。応援してもらいながら、お客さんにも鍛えていただいて。
水中:頑張ります! ちなみに、置鮎さんが「地獄先生ぬ〜べ〜」でアニメ初主演されたときはどうでしたか?
置鮎:あの作品は、藤田淑子さんや冨永み〜なさんのような先輩方が多い、とてもいい座組みでした。俺はもう一生懸命。それしかない(笑)。セリフが多いからしゃべるだけでも大変で、まとめてる余裕はなかった。でも結局、一生懸命やることでみんなが支えてくれるし、みんなで作品を大事にしようという気持ちが共有できていくから。
水中:僕も一生懸命やるのみです。置鮎さんとの掛け合いのシーンはずっと緊張していて、収録後はちょっと体が震えていました……!
置鮎:エミールはテンションが高いから、勢いがあるよね(笑)。女性の味方って言ってるけど、ただ承認欲求が強いんだろうなと。じゃないとあんなにしゃべらないでしょ!?
水中:「女性を守る!」って言いながら、ほとんど自分のことをしゃべってますよね(笑)。
置鮎:俺だってこんな仕事するくらいだから周りに認めてほしいけど、口には出さないもん(笑)。でもエミールの場合は承認欲求の高さこそが魅力だし、女性からは見向きもされないという一方通行感もいい(笑)。あんまり言いすぎると嫌われますからね、現実もそうだけど。
水中:反面教師で学ぶことも多いです(笑)。
置鮎:ディアヴロはフラットな感じが水中くんにちょっと近いよね。水中くんに最初に会ったときにすごく優しそうな子だな、キャラを演じる上で真面目な方なんだろうなという印象を受けていたので、だからこういう演技なんだ、って現場にきてから腑に落ちました。このストレートな感じがいいなと。
水中:ありがたいお言葉です……! 模索しながら演じさせていただいています。ところで置鮎さんは仕事を始めた頃、どんな声優を目指していたんですか?
置鮎:まずはお金を稼ぎたかった。それがお仕事をする上での精神的な支えでしたね。目標は、ちゃんとお金を稼いで、バイトを辞めて、この仕事で食べていくこと。ハタチでこの仕事を始めてから、食べていけるようになったのは23〜24歳の頃だったかな、たしか。
水中:この仕事で食べていくことは僕も目標としています。お仕事の中でも特に好きな分野はありますか?
置鮎:やっぱりアニメーションは好きですよ。年齢を重ねれば声が変わるので、昔やっていたような役ができなくなるっていうのはありますけど。でも、20年以上前に演じたような役も財産として引き続き演じているから衰えちゃいけない。それが難しいところ。
水中:そうなんですね。やはり、声って変わるものなんでしょうか。
置鮎:初期に演じた役であればあるほど声は変わっているはず。演じる気持ちは変わってないけどね。大事なのは、いかに印象を変えないように演じるか。水中くんだって、ディアヴロ役を20年後に演じることがあるかもしれない。
水中:20年後。僕はどうなってるんだろう(笑)。
置鮎:想像もできないでしょ? 僕もデビューした頃、そんなこと考えもしなかった。最近「ママレード・ボーイ」が実写化されたことがきっかけで、アニメを収録した頃のことを思い出したんだけど、あの声はもう出ないもんな〜。この20数年の間に数限りない役を演じて、無茶もして、葛藤しながら演じ方も変えてきたわけだから。長く演じる役を維持しながら、次の作品のことも考えないといけない。でもホント、「ママレード・ボーイ」のことを20年以上後に考えるようになるとは思わなかった(笑)。
水中:感慨深いお話です。それだけ長く活躍されているからこそ、これから叶えてみたい目標はありますか?
置鮎:目標ということではないけど、近年のラノベのような作品をアラフィフの設定でやったら面白いと思うんだよね。こじらせすぎた50代の話(笑)。
水中:それ、いいですね! 見たことないので見てみたいです!
置鮎:なさそうでありそうでしょ(笑)。自分はリアルな年齢感とちょっとズレていると思っていて、エミールみたいな若い役がある中で、実年齢にあった役もやっていきたい。でも難しいんだろうな。たとえば、水中くんとリアルに話しているトーンでは年の差が伝わりづらいと思うから。年上感を出すにはちょっとオーバーなくらいに威厳を出さないと。
水中:僕もいろんな技術を身につけて、幅広い年齢層を演じられるようになりたいです。
置鮎:それには体力も大事。僕も体力トレーニングをしたいんだけどね。エミールみたいな若くてテンションの高い役を演じても「疲れた〜」ってならないように(笑)。
水中:今は何かされてるんですか?
置鮎:ホットヨガをやっていた時期があってもう一度通いたい気持ちもあるし、興味があるのは、照明を落とした室内で自転車を漕ぐっていうトレーニング。女性声優さんがハマっているって聞いたので(笑)。ボルダリングも興味ありますよ。
水中:僕も日常的に運動をするよう心掛けます!
最後に、これからの水中雅章にご指導ご鞭撻のお言葉をいただけませんでしょうか。よろしくお願いします!
置鮎:もう死ぬほど失敗すればいいと思います(笑)。それで身につくことが絶対にあるから。そこで「それは違う」「これも違う」って言われたことの中から、自分の正解を見つけるのが一番。作品や人との巡り合いが財産になると思いますので、ぜひ大事にしてください!
水中:はい!頑張ります!置鮎さん、ありがとうございました!
【取材・文:吉田有希】