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アニメ『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』で主演する若手声優・水中雅章さんが、尊敬する先輩方をゲストにお呼びし、経験に裏付けられた仕事術から声優業界の裏側までを語っていただく連載「俺より強い奴に会ってみる」。ネトゲ界の最強プレイヤー・ディアヴロのように、この連載を通して声優としてのレベルを上げることができるのか!? 第四回のゲストは、事務所の先輩でもある白熊寛嗣さんです!
水中:以前、吹き替えの現場でご一緒させていただきましたが、すごい本数の吹き替えをされていますよね。海外ドラマや映画で演じる際、何か気を付けている事や心掛けている事はありますか?
白熊:僕個人の考え方だけど、吹き替えしてるなっていう声より、その人自身が喋っているような声のほうが耳にスッと入ってくると思うんだよね。それこそ僕が小さい時は、ジャッキー・チェン(CV:石丸博也)は本人が日本語を喋っていると思ってたから(笑)。
水中:僕も、声優を目指すきっかけになったのが『フルハウス』なんですけど、その時に好きだったダニー(CV:大塚芳忠)は向こうの俳優さんがそのまま日本語を喋っていると思い込んでました。
白熊:でしょ? 『フルハウス』はいい作品だったよね。大人たちは普段ふざけているのに、子ども相手だと急にいいこと言い出したりして(笑)。
水中:ダニーの「掃除大好き」みたいな潔癖症の設定がたまらなく好きで(笑)。白熊さんが強く影響された作品はありますか?
白熊:僕は『EVE burst error』っていうゲーム。声優さんの特典映像が付いていて、再生した時に「キャラクターじゃなくて人が喋っているんだ。それはそうだよね」とハッと気づいて、俺もこれをやりたい、と思った。15歳か16歳の頃かな。ゲームが好きでこの仕事を始めたから、ゲームに出られるようになったのが声優になって良かったことかな。
水中:逆に、声優になって、想像していたよりも大変だったことは?
白熊:これもやっぱりゲームなんだけど、『人喰いの大鷲トリコ』で語り手をやった時に“トリコ語”っていう日本語じゃない言葉を喋りまして。これがけっこう分厚い台本なんだけど、全部カタカナ(笑)。しかもまあまあスムーズに読まなきゃいけなくて、台本読んでいる時に自律神経が失調する音がパキパキ聴こえた(笑)。
水中:え〜っ! 区切りのないカタカナが延々と続いていて、アクセントもわからないってことですよね。何が正解なのか…。
白熊:そう。ディレクションをしている人たちが「OK」と言えば、それが正解。だから現場に行くまで答えがわからない。“これ、ホントに全部録るの?”って思ったけど、期待されていた作品だから俺が失敗するわけにはいかないし。“きっとこれができる声優は俺だけだ”と考え方を変えて、なんとかクリアしたよ。
水中:間違いなく白熊さんにしかできないことだと思います。そういう難題をクリアできるだけの引き出しがあるということですよね。比べるのはおこがましいんですが、自分はまだ、たった1つのセリフでも正解の引き出しが出てこないんですよ。頭が硬いだけかもしれませんけど。
白熊:それはやっぱり、経験の積み重ねが物を言うんじゃないかなぁ。引き出しがないなら、リアクションを自分の中で倍増させて表現するとかね。たとえば、足を銃で撃たれるシーンで、テーブルの角とかに足をガーンと打ってみて、その10倍くらいを想像してみるとか。
水中:なるほど! 感情面でも同じように?
白熊:まあ、そうだね。落ち込んでいる時に “落ち込むってこういう感覚なんだ…”って客観視しているのは職業病かもしれないけど。僕の場合はガキの頃からそうで、お袋にすっごいキレられたとき、“ここで泣くんじゃなくて、笑ったらどうなるんだろう?”って、実際に笑ってみたことがあるよ。
水中:そんなに小さな頃から!? レベルが高い(笑)。
白熊:まあでも、どんな現場でも楽しくやることが一番だと思う。僕は、ピリピリした中で仕事するのがすごくイヤで。休憩中にちょっとでも間が空くと、くだらないことを喋ったりする。特にレギュラーの作品だと一緒にいる時間が長いし、“やっぱりこのメンバーで良かったね”って言い合えるほうが絶対にいいと思うから。たまにあるんだよ。主役の人があんまり喋らなくて、周りがどうしたらいいのかわからなくなるような現場が。
水中:(下を向いたまま)…ダメですよね、そんな主役はダメですよね…。
白熊:あれ? まさか?
水中:…いや、『異世界』の現場でみんなに話しかけてるつもりなんですけどね、その想いがあまり届いていないみたいで。心がけてはいるんですけど、気がつくと下を向いて台本を読んでいて…。
白熊:出た出た! 必死になって練習しちゃうパターン。そこはやっぱり座組みの代表として明るくしてほしいね。
水中:先輩から直接言われちゃうと何とも…。何を話せばいいんだろうって…会話が続かないんですよね。周りは女性ばかりだから、スイーツの話とか? いや、スイーツっていうキャラじゃないし!
白熊:ハハハ(笑)。ヘンに飾り立てるくらいなら、「あのさあ、現場盛り上げたいと思ってるんだけど、全然やり方わからなくて…」って正直に振っちゃったほうがまだいいよ。
水中:おお! …白熊さん、じつは明日、収録日なんです。
白熊:そうなの? じゃあ、その作戦をぶっ込んでいこうか。「いきなり何?」って言われるかもしれないけど(笑)。ちなみに、会話をキャッチボールにたとえると、何回くらいキャッチボールくらいしてるの?
水中:5キャッチボールくらい。
白熊:みじかっ! それ、会話じゃなくて「すれ違い」っていうんだよ(笑)。
水中:決して仲が悪いわけじゃなくてっ!(←弁解) 最初に比べたらいい感じの現場になって、その温まった空気感が映像にも出てるよってスタッフさんにも言われたので、アニメを見てくださっているみなさん、後半にかけて注目を…。白熊さん、こんな未熟な僕ではありますが、声優として今やっておくべきことをアドバイスしてもらえませんでしょうか!
白熊:ゲームをもっとやったほうがいいよ。プレステ4を早く買ってさ。FPSって言われる撃ち合いでもいいし、もちろんRPGでもいいから。ゲームって、プレイヤーになり切って感受性や感情が揺さぶられるから、役者にはもってこいだよ。
水中:そういえば、最近ゲームをやってませんでした。声優になりたての頃はRPGでキャラに感情移入してセリフを読み上げていたのに。初心を取り戻すためにも、RPGでレベル上げてきます!(笑) 演技のレベル上げも頑張ります!
【異世界魔王の今後の見どころ】
水中:アリシアやガルフォードといった新たなキャラクターも登場し、これから物語も大きく動いて行くので目が離せないです! シェラやレムも相変わらず可愛いですし(女の子みんな可愛い)ちょっとエッチなシーンやギャグは勿論のこと、大迫力の戦闘シーンも今後ありますので、僕自身どうなっているのか非常に楽しみです! 是非、皆さまにご覧いただけたら嬉しいです! よろしくお願いいたします!
【取材・文:吉田有希】