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【第13回「声優アワード」受賞者インタビュー】新人男優賞 落合福嗣さん

2019年3月9日、2018年度に最も活躍した声優を称える第13回「声優アワード」の受賞者が発表されました。本稿では、新人男優賞を受賞した落合福嗣さんへのオフィシャルインタビューをお届けします。

――受賞の喜びの声と、声優を目指したきっかけをお聞かせください。

落合 まさか自分がいただけるとは……と、びっくりしました。新人賞は新人に与えられるものだから、取れるチャンスが1回しかないんです。すばらしい賞をいただけたのも、応援してくださっている皆さんのおかげです。ありがとうございます!  子どもの頃から映画が大好きで、声優の仕事を意識したのは幼稚園の時の「ターミネーター」の吹き替えでした。外国人なのに日本語がペラペラだなあと思っていたら、父が声優という仕事を教えてくれました。憧れは野沢那智さんで、特に「ダイハード」のジョン・マクレーン刑事! 金曜ロードショー版の吹き替えは野沢さんだったんです。いつか声優になって共演したいと思っていたのですが、叶いませんでした。

――初めてのレギュラーでの思い出をお聞かせ下さい。

落合 デビューから幾つか役を演じましたが、「灰と幻想のグリムガル」のモグゾー役では、始めて1クールを通してひとりのキャラクターに全神経を注ぐことができました。この作品では、アニメらしさよりも、気持ちのうつろいに重きを置く自然な演技をしてくださいというディレクションで、とびきりいい経験ができました。

――初主役となった「グラゼニ」凡田夏之介役についてお聞かせ下さい。

落合 夏之介は運命的な出会いでした。「グラウンドには銭が埋まっている」という語りから始まるプロ野球選手の生き様を描いた原作も大好きで、顔も僕に似ているなって(笑)。夏之介役はオーディションの時に、野球選手にとっての「年俸1800万」というお金がリアルに哀愁を持って言えていたということで起用していただいたと聞きました。ハタから聞いたら1800万円は高額に感じる。けれども、活躍できる年齢が限られる野球選手にとっては、もうちょっとなんとかしないと、という金額。それを実感できるのは、元野球選手の父の背中を見て育ったという僕のバックボーンとも関係があると思います。

――アフレコ以外の仕事ではどんな経験をされましたか。

落合 テレビドラマ「下町ロケット」の田辺海斗役は、実写の世界がよくわからないままポンと入ってとまどいましたが、いい経験になりました。実写ではセリフを全部覚えなければいけないし、とにかくリテイクが出た時が大変なんです。リテイクシーンの後ろのお芝居までその場の全員が一気に動いてやり直すので、物理的にすごく大がかりになります。それが楽しいですね。その経験はアフレコの仕事にも活かされていて、自分がマイクでしゃべっていない時のキャラクターの気持ちの繋ぎ方が、理屈だけでなく感覚的につかめた気がします。

――これまで声優であるご自身を作ってきたものは何だと思いますか。

落合 僕の場合は、毎日コツコツ積み重ねることだったと思います。小学2年生の時に、映画の好きなシーンのセリフをノートに書き出して、音を消して映像を流しながら真似てみるという遊びを始めたんですが、それからも、字幕版と吹き替え版を用意して、海外の役者さんの原音を聴きながら、自分ならこう表現するというふうに演じてみて、ボイスレコーダーで録音した自分の演技を、"正解"であるところの吹き替え版と聞き比べて、何が違うのかを自己分析する。そんな練習方法を、大人になった今も続けています。1日1本映画を必ず見る。お風呂に入ったら「外郎(ういろう)売り」を唱えてから上がる。毎日欠かさず、今でも続けていることで自信になったと思います。

――逆に、声優の仕事でとまどった経験はありますか?

落合 「HUGっと!プリキュア」のチャラリートは"プリキュアの敵"ということで、僕がよく演じるガタイがいい系のキャラかなと想像してオーディションに行ったら、すごいイケメンで「マジかー!」とびっくりしました(笑)。でも、どうしようとも思いました。"チャラさ"というのは僕の中にない。僕はそれまで、役というのは"自分が持っている部分を出す"ものでないと成立しないと思っていました。そんな時、ある先輩に相談する機会があって「ゼロから生み出さなくても、周囲の人を観察して、チャラいと思った部分を取り込んで消化していけば、自分というフィルターを通したお前だけのキャラクターになる」とアドバイスをいただけました。僕が見てきたチャラリートは意外と真面目で、本心を隠しておちゃらけているんだろうなというマインドを入れつつ演じました。娘が5歳と2歳で、ちょうどプリキュアが好きな年齢で本当に良かったです。

――声優という仕事の魅力は?

落合 見た目や性別などを超越したものになれるのが声優の醍醐味だと思います。僕の目標は3つあって、アニメでは、人間じゃない役にトライする。ナレーションでは、動物番組やプロ野球の珍プレー好プレーのボイスオーバーをやってみたい。そして映画では「ターミネーター」のターミネーターを演じたいです。父に声優という職業を教えてもらった子どもの頃から「ターミネーターになりたいな」という出発点は変わっていないんです。

●おちあい・ふくし/8月20日生まれ。東京都出身。青二プロダクション所属。主な出演作に「灰と幻想のグリムガル」(モグゾー)、「グラゼニ」(凡田夏之介)、「バジリスク ~桜花忍法帖~」(甲羅式部)など

撮影=田上富實子 取材・文=渡辺由美子

■第13回「声優アワード」受賞者、受賞作品(敬称略)
●主演男優賞:内田雄馬
●主演女優賞:三瓶由布子
●助演男優賞:古谷徹、三宅健太
●助演女優賞:芹澤優、東山奈央
●新人男優賞:天﨑滉平、石井マーク、落合福嗣、仲村宗悟
●新人女優賞:石見舞菜香、楠木ともり、林鼓子、本泉莉奈、本渡楓
●歌唱賞:ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-
●パーソナリティ賞:諏訪部順一
●功労賞:緒方賢一、京田尚子
●シナジー賞:ポプテピピック
●富山敬賞:山口勝平
●高橋和枝賞:かないみか
●キッズファミリー賞:TARAKO
●特別賞:ちびまる子ちゃん
●外国映画・ドラマ賞:森川智之、甲斐田裕子
●ゲーム賞:東山奈央
●インフルエンサー賞:南條愛乃
●MVS(Most Valuable Seiyu):神谷浩史
※今回は、特別功労賞に代えて、本年度ご逝去された声優を顕彰しました。


リンク:「声優アワード」公式サイト
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