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劇場アニメ3部作の最終章「亜人 -衝戟-」が、いよいよ9月23日(金)から3週間完全限定で公開されます。
息もつかせぬ展開で観客を釘付けにした第2部「衝突」から約5か月、ついに物語が完結。圭と佐藤、亜人と人間、そして亜人と亜人の戦いの行く末には、どのような結末が待ち構えているのでしょうか。
今回は、作中で重要な役割を果たす圭とのパートナー・中野攻を演じる福山潤さんに、「亜人」の魅力、そして攻への想いを聞きました。
――ついに最終章「衝戟」が公開となりますが、福山さんにとって亜人という作品はどのような作品でしたか。
最初は、イメージを決めきれないまま演じていた部分がありました。現代社会の姿をどのように3DCGで描くのか、僕が想像できなかったんですね。「亜人」は、プレスコ(音声を先行して収録し、それに合わせて作画する手法)で収録しているため、どういった形でアウトプットされるかはわかりませんでしたから。ただ、自分たちのタイミングで芝居できるので、まずはできることからしっかりやっていこうと。
そして収録が始まった後、しばらくして映像を初めて見たのですが、その仕上がりに――言葉は悪いんですが――「なめてたな」と感じました。第1章を見た時に、とにかく「これはすごいことになった」と思いましたし、だからこそ今回のCGの風合いなのかと合点がいきました。最初のインパクトが、ものすごく大きかったですね。
さらに、僕の演じた攻の動きが、ほぼイメージ通りだったんです。演じる際に、タイミングの切り替えや動きのアクセントなど、わかりやすく演じたつもりではありましたが、動かす人のタイミングは考えないで演じたので、実際にどのように表現されるんだろうと思っていました。それがイメージ通りに作っていただけた。僕らは、アフレコで映像の意図をくみ取っていく作業が多いのですが、くみ取ってもらうのはこんなにも面白いことなのかと感じましたし、何より、スタッフの演者の意図を映像化していくアウトプットの力をまざまざと見せつけられました。
――本作はプレスコで収録されていますが、収録にあたってどのような心構えで挑みましたか。
僕は、収録の5本目ぐらいまではまったく関わっていなかったので、他の皆さんが探りながら作り上げた空気感の場所にいきなり入ったんです。「なじめるかなぁ」という不安はあったので、とにかく気合いだけは入れました。夏場だったので、自転車をかっとばして汗をかきながらスタジオに入り、「おはようございます!」って。「取りあえず声を出していこう」って。あはははは(笑)。
攻は、コミュニケーション能力はあるけれど、空気を読めない・読まない、物事を考えない、すぐ反射で返すといった、いわゆる漫画主人公の記号的要素をたくさん持ったキャラ。そのため、逆にみんなのテンポで合わせずに思ったままに演じようと思いました。怒られたら怒られたでいいやくらいの勢いで演じたら、そのままOKをいただけて「え、いいの?」って感じでした。
収録も進んでいくうちに、原作を読んで感じた圭と攻の関係以上に会話が楽しく感じる時がありました。投げかけた言葉に対して、宮野さんもキャラクターが逸脱しない範囲で「ここまではいいかな」と、探りながら演じてくれた部分が結構あったんです。そういう、プレスコならではのセッションのような感覚は、収録中に何度もありましたね。
――収録で印象的なエピソードがありましたら教えてください。
本当にいろいろあるのですが、やっぱり(佐藤役の大塚)芳忠さんですね(笑)。現場では、佐藤のことを「地獄の佐藤」って表現してたんです。ちょっと佐藤が怖い感じを垣間見せる場面で、音響監督の岩浪美和さんが「芳忠さん、ここは地獄の佐藤で」と指示をして、芳忠さんも「……はい」って(笑)。佐藤と戦っている時も、宮野さんと2人で「どうやったら佐藤に勝てる?」「……勝てねえよなぁ」って話をしていたら、横で芳忠さんが「ははは、負けないよ~」って(笑)。芳忠さんがそうおっしゃってくださったのがとても楽しかったし、僕らの無駄話を聞いていてくださって、それを受けとめてくれる。その姿に、佐藤と芳忠さんが重なって見えた……とにかく満喫できた良い収録でしたね。
――演じられている中野攻は、どのようなキャラクターだと思いますか? まだ、どのように演じたいと考えましたか。
圭と攻の対比でうまい表現だと思った言葉で「圭はIQ(知能指数)・EQ(情動の知能指数)が共に高く、攻はEQが高いけれどIQが低い」というのがありまして、まさにその通りですね。基本的に (攻は)反射で動く人間なので、ひねくれていないんですよね。圭を呼ぶ「永井」って言葉ひとつ発する時も、喜怒哀楽がそのまま出てしまう。名前を呼ぶだけで感情がこぼれる単純な人でありたいと、最終目標としてありました。
――いよいよ公開ですが、ファンの皆さんへメッセージをお願いします!
第1部、第2部を観てくださった方へは僕が何かを語るより、すでに受け取ってくれた物、感じてくれた物があると思いますし、それがあるならば絶対最終章も観たいと思ってくれる、楽しんでくれると思っています。そして、まだご覧いただけてない人も最終章から観て大丈夫だと声を大にして言いたいですね。それぐらい映像の持っている力が強いですし、物語も登場人物の関係と状況を見れば、「前の話はこうだったんじゃないか?」とわかるぐらいの作りになっています。
「衝戟」は、映像としての面白さ・娯楽がふんだんに盛り込まれているので、本作からでも「亜人」に触れていただきたいです。そして、後追いで第1部、第2部を観て、「あー、なるほど!」と楽しんでもらえたら嬉しいですね。【取材・文=小川陽平】