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声優デビュー8周年を迎えた川島零士さんに、これまで演じてきた役について振り返って話してもらったインタビュー。前編では、デビュー当初に出演した舞台で出会った「美しい芝居」が理想だと語ってくれた川島さん。後編では、「マッシュル-MASHLE-」などのお話や役へのアプローチ方法、さらにプライベートの過ごし方について語っていただきました。
プロフィール
●かわしま・れいじ:11月30日生まれ/愛知県出身/青二プロダクション所属/主な出演作品は、「不滅のあなたへ」(フシ)、「夜桜さんちの大作戦」(朝野太陽)、「マッシュル-MASHLE-」(フィン・エイムズ)、「英雄教室」(ブレイド)ほか。
――声優のお仕事の難しさやおもしろさを、どう感じていますか?
川島 僕は役作りをするときに、作品全体の感情の流れを分析しています。物語中盤で大きな事件があるから、このシーンで感情が盛り上がってくる、その事件が解決に向かうとだんだん感情も落ち着いてきて、その後は後味の悪さがあればさらに感情がマイナスになる……というふうに、作品を通して観客の気持ちがどんなふうに動くのかを考えることがあります。例えば、自分が演じる役が、物語全体の感情がマイナスに向かう直前だったとします。するとその役は、みんなのマイナスな感情を引き出す役割があると捉えられるので、演技の方向を定めることができる。そんなふうに学生時代に舞台で学んだやりやすい方法で、役のアプローチをしていました。
川島 一方で「マッシュル-MASHLE-」のフィンは、ストレートで大きな感情を大事に、そしてキャッチーな部分も意識して演じています。「夜桜さん家の大作戦」もそうですが、この時期から、ツッコミキャラを演じるのが増えて。僕自身の性格はツッコまれるほうなのですが、逆に声質はツッコミ気質なんだと、声優としての武器や強み、この業界での自分の 〝席〟が、じんわり見えてきたんです。僕自身、自分の声がイケボだとは思っていないし、イケボじゃない僕ができることは何だろうと探していた先に今の僕がある。同じ作品の中でも、僕がいただいた役は人間臭いキャラクターが多い理由は、そこかなと思いますね。
――2024年は「夜桜さん家の大作戦」をはじめ主演作が多いですが、演じている役の幅がとても広いと思います。同時期に、方向性がまったく違う役を演じたことで、自分にプラスになったことは何ですか?
川島 ここ1年くらいの出演作を振り返ると、僕が演じてきた役はそれぞれタイプが全然違いますね。「カードファイト!! ヴァンガード Divinez」の呼続スオウは、感情が乏しくて何に対しても興味を示さないという、これまで僕が出したことがない音域やテンションをもつキャラクターです。ですから、プラスのお芝居で遊びたくなるところを押し殺した、抑えた演技を心がけました。7月5日から放送中の「この世界は不完全すぎる」のアマノは、小さな獣のような姿をした〝フェザー〟という種族で、独特の怒り方をするんです。自分でも聞いたことがない音を出しているので、視聴者の方へのサプライズをご用意できたかなと思っています。きっと、川島零士の印象がちょっと変わると思います(笑)。
川島 以前からもやっていましたが、最近は〝キャラメイク〟を重要視した役作りをしていて、キャラクターの設定画を深読みするというアプローチを実践しています。きっかけは、ここ2年間、毎日イラストを描いてSNSに投稿したこと。自分で絵を描いてみると、髪型や目の形、目線の向きや体の姿勢などで、キャラクター性を出していることに気づいて。描き手がこのキャラクターに何を吹き込みたかったかという思いを、イラストから受け取れるなと思って。作品全体の役のポジショニングに、イラスト分析をプラスすることで、より細かく深く作者の意図を汲み取れる。それが最近、ちょっとだけできるようになってきたかな。今は、自分の演技を録音して聴き直して、毒っ気が薄いからもっと出そうとか、もうちょっと後ろ向きな感じを出そうとか、細かく調整する過程を楽しんでいます。
――これから挑戦したいことは何ですか?
川島 僕は新しいことをいろいろとやっていきたいタイプなので、昔よりもやれることが増えてきた分、自分もみんなも楽しんでやれるものをどんどん模索して、形にしていけたらと思っています。最近は一眼レフカメラに夢中ですね。好きな洋服をキレイに撮りたいのと、うちのネコの写真集も出したいなと思っていて。カメラを持っていると、世界を観る視点が変わる。そしてAIで本物にしか見えない画像や映像がつくれるようになった時代で、それでも僕が撮りたいと思うもの、僕が見ている世界のおもしろさを写真に写すにはどうすればいいのか、ということを探しています。
川島 僕は今、ゴールのない螺旋階段をずっと昇っていると思っていて。階段を支える軸はしっかりとあって、その軸の周りをぐるぐる巡りながら昇っていく。一段進むごとに見える景色が変わりますが、一周すると同じ景色が出てくる。でも、前よりも一段高い位置にいるから、前に見た景色とは違うものが見える……というふうに捉えていて。だから一生懸命バカなことをしたり、お芝居をしたり、プライベートでいろんなことに挑戦したりして、「川島零士」のレベル上げをしている最中です!
――最後に、応援してくださっているファンの方や読者へのメッセージをお願いします。
川島 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。これからも写真や記事などを通して、少しずつ変化していく僕を追っていただけるとうれしいです。また時間が経ったら、ここに戻ってこれるとうれしいなと思っています。今後も応援、よろしくお願いします。
川島零士さんに一問一答
Q1 好きな色は?
川島 薄浅葱色。イラストを描いているときに、原色の強い色よりも、ちょっと霞んでいる色の方が居心地がよくて、僕の性に合っているなと感じたからです。
Q2 出身地の自慢は?
川島 中間地点なので、東京にも大阪にも出やすいところ。海も山も近くて便利です。
Q3 カラオケの十八番は?
川島 映画「るろうに剣心」の主題歌で、ONE OK ROCKさんのThe Beginingです。
Q4 自分の性格をひとことで表現すると?
川島 愉快。
Q5 好きな物、苦手な物は?
川島 好きな食べ物はカヌレ。好きな飲み物は、自分で割って飲む辛口のジンジャーエール。苦手な食べ物はパクチーと、味が濃い食べ物です。
Q6 好きな季節は?
川島 春先。自分的には気温24度が最適です。
Q7 よく使うLINEスタンプは?
川島 「貼りまわれ!こいぬ」にハマっています。
Q8 自分にとってのアイドルは?
川島 飼っている猫です。ミックスを2匹なんですが、僕が出かけるのを阻止したり、帰ってくるとお迎えにきてめちゃくちゃ甘えてくるので、愛されているな〜と実感します。
Q9 1日の中で好きな時間帯は?
川島 昼間です。それこそ春先はまだ過ごしやすいし、気持ちいい青空を見上げながら、カメラのことを考えながら歩くのが好きです。
Q10 座右の銘は?
川島 「最も大切なことは、最も大切なことを最も大切にすること」です。ミニマリストへの憧れがあって、いろんな本を読んだなかで印象に残った言葉です。
【撮影:福岡諒祠/ヘアメイク:山脇志織/取材・文:ナカムラミナコ】