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「ホテル・インヒューマンズ」星生朗役・小林裕介×灰咲沙羅役・白浜灯奈乃 対談――「とっておきのおもてなし」

最高のホテルの条件とは何か? 多くの人が、極上の食事や至高の癒やし、魅惑の娯楽を思い浮かべるだろう。しかし「ホテル・イン・ヒューマンズ」のお客様は「インヒューマン(人あらざる者)」=殺し屋様だ。故に「ホテル・イン・ヒューマンズ」では、殺し屋様のいかなる要望にも「NO」と告げず、最高のサービスでおもてなしをする。それが「ホテル・イン・ヒューマンズ」の矜持なのだ。
フロント兼コンシェルジュデスクでゲストを迎えるのは、ごく一般的な感覚でゲストに寄り添う新人の星生朗と、強大な戦闘能力をもつベテランの灰咲沙羅。2人のもとを訪れる殺し屋の願いとは? 死の境界線で繰り広げられる、戦いとドラマが始まる。
星生朗役の小林裕介さんと灰咲沙羅役の白浜灯奈乃さんにインタビューを実施。本作への思いをたっぷりと語ってもらった。



──作品の印象や、おもしろいと感じた要素は何でしたか?
白浜 まず、お話がすごいと思いました。ややドライな感じの雰囲気と絵もステキで、作者のキャラクターに対する愛情が伝わってきましたし、読み終わった後に、心の奥にじわっと温かいものが残るような感じがありました。
小林 僕は「殺し屋専用のホテル」という切り口が、すごくおもしろいなと思いました。そして原作漫画を読んでいくうちに、お客様である殺し屋様が次々と変わっていって、「ホテル」という場所ならではの一期一会を描いているということが、印象深かったです。生朗と沙羅はメインキャラクターではありますが、本当の意味で、主人公はお客様であるという描き方をしているのが、読んでいて飽きない要因なんだろうなと感じました。

──原作を読んで、印象に残っているエピソードはありますか?
小林 シーンというよりも、作品全体に漂うドライな雰囲気ですね。やっぱりコンシェルジュは、あくまでもホテルマンとしての立ち位置ですし、殺し屋も己のスタンスを保っていて、両者ともあまりなれ合いすぎず、大人同士の距離感で会話をして、ストーリーが進んでいるという、全体のテンポ感というか。そこが、自分には刺さったところですね。ひとコマの絵だけで、生朗がいかに頑張って物事を準備したのかがわかったり、沙羅の表情ひとつで変化が感じられたりと、ちょっとしたところにしっかりと意味を乗せているところが好きですね。
白浜 私は、カラーイラストの色彩がすごくキレイで、ぐっと心をもっていかれました。漫画の展開もすごくて、ページをめくったときに衝撃を受けるシーンがたくさんあって、表現の仕方が魅力的だなと思いました。



──それぞれの役の印象と、どのように演じようと考えたか。また、現場で受けたアドバイスを教えてください。
小林 この世界で、生朗は異質な存在なんです。ドライな人間関係がベースの世界で、彼だけはすごくウェットで。だからこそ、物語を動かすきっかけにもなっているのですが、話が進むなかで「なぜ、このホテルに生朗がいるんだろう」という謎が深まっていくところがおもしろくて。生朗のことをもっと知りたいと興味をそそられたという意味で、特殊なキャラクターでした。演じるときも、ホテルマンらしからぬほどお客様との距離が近くて、お客様の緊張をほぐすような存在としての芝居をしていこうと考えていました。ですが第1話では、意外にも「いかにもホテルマンという感じで演じてほしい」というオーダーがあって。実はそれが、第2話とのコントラストを演出したいという意図があったことが後でわかるのですが、その意図をあえて監督が伏せていて。コンシェルジュとしてどこまで踏み込むのか、星生朗としてはどういくのかというのを自分で探りつつ、各話ごとに監督の判断を仰いで収録しています。
白浜 沙羅は設定では冷徹な性格とありますが、私はただ冷たいだけの人ではないなと感じました。生朗に対してやや当たりが強めなのは、先輩として、お客様にしてはいけないふるまいをする生朗をたしなめる気持ちが強いのかなと思いましたね。演じていくなかで沙羅の特殊性というか、不思議な女の子だなと感じるようになって、監督と話をするなかで、私自身の沙羅に対する認識が変わっていく局面が何度もありました。沙羅という人物の理解を深めるために、原作では描かれていない彼女の生い立ちについて監督と考えたんです。そして、沙羅は特殊な世界で生活してきたために、「普通の世界」でのふるまいに疎いから、本当に冷徹なわけではなく、他人からそう見えてしまっているだけなんだろうという考えにたどり着きました。劇中で沙羅がキョトンとしているシーンがよく出てきますが、そこが彼女のかわいさなんだなと思って演じています。



──小林さんが感じる、沙羅の魅力を教えてください。
小林 ことばは辛辣ですし、「門番」の二つ名で呼ばれるほど強いので、とっつきづらい人なのかと思いきや、しっかりとことばをかわしてくれる真摯な姿勢と、相手を否定しないという包容力があるなと気づきました。さきほど白浜さんが言ったとおり、普通の世界を知らないだけで、お客様との出会いや生朗との仕事のなかで、人間っぽくなっていくのかなと感じています。まさに「インヒューマンズ」というタイトルの、象徴的な存在かもしれません。

──白浜さんから見た、生朗の魅力は何ですか?
白浜 原作を読んだときは、子供っぽい表情をする、やんちゃな雰囲気があると思っていました。それが小林さんの声が乗ると、字面で読んだときにはわからなかった、彼自身の過去の重さや、その経験から出てくる大人らしさが加わっていて、すごく安心感を感じる存在になっているのが、魅力的だと思います。



──作品の見どころは?
小林 「殺し屋」と聞くと、冷酷で残忍で、人の心なんてないというイメージがあると思いますが、それだけではない人間的な面というものを見せてくれるのが、この作品だと思います。だから同情するのか? でも殺し屋として生きている以上、しかたのない結末だと思うのか?と、解釈に迷う作品だと思うんです。その答えを視聴者にゆだねるのは、制作側の意図しない解釈をされることを許容しているということなので、あえて今映像化することの意味が、作品に込められていると感じました。ですから、自分の心で感じたことをかみ締めながら、この作品を見てほしいかなと思います。
白浜 私が推すのは、やっぱり色彩です。沙羅の瞳の色がすごくキレイですし、その沙羅がホテルの前でお客様を出迎えるシーンの映像は、本当にステキなので、楽しんでいただきたいです。



【取材・文:ナカムラミナコ/撮影:小川遼】

■TVアニメ「ホテル・インヒューマンズ」
放送:テレ東系列…毎週日曜23:45~
※その他の各配信サイトでも配信中

スタッフ:原作…田島青(小学館「サンデーうぇぶり」連載中)/監督…アミノテツロ/シリーズ構成…米村正二/キャラクターデザイン…藤崎真吾/プロップデザイン…きむらひでふみ/美術監督…海野よしみ/美術設定…長澤順子/色彩設計…村口冬仁/撮影監督…貞松寿幸/編集…今井大介/音響監督…山田陽/音楽…小春(チャラン・ポ・ランタン)/音楽制作…テレビ東京ミュージック/アニメーション制作…ブリッジ

キャスト:星生朗…小林裕介/灰咲沙羅…白浜灯奈乃

リンク:TVアニメ「ホテル・インヒューマンズ」公式サイト
    公式X(Twitter)・@HIH_PR

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