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ニュータイプ2026年9月号(2026年8月7日発売)のBOOKページにて掲載した「犯人は現場に首だけ戻る」著者:倉知淳インタビューを、WebNewtypeにて公開いたします。皆さまお楽しみください。
「犯人は現場に首だけ戻る」書影
「前作が『死体で遊ぶな大人たち』(実業之日本社)という小説だったので、次は切断だ!と決めました」 にこやかな笑顔で物騒なことを語る倉知淳。しかし、そこはミステリ作家、新刊は残酷な猟奇殺人事件……ではなく、あっと驚く謎解きの物語。収録は表題作「犯人は現場に(首だけ)戻る ~首ヲ切ル者~」をはじめとする4編。
「切断と言ったら、やっぱり最初は首だなと思って(笑)書きはじめました」
探偵役はフリーライターの折本光一と久世敬太郎。2人は友人だが仕事を選ばない折本に比べ、浮世離れしている久世は山奥の風習やら、マイナーかつ不思議な取材ばかり手がけている。さらに彼らは「派遣さん」と呼ばれる1日限りの捜査体験を経て、レポートを提出する「非正規雇用捜査官」なのだ。
「これは僕が考えた架空の設定です。刑事にすると警察小説になっちゃうから。書きたいのは探偵小説なので、捜査の制限はありつつも情報は得られて推理できる立場を考えました。ただ、彼らだけで事件を解決しちゃうと警察の立場がなくなっちゃうから、立場としてはあくまでもアマチュア探偵として書きました」
正反対な2人の掛け合いがおもしろく、斜め上な推理を披露しながら意外すぎる事実が明かされていく。
「どこが切断されたのか? なぜ切ったのか? そこにどんな事情があったのか?を組み立てていきました」
表題作では犯人の首だけが犯行現場の、意外すぎる場所に置かれた珍事件の捜査体験に参加する。続いて「かゆいところに手が(もう一本分)届く ~腕ヲ切ル者~」では文字どおり腕が、「悪事千里を(片方の足で)走る ~足ヲ切ル者~」では足が、最後の「幽明境を(首も手足も)異にする ~ばらばら二切ル者~」ではついに遺体が細かく切られてしまう。謎、また謎の顚末は本書を読んでのお楽しみ。
「まずは読者を驚かせたくて。でも、ひどい話は書きたくなくて、純粋に謎解きをおもしろがってほしくて、思いついたらすぐにでも書きたいんです。『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』という小説は、アイデアを思いついちゃって、書いちゃいました」
構成はすべて頭のなかで練るという。
「横になって目を閉じて最初から場面を思い浮かべていって、行き詰まったら戻って繰り返して、後からノートに書き出します。だから知らない人からしたら、ただ怠けて寝てるようにしか見えないと思います(笑)」
びっしりと書き込まれたノートは毎回、10冊近くにもなるという。
「そこから一気にまとめて執筆します。ただね、毎回、事件と解決だけを書けばいいのに、余計なことまで入れちゃって『長い!』と編集さんに言われちゃって。今回も久世が取材した『河童は宇宙人なのか?』といった検証記事を考えるのも楽しくなっちゃった」
むしろ、それらも醍醐味のひとつ。しかし作家志望ではなかったと明かす。
「もともとは役者でした。日本大学芸術学部演劇学科出身で、当時人気だった小劇場にあこがれて、バイトしながら活動してました。実は某長寿ホームドラマの第1話にも出ていたんです」
それがなぜ?
「小学校の図書館でポプラ社の江戸川乱歩作品に出会ってしまい、探偵小説が大好きになったんです。それで、あるとき『競作 五十円玉二十枚の謎』(東京創元社)という謎解きの一般公募を知り、投稿したのがキッカケです」
これは推理作家の若竹七海が遭遇した、ある日常の謎の解決編をプロアマ問わず13名が競作した一冊。
「思いついたまま書いて送ったら若竹賞に選んでいただきました。そこで、もっと書きませんか?と言われて書いてみたら作家デビューさせてもらえて、バイトをやめて今に至ります」
結果、昨年はデビュー30周年を迎えたというからすごい!
「実はそれにも気づいてなくて。前作の『死体で遊ぶな大人たち』は後から、30周年記念本とつけました(笑)」
作風と同じ、どこかのほほん、自由奔放。最後にすてきな告白をここに。
「昭和生まれの特撮・アニメ好きです。新作もチェックしていて、小説にも趣味嗜好がにじみ出ていると思うのでどこかで見かけたら連帯してください」
倉知淳●くらち・じゅん/'62年静岡県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。'94年「日曜の夜は出たくない」(東京創元社)でデビュー。そこで登場した探偵「猫丸先輩」は現在も活躍中。'01年第1回本格ミステリ大賞を受賞した「壺中の天国」をはじめ、独特の視点からなる数々のユーモアミステリ小説を発表。
【取材・文:おーちようこ】
「犯人は現場に首だけ戻る」
著者:倉知淳
定価:2200円(税込)
判型:四六判
ページ数:336ページ
ISBN:9784408539171
実業之日本社 https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-53917-1/
犯人は現場に戻るというけれど、まさかの「首だけ」が戻っていた!? はたしてそれは正義の鉄ついだったのか……つづられたのは切断事件。しかし、その根底にあるのは、どうにもならない人間らしさ(?)だった。愚かで、浅はか、けれどどこかいとおしい事件の謎を堪能すべし。