新作&おすすめアニメのすべてがわかる!
「月刊ニュータイプ」公式サイト
2022年4月に放送の始まったTVアニメ「アオアシ」。人気サッカー漫画のアニメ化するにあたっての意気込みやこだわりを、さとう陽監督にうかがいました。
――サッカーと本格的に向き合う、さまざまな境遇の高校生たちを描いた作品のアニメ化です。 ご担当されることになったときのお気持ちをお聞かせください。
さとう 初めにお話をもらったときは、サッカー漫画と聞いていたので引き受ける前に躊躇はありました。原作を読むにつれて、人間ドラマという点でとても感動できる作品だと思ったので、これであればやってみたいという感じになりましたね。
――第5話までにはユースの入団試験の過程が描かれています。 迫力ある、リアリティをもったサッカーの動きを描くために意識されたこと、話し合われたことなどを教えてください。
さとう まず、僕自身、試合は見たことがありますが、そこまでサッカーに詳しいわけではなかったので、ルールや動き方から調べるところから始めました。特に、基礎の動き方とか、サッカーをやってきた人でないと話題に上がらないような知識を詰めこんでいくのは骨が折れました。ポジショ二ングや連動する動きなどは、監修の方とも相談しながら決めていきました。
――第5話までで監督が印象的だったサッカーのパートの場面はありますか?
さとう サッカーでいえば第4話でしょうか。第4話の大友のインサイドパスの前後の流れ、このあたりはサッカーシーンの絵コンテがやっとつかめてきたかなという所だったので、実際フィルムになったときによいテンポで描けたと思います。プロデューサーもテンションあがってたので。
――サッカー監修のスタッフもいらっしゃいますが、どのようなかかわり方をされたのでしょうか? また、印象的だった出来事はありますか?
さとう それぞれの方で監修してもらった部分が異なっていて、主に3つに分かれると思います。
まずは、セリフや、用語確認、そのシーンにあっているかなどの確認。次に、絵コンテ前に簡易的にポジション二ングとボールの動きにあわせてどう動くかを検証してつくる作業。最後に、実際の現場のカットごとにフォームなどを見ていただいています。
このなかでもいちばん印象的(厄介)だったのは、2番目の簡易3Dの作業でした。
監修の方にシナリオ段階でシーンにあわせたポジションニングを出してもらい、配置、ボールが動く際にどう選手が動いていくかをホワイトボードで作成。あとはソフトに落とし込みながらカメラ位置を決めたり……。やったことのないフローでしたし、この作業ひとつひとつで一日つぶれてしまうような感じだったので、いつもの仕事よりも疲れがたまりましたね(笑)。
――一方でユースからプロを目指す彼らは、高校生でもあります。アシトを中心に家族や友人との日常も描かれていきますが、こうした場面を作るにあたって考えられたことを教えてください。
さとう アシトの地元とエスペリオンのある東京の空気感の違いは出るとよいなと思いました。自分の夢がある東京、ただユースはすでに競争社会ですし、東京やその周辺はそういったサバサバした感じにしたい。そのなかで疲れたアシトが息を抜ける場所、東京の対極として、愛媛や実家を温かみのあるように画面に出せたらいいなと考えていました。誰にでも心が落ち着く場所があるので、そういった雰囲気をしっかり出せるとよいと思っています。
――特に第5話ではアシトが上京する場面もあります。こうした離別や成長などの情緒的な場面はどう作られたのでしょうか?
さとう 1コマ1コマ急がずに、セリフを話すスピードや、間をしっかりとって作りました。いつもよりもさらにゆったりでしょうか。ここならこの人と、シナリオ段階からお願いしている演出さんの回だったので、描写に関しても素晴らしいできになっていると思います。アフレコの前のCTの際にこの場面用の音楽を作ってもらいまして、声をつける段階から心情の盛り上がりを意識してもらえるようにしました。
――アニメ全体を通して、軸とされていること、気を配られていることなどありましたら教えてください。
さとう まずはサッカーがサッカーに見えるようにする。必殺技の出るようなタイトルではないので、ある程度認識できるリアリティは確保したい。あとは原作の熱っぽさをどう入れてゆくか、音楽に関しても少し熱っぽさが出るような発注をしていたかと思います。モノローグが多い主人公なので、シーンの中にうまく入れ込んでゆきたいです。