スタッフ

「アニスタ」開催直前連載企画【第四回】CloverWorks 福島祐一×梅原翔太

1月27日(日)、2月9日(土)&10日(日)の3日間、東京・秋葉原と茨城・つくば市で「アニメスタジオミーティング(アニスタ)」と題されたイベントが開催されます。

このイベントにはアニメ業界を代表する複数のスタジオから、業界の第一線で活躍するプロデューサーやクリエイターが参加し、アニメ業界、そしてアニメの制作現場がいかに変化してきたかをアニメファンたちへ向けてダイレクトに発信していく予定です。さらに業界を夢見る者たちに向けた、リクルートイベントも合わせて行われます。

そこで、このコーナーでは毎回「アニスタ」に参加するスタジオから複数のスタッフの方にご登場いただき、自身がアニメ業界を目指したきっかけや就職活動の思い出を語ってもらいます。第3回となる今回は、昨年10月にA-1 Picturesから分割する形で設立されたスタジオ、CloverWorks のプロデューサー・福島祐一さんと制作デスク・梅原翔太さんに登場していただきます。

――アニメ業界を目指そうと思われた、きっかけをお聞かせください。

福島:僕は大学のときに実写の映像を作ったりしていたんですが、同時にアニメも結構観ていたんです。当時はそれほどアニメに詳しくなくて、「攻殻機動隊」とか有名な作品を観ていたんですが、アニメーションはすごいなと思ってアニメ自体に興味を持つようになりました。そんな中、たまたまテレビで「PEACE MAKER鐵」を観て、冒頭の池田屋事件の場面に圧倒されたんですね。それでエンディングのクレジットを見ていたらゴンゾという制作会社が作っていると。

就職活動のときにアニメ業界以外も受けましたが、アニメ業界ではゴンゾを受けてみることにしたんです。その結果、ほかの業界で受かった企業もあったんですが、アニメの作り方を知りたくてゴンゾに入社することにしました。

梅原:僕は最初は広告業界に行きたいと思ってたんですよ。でも、そちらは難しそうだと気づいて、それならもともと好きだったアニメ業界にしようと思いました。ちょうど僕が高校から大学のときに深夜アニメが盛んで、それこそゴンゾの「LAST EXILE」とか、XEBECの「宇宙のステルヴィア」とかが好きで観てました。なんかみんな大人になってくると、だんだんアニメを観なくなると思うんですよ。でも、僕は中高で部活をやりながら朝の「デジモン」とかも録画して観ていたんで。

福島:じゃあ、もともとアニメが好きだったんだね。

梅原:多分遺伝子レベルで好きなんだと思います(笑)。それでアニメ業界に向けて就活を始めたんですけど、めちゃくちゃ落ちました。4月から就活をやり続けて最後に動画工房に拾ってもらったんですよ。それが10月でした。面接では好きな作品を聞かれて、安定感のあるジブリ作品とかを答えていましたね。その後、なんで受かったのか聞いたことがあるんですが、それは僕が履歴書に「絶対に辞めません」と書いていたかららしいです。アニメ業界は辞める人が多いという話を聞いていたから、そこを押していこうと思って、そう書いていたんですね。そこに注目してくれたのが動画工房でした。おかげで3年ほど前に退社するときも「『辞めない』って書いてたよね」と言われました(笑)。でも、7〜8年頑張ったんだから、そろそろいいんじゃないかみたいな感じで辞職を決めたんですけど。

福島:新人から3年目ぐらいまではちゃんと乗り切ったじゃないかと。

梅原:そう。頑張ったからね。でも結構そこを押していっても、なかなか受からないものなんだというのは驚きました(笑)。

――福島さんはゴンゾからどのような経緯でA-1 Picturesに移られたんですか?

福島:結局1年ぐらいしかゴンゾにいなかったんで、キャリアのほとんどがもうA-1 Picturesなんですけど、僕がA-1 Picturesに来たのはゴンゾが色々と大変だったタイミングだったんです。A-1 Picturesはちょうど「おおきく振りかぶって」や「かんなぎ」などを作っているときで、「鉄腕バーディー DECODE」で、(キャラクターデザイン・総作画監督の)りょーちもさんたちがデジタルでいろいろやられているというのを聞いていて、何か新しいアニメーションの作り方があるのかもしれないと思い、『鉄腕バーディー』をやりたいです」と言って入ったんです。もともとゴンゾの人もいたりして、その人からのお誘いもあっての流れだったんですけど、とにかく「鉄腕バーディー」がやりたかったんです。

――その後、梅原さんとはどういう経緯でお知り合いになったんですか?

梅原:最初は僕からコンタクトを取ったと思うんです。「ヤマノススメ」などのキャラクターデザインをやっている松尾祐輔さんというアニメーターの方がいて、僕は動画工房で松尾さんと一緒に「ゆるゆり」という作品をやっていたんですよ。そのときに福島さんのことを教えてもらって、Twitterをやってらっしゃったのでフォローしたらフォローを返してくれたんです。それで僕がDMで「お食事でも」みたいな文を送ったんですよ。それで返事が来て東中野の焼肉屋に行ったんですよね。2人で。6年ぐらい前かな。

福島:そうだね。松尾さんがきっかけだね。僕も梅原のことは松尾さんから聞いていたので。

梅原:そうして福島さんと会っている間に、僕が好きな子にフラれたんですよ。それでこのままじゃいけないと思って、「(動画工房から)そっち(A-1 Pictures)に行っていいですか?」って相談したんですよね。

福島:もう意味がわからなかったですよ。「なんで?」って(笑)。「フラれて会社辞めるの?」っていう話をした記憶があります。

梅原:そこに自分なりには理由があったんですよ。とにかく福島さんに興味があったんです。わかりやすく自分より秀でた存在だったから。優秀な人の仕事ぶりを見てみたいなと思ってここに来ました。何が違うんだろうと思って。

――当時のお互いの印象はどういう感じだったんですか?

梅原:年齢のわりには貫禄があるなと思いました。若くして圧があるなと(笑)。

福島:屈託なくしゃべる人だなという印象を持ちました。自分はあまり嫌われたくないし嫌いたくもないという思いがあって、気を使って話してしまうので、どっちかというと中庸タイプなんですけど、梅原は言いたいことを言うから。でも、そういう意味で言うと変に中途半端な会話にならないので、そこまで言うならこっちも言うけどみたいな感じで会話できた印象があります。まあ変なヤツだなとは思いましたけど(笑)。でも根は真面目でレスも早いし、社会人としての対応はきちんとしていました。それになんでも話すから話していて面白いなと思いましたね。今でもアニメの感想を言い合ったりしますから。

梅原:ほぼ僕から話しかけるんですけどね。アニメやドラマの感想をLINEで聞いてみたり。

福島:企画に関しても、映像に関しても、作品のスタッフに関してもそうですけど、多角的にいろいろとアニメや映像に関して話せる相手なんですよね。もちろん意見が異なることもありますが、その中で純粋に議論ができる人がいるというのは結構大きなことなんです。なかなか今までなかったんです。梅原が来てからそういう話をするようになって、会話するのって頭を使って考えたりもするので、そこはありがたい存在ですね。

梅原:福島さんは立場も上なので、制作の人たちも遠慮しているのかもしれませんね。と言いつつ僕もされたことないんですけど(笑)。それに、僕から見ると福島さんは圧倒的にきちんとされてると思います。かつ固すぎず、誰からも好かれるやり方をするのがうまい。若手からベテランまで。A-1 PicturesやCloverWorksが幅広い世代で回っているのは、福島さんがどの世代とも組める方だからだと思いますね。

――現在はお2人ともCloverWorksの所属となるわけですが、CloverWorksのいいところはどこだと思いますか?

梅原:制作が身綺麗なところがいいところだと思います(笑)。それって実はクリエイターに対してとても大事なことなんですよ。服装も綺麗で余裕がありそうだと、しゃべっていて不快になる要素が少ないんです。その上で制作の人たちは能力も高いと思います。福島さん以外にも学ぶところがあると思わせてくれる制作さんもいます。

福島:A-1 Picturesから分社して、これからのスタジオだという印象もあるので、大きな可能性を秘めているという事がいいところかなと思いますね。これからどうなっていくんだろうみたいなワクワク感があって、それこそ梅原が何かやることによって、それがこの会社のイメージになる可能性ももちろんあるんです。誰が何をやってもいいという状況にあるのは魅力的な環境だと思います。

――それでは最後に業界を志す方へメッセージをお願いします。

福島:アニメーション作りに携わってみたいと思うんだったら、それをずっと続けるかどうかは別にして、とりあえずチャレンジしてみてほしいですね。クオリティの高い絵や完成した映像を見たときは感動します。繰り返していくとその感動が薄れていくこともあるかもしれないですけど、色々な人と一緒にアニメを作ることの楽しさとか誰かに見てもらったときの反応とかは全然色あせるものではないので、一度やりたいと思ったらぜひチャレンジして、その高揚感を味わってほしいです。

梅原:僕が個人的に思うのは、情熱を注ぎさえすれば才能がなくても、うまくいくということです。これは制作に対してだけで、絵を描く方のことはわからないですけど、僕はなんの才能もない中で、単純に時間を等価交換で払ったことでうまくやってこれたという気がしているんです。特殊な才能がなくても、それができる人には制作は合っていると思います。

お2人がCloverWorksで働いている経緯、とてもおもしろいですね!

人材の流動性が高いのもアニメ業界の特徴です。

現在、イベントのチケットはWIT STUDIOのアプリ「WITアプリ」で発売中。

各スタジオのファンや、アニメ業界を志す皆さんは、今すぐ申し込みを!

●福島祐一(ふくしま・ゆういち)/アニメーションプロデューサー。ゴンゾからA-1 Picturesを経て、現在はCloverWorksにて活躍中。これまでに「四月は君の嘘」、「アイドルマスター」シリーズ、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」などを担当。

●梅原翔太(うめはら・しょうた)/制作デスク。動画工房からA-1 Picturesへ移った後、現在はCloverWorksに所属。これまでに「プラスティック・メモリーズ」、「舟を編む」、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」などの制作進行を担当。

【取材・文:橋本学】

■「アニメーションスタジオミーティング2019」
【開催日・会場】
2019年1月27日(日) 茨城つくば【前夜上映祭】
MOVIXつくば(茨城県つくば市研究学園5-19 イーアスつくば3F)

2019年1月27日(日) 東京阿佐ヶ谷【アニスタ番外編】
阿佐ヶ谷ロフトA(東京都杉並区阿佐谷南1-36-16-B1)

2019年2月9日(土) 東京秋葉原【リクルートデー】
2019年2月10日(日) 東京秋葉原【ミーティングデー】

東京秋葉原メイン会場:秋葉原エンタス(東京都千代田区外神田1-2-7 オノデン本館5F) 
東京秋葉原サブ会場:ベルサール秋葉原(東京都千代田区外神田3-12-8住友不動産秋葉原ビルB1)
【チケット】
WITアプリにて販売中
(~1月8日までゴールド会員先行、1月12日より一般販売開始)

リンク:「アニメーションスタジオミーティング2019」公式サイト
    「WITアプリ」
この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2024年5月号
月刊ニュータイプ
2024年5月号
2024年04月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype