新作&おすすめアニメのすべてがわかる!
「月刊ニュータイプ」公式サイト
魔法少女という題材ながら、自衛隊との連携やテロリストとの戦いといったハードな物語がひと際目を引く「魔法少女特殊戦あすか」。2019年1月から放送が始まったTVアニメも、いよいよクライマックス。WebNewtypeでは、原作者であり、TVアニメのシリーズ構成も担当している深見真氏を軸にインタビューを実施。
連載最終回となる第4回目は、深見真氏と山本秀世監督の対談の後編です。
――それでは、第1話からこれまでを振り返ってのお話をうかがえればと思います。
山本:「あすか」は原作者である深見さんに参加していただけたおかげで脚本が早い段階で抜けたので、絵コンテもその分前倒しで作業に入れました。その分、多少は作画に時間を割けたのかなとは思います。印象に残っているのは、手練れの魔術傭兵が出てきてあすかが苦戦しはじめる第4話と第5話ですね。まずは、前半のクライマックスといえるここを乗り切らなければという思いでした。
深見:第4話で、あすかが太腿で敵の歩哨の首を挟んで倒すシーンはとてもいいアクションでしたね。
山本:アクション作監をお願いしてる神谷(智大)さんががんばっていろいろやってくれました。
深見:第5話は、特に作画がすばらしかったように思います。
山本:それは作監のCindy H.Yamauchiさんの手腕ですね。飯塚を本当にかっこよく描いてくださって助かりました。第6話は、夏祭りのシーンもあって当初は中休み的な回になる予定だったのですが、いざできあがってみるとミアが大活躍してるバトル回になりました。オリジナルキャラのサンディノのおかげで、彼女の魅力がより引き立ったと思います。
深見:第8話ではくるみの拷問シーンがありましたね。「マジカル・スパンキング」をまったく笑わずに言える関根(明良)さんのプロのお芝居に脱帽しました。聞いている方が笑いをこらえられないレベルなのに!
山本:あのシーン、何のエフェクトも乗せていませんしね。それはもうただのスパンキングでしょと(笑)。笑いが絶えない、楽しいアフレコ現場でした。
深見:くるみって、もし主人公だったらドン引きされて終わるキャラだと思うんですよ。サブキャラだから許されているところはあるかなって。
山本:たしかに。主人公にはあまり拷問はしてほしくないかも……。
深見:僕が好きな海外ドラマの「24 -TWENTY FOUR-」では、主人公のジャック・バウアーは拷問をするし、されることもあります。ですが、かわいいアニメのキャラでそれをやるのはまだちょっと早いのかなと。
――アニメの放送も残すところは深見さんが脚本を手がける第12話のみとなりました。
山本:まだ作業中ではあるのですが(注:本インタビューは2019年2月に実施されたもの)、あともうひとがんばりというところですね。僕自身、出来上がりが楽しみです。大きなバトルは第11話で決着が着きますが、第12話は第1話から第11話までのバトル以外の要素をすべて詰め込んだような、てんこ盛りの回になっています。ぜひ最後までご覧ください。やるべきことが第11話までで収まってくれたので、第12話で物語をどうまとめようかというのは結構苦戦しましたよね。
深見:そうですね。原作では、沖縄戦が終わるとすぐ次の長編が始まってしまうので……。
山本:そこは原作者たる深見さんならうまくまとめてくれるだろうと。
深見:最初に上げたプロットはもっといろいろブッ飛んでいたのですが、残念ながら採用されませんでした。これで最終話なのだから「これをきっかけに放送停止になってしまっても逃げきれるのでは?」とか思っていたのですが。
山本:いえいえ、そういうわけにもいきませんから(笑)。戦闘こそありませんが、日常あり、シリアスあり、拷問ありといろいろ詰まっていますよ。くるみは最後まで飛ばしっぱなしですので、今から第12話を見たみなさんの反応が楽しみです。好きなだけ引いてください。でも、そこまでひっくるめてこの作品を愛してくれたらうれしいです! 「あすか」の魅力がギュッと詰まった、いい最終話になっているのではと思います。
――全12話を総括して、どのようなフィルムになったと感じられますか。
深見:"青少年が深夜にこっそり見る"という意味では、実に正しい深夜アニメになったのではないかと思っています。
山本:それはありますね(笑)。往年の深夜ワイドショー「11PM」のように、バラエティ豊かにお行儀の悪さがある作品にできたのかなと。作っている僕らとしても刺激的でした。「あすか」ならではの、独自の立ち位置を築けたのではないかと思います。
――そういった表現がどこまで許されるのか、ある種挑戦的な作品にもなったと。
深見:それだけがやりたいわけではないんですけどね。「拷問、好きなんでしょ」と言われるとちょっと困りますし……。
山本:あ、好きなわけではないんですね……(笑)。とはいえ、そういう凄惨なシーンがあるからこそ、身近なものを大切にしたいというテーマも際立つと思うんです。振り幅が大きいからこそ、一つひとつの要素が互いに引き立て合うといいますか。「あすか」はスタッフやキャストに恵まれて、それをしっかり描けたと思います。ここまで人に恵まれるのはそうそうあることではないと思いますので、幸せな制作現場でした。
深見:こちらこそ同じ思いです。アニメになることの魅力をあらためて実感できる現場だったと思っています。山本監督はじめ、制作スタッフのみなさんには感謝してもしきれません。
【取材・文:勝田周】