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「Re:ゼロから始める異世界生活」、「オーバーロード」、「この素晴らしい世界に祝福を!」、「幼女戦記」、という異世界系ライトノベル4作品のキャラクターがぷちキャラになって一堂に会し、大暴れするTVアニメ「異世界かるてっと」。4月からの放送開始にあたり、同作の芦名みのる監督が4作品の原作者たちと対談するインタビュー連載企画。最終回は「Re:ゼロから始める異世界生活」の原作者・長月達平さんとの対談の後編です。
――長月氏は「異世界かるてっと」のアフレコにも立ち会われたとのことですが、いかがでしたか。
長月:まず、香盤表を見るだけでビックリですよ。ものすごい人数の声優さんが参加されているのに、4つの作品それぞれのメインキャストだからビッグネームしかいないという……(笑)。
芦名:音響会社のマジックカプセルさんもちょっと引いてたくらいですからね(笑)。ビジネスに徹すれば「ここでこのキャラがカメラに映っているから、無理にしゃべらせなくてもいいかな」という判断もありうるわけです。でも、ビジネスを度外視したところにいる自分が、それではダメだと言うんです。「そんなシチュエーションがあったら、そいつが黙ったままでいるわけないだろう!」と。その声に従ううちにすごい人数に……。
長月:物語に目を向けてみると4作品のキャラが学校で同じクラスになるわけですが、これがまたおもしろい。学校って、最初はやっぱり気心の知れた仲間同士でグループになりますよね。でも、係や委員の活動などを通して、そうではないクラスメイトたちとも少しずつ接していくわけで。4作品のキャラがシャッフルされていく様子をそこにうまく当てはめている。4つの世界の住人が同じ異世界に飛ばされたという豪快な設定が根底にあるなかで、そうやって学校生活を丁寧に描いているというギャップがおもしろいです。
芦名:本当は共通の敵なんかを作れれば一番話が早いんだけど、こちらは作品をお借りしている身だから4作品のどれかの敵役を呼んでしまうと偏りが出ていけないし、かといって、この作品オリジナルの敵キャラなんてものも求められていないだろうとも思うし。
長月:なるほどね。これ、上の話題にも引っかかるんですけど、俺は自分の作品のキャラが他の作品のキャラに絡むところをまったく考えられないんですよ。予想すらできない。だって、自分の作品の世界にはそのキャラはいないんですから。だからそういうお話を作るときは何らかの形で別の方にお願いするのが一番いい方法だと思う。それがやりとりしやすい人であれば、さらにいい。その辺、芦名監督は安心して任せられる人だと思ってます。
芦名:カルロ・ゼン先生からは「殴ったら殴り返してくれるのでやりやすい」と言われました(笑)。
長月:そうそう、そういうこと。芦名監督は俺が修正した脚本に対しても「でも、このときはこういう意図があってこういう物言いをしているんです」ときちんと説明してくれるでしょう。決してキャラの把握が甘いわけではない。だからこちらも納得できるし「そういう意図でしたら、こういう言い方でもいいかも」と発展させられるんですよ。
芦名:最終的にはLINEでやり取りしてますもんね(笑)。
長月:メールだと1日かかるやり取りでも、LINEならすぐ終わるしね。「異世界かるてっと」は「こういう話の流れで、こういうシチュエーションになったとき、このキャラのセリフはこれでどうですか」と方向性をすごく丁寧に示してくれるので、こちらとしてもすごく助かっています。俺にできない形で、原作を再現してくれていると言ってもいいくらい。だから、俺がこの作品を見て「リゼロ」のキャラに違和感を抱くことは絶対にないです。ファンのみなさんも安心して楽しんでください。
芦名:ありがとうございます! ではひとつ、本作のために作品同士がクロスオーバーしたコラボ小説などを長月先生にぜひ……。
長月:「リゼロ」の書き下ろしならできるけれど、他の作品が絡んでくると責任が取れないなぁ……。
芦名:僕と同じ気持ちを味わってください! 脚本を書いてチェックに出すと、作家さんたちからの修正指示で真っ赤になった原稿が戻ってくるんですよ!
長月:絶対やりたくないやつだ、それ!(笑)
――そろそろ時間も迫ってきましたが、長月氏がクリエイティブをするうえで大切にされていることをおうかがいできますか。
長月:妥協をしないことです。これに尽きます。直接的な物言いになってしまいますが、俺はよい読者というのはお金を出してまで応援してくださる方たちだと思っています。だからこそ、そんな方たちに損をさせるようなことは絶対にしてはいけない。
芦名:実はそれにまつわるエピソードがあるんです。2018年に劇場で上映されたOVA「Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow」の冒頭で流れるマナーCMも僕たちで作っているんですが、ちょっと制作時間に余裕がなくて、言ってしまえば脚本のデキがあまりよくなかったんです。それをそのままチェックに出したら、長月先生が「デキが悪い! チャチャっとやっていい仕事なんてないでしょう!?」とものすごく怒って。でも、それは当然のことなんですよね。僕ら制作サイドの事情なんて、見てくださる方たちにはまったく関係ないんですから。あそこで怒ってくださったおかげで、最終的にいいCMになったと思ってます。
長月:そうしたやり取りができたのも、芦名監督としっかり交流できていたからですよ。アニメ本編制作時の早い段階で一緒に飲みに行ったりして、お互いに腹を割って話せるようになれていたのがよかったです。
芦名:まったくです! まだ先のことは分かりませんが「異世界かるてっと」を少しでも長く続けられれば、それだけ多くの方が見たいシーンをさらに描けるようになっていくと思います。僕としても続けていければと思っていますので、ぜひ応援をよろしくお願いします!
【取材・文:蚩尤】