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「過去」から「未来」へ。これまで描かれてきた物語の伏線がひとつに結びつく。いよいよクライマックスに突入したTVアニメ「プランダラ」。Web Newtypeのリレーインタビューでは、キャラクターの色味をつくりあげている色彩設計の池田ひとみさんに、この作品に込めた想いを伺いました。
――原作を読んだときの印象をお聞かせください。
池田 今回のお話をいただくまでは、この作品を知らなかったんです。作品を全く知らない状態から原作を拝見して、おもしろいと感じて。このお仕事をやってみたいと思いました。
――制作が始まるにあたり神戸(洋行)監督らスタッフ陣と打ち合わせをされたと思います。今回はどんな色彩にしようとお考えになりましたか?
池田 キャラクターデザイン(設定)があがってきて、いくつか背景(美術)ができたタイミングで、監督と打ち合わせをしました。最初は私が「この世界ならこういう色がいいかな」と色を付けて、いわゆるテイク1、第1稿をつくっていきました。それをチェックしていただいたのですが、基本的には第1稿の色から、それほど大きな変更もなく、OK(決定稿)を出していくことができました。
――キャラクターに色を付けるときはどんなものを参考にして色を付けていったのでしょうか。
池田 原作の単行本表紙のカラー、あとは連載中のカラーページを全ていただいて、色の参考にしています。原作の色は、やわらかいイメージがあったんですけど、今回のTVアニメの背景ははっきりしている印象があったんです。とくに建物や木の色がはっきりと出ている印象があったので、キャラクターの色をその背景に合う色にしていきました。原作のイメージを壊さずに、キャラクターが動けるようなカラーをチョイスしていったという感じですね。
――「プランダラ」のキャラクターたちは髪の毛の色が多彩です。どんなキャラクターから色をつくっていきましたか。
池田 今回はリヒトー=バッハと陽菜の色味を基準にして、それにあわせてほかのキャラクターの色をつくっていきました。実は陽菜の髪の毛の色が一番大変だったんです。原作では陽菜の髪の毛に紫色のグラデーションが入っているので、TVアニメでもブルーから紫のグラデーションを入れています。リヒトーは髪の毛が白で肌も白くて、服装が赤いマントの下は白なんですね。真っ白だけで構成するとキャラクターのパーツの境目がわかりづらくなってしまう。そこで同じ白系でも影色に色を入れて同じ白に見えないようにしました。白い髪でもハイライトを入れたいという意見もあったので、ハイライトを入れられるように、完全な真っ白ではない髪色にしました。「過去編」の(坂井)離人は髪の毛が黒いですし、瞳の色も肌の色も違う。あえて違う色にすることで、原作を知らずにこの作品をアニメで見た人が「この離人がリヒトーになるの?」と、色味の変化で楽しんでほしいと思っていました。
――ジェイル=マードックをはじめ、ほかのキャラクターたちの色はどのように決めていきましたか?
池田 リヒトーや陽菜の色が決まると、ほかのキャラクターは悩まずにすんなりと決まっていきました。リヒトーとジェイルを並べて、原作を参考にしつつ、バランスを取りながら色をつくっています。リヒトーが赤いマントで、ジェイルはブルーの軍服なので、ここのバランスを取りつつ、ジェイルたちの色を決めていきました。
――今回、キャラクターの色を決めるうえで、どんなルールを定めていましたか?
池田 やはりキャラクターは顔に目がいくので、瞳をはっきりわかる色にしようと思っていました。リヒトーの瞳は赤色ですし、陽菜は青色。とくに陽菜は設定上、ある人物と目の色を同じにしています。あと、モブキャラクター(街の人々など)は地味目な感じに色をつけて、黒髪でもブルーががった黒、紫がかった黒などにしてバリエーションをつけています。「過去編」の離人と(坂井)時風はまさにその手法で。黒髪ですが、(離人と時風を)同じ黒にはしていません。
――ナナやアレク(アレクサンドロフ=グリゴローヴィッチ/アラン)といった第1クールと第2クールにまたがるキャラクターについてはどのように色をつけていきましたか。
池田 ナナは肌が褐色なので、赤すぎず黄色すぎず、はっきりと褐色と分かる色を付けています。原作のナナの髪の毛には白色の印象があって、シャツも白なので、髪の毛を明るめのグレーにして。リヒトーと違う「白」になるようにバランスを取りました。第14話に登場する幼いナナはその色をあえて踏襲して、肌や髪の毛の色、瞳の色を同じ色にしてひとりのキャラクターであることを示しています。アランとアレクも瞳の色は同じ色にしています。ただ、髪の毛は年齢差を感じさせるために、若い時(アラン)ははっきりとした黒、年を取った時(アレク)は黒をちょっと薄めにしています。髪以外は同じ色にして同じ人物という感じを出しました。
――原作と違う色を使ったキャラクターはいますか?
池田 園原(水花)が暴走しているときは、瞳を赤くしているんです。これは原作にはなかった表現だと思うのですが、ここは監督から「クスリを打たれておかしくなっている園原は、リヒトーと同じ赤色の瞳にしてみてはどうか?」と提案があったんです。正気になった園原が目を開けると通常のグリーンの瞳になっている。瞳の色で彼女の変化を出せればと思っていました。「過去編」でもグリーンの瞳は受け継がれています。
――原作ではカラーページにあまり登場しない、シュメルマンはどのように色を付けていきましたか?
池田 実は原作ではシュメルマンのカラーがあまりなくて。裏表紙で描かれているシュメルマンくらいしか、資料がなかったんです。しかも、目をつぶっていることが多かったので、普段の瞳の色をどうしようかと考えて。髪の毛は金髪なので、瞳の色をブルー系かグリーン系にしようと。あと彼にはとある過去があり、実はオッドアイ……左右の目の色を変えています。
――第1クールと第2クールで色味の方向性の違いはありましたか?
池田 第1クールと第2クールは衣装がガラッと変わるんですよね。ほぼほぼキャラクターが一新されているような感じがあって。作業的には大変でしたね。第1クールはブルーの軍服で、ファンタジー要素を強めに。第2クールはグリーンとピンクの制服を着て、現実的に。第2クールに入ると、ジェイルやペレが緑色の制服を着るので、色のバランスが崩れないように制服の色を調整していきました。同じく、陽菜の髪色がブルーで、リィンが茶髪なので、ピンクの制服が変なバランスにならないように。ピンクの中でもいろいろなピンクがあるので、ちょうどいいピンクを選んでいきました。
――第2クールでは第13特設軍学校のメンバーが登場します。なかでも、道安武虎のカラーリングはインパクトがありましたね。
池田 Aクラスのメンバーは離人たちメインキャラクターたちと絡むので、モブキャラクターというより、埋もれないモブとして目立つカラーリングにしています。ひげを生やしたクラスメイトがいたり、派手な髪色のクラスメイトがいたり、食糧難のなかで軍人になりたいと思っている人はいろいろな人がいるんだなと感じてもらえればいいなと思っていました。道安は、原作に離人と並んでいるカラーページがありましたので、赤と緑の髪の毛の色はそこからの方向性ですね。原作を見たときは、すごい塗り分けだなと思いましたけど(笑)。道安の瞳は原作通り、1本線の瞳と白目にしています。髪の色でガツンと印象が強くなっているので、うまくバランスを取りながら色をつけていきました。
――最後に視聴者に向けて、第18話以降の展開で楽しみにしてほしいところをお聞かせください。
池田 登場人物の想いが見えてくるところが後半の楽しみなところで、とくにリヒトーの戦いが楽しみです。もちろん戦いだけじゃなく、ラブ要素もありますので、にやにやして見てもらえるとうれしいです。
【取材・文:志田英邦】