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「デカダンス」リレーインタビュー 監督・立川譲「圧倒的スケールの移動要塞はもちろん、人間ドラマにも注目してほしい」

謎の生命体「ガドル」の脅威を排除するため、巨大な移動要塞「デカダンス」に乗り込んだ人類。デカダンスに住まう戦闘集団「ギア」とギアを支える非戦闘員「タンカー」が、人類の存亡を賭けてガドルに挑んでいく――。

監督の立川譲さん(左)と、プロデューサーの角木卓哉さん(右)
監督の立川譲さん(左)と、プロデューサーの角木卓哉さん(右)(C) DECA-DENCE PROJECT


2020年7月8日より放送がスタートするオリジナルアニメーション「デカダンス」。Web Newtypeでは本作の魅力を掘り下げるべく、スタッフ&キャスト陣によるリレーインタビューをお届けします。放送直前の第1回は、立川譲監督にお話をうかがいました。

――「デカダンス」の構想は、どのようにして生まれたのでしょうか?

立川 大まかな企画の原案――物語や世界観については、KADOKAWAの田中翔プロデューサー、NUTの角木卓哉プロデューサー、そして僕の三人で考えていき、ある程度、土台が固まった段階でシリーズ構成の瀬古(浩司)さんに入っていただきました。

特徴的だったのは、四人でつくったシリーズ構成をもとに脚本を一度最後まで書き切ってもらい、そこからまた第1話に戻って、後半の展開や伏線などをフィードバックしたことですね。オリジナルアニメーションは、1話ずつつくり込んでいっても後半で詰まってしまうことがあるので、改めて前半に立ち返って後半のエピソードを生かすようなつくり方をしてみました。いつものホン読み(脚本会議)よりずっと時間がかかったと思います。

――本作はデカダンスという移動要塞が見どころの一つだと思います。監督の中に巨大構造物を描きたいという思いもあったのでしょうか?

立川 ロボットものを含め、巨大な物体の表現を手がけたことがなかったので、巨大なものを演出してみたいという願望はありました。ただ3000m級という富士山並の物体になるとは思いませんでしたが(笑)。僕が演出で参加した『進撃の巨人』も、大型の巨人で15mぐらい、超大型巨人でも60mぐらいですからね。ここまで大きい物体を演出するなんて、めったにできないのでとても新鮮です。

TVアニメ「デカダンス」PVより
TVアニメ「デカダンス」PVより(C) DECA-DENCE PROJECT


TVアニメ「デカダンス」PVより
TVアニメ「デカダンス」PVより(C) DECA-DENCE PROJECT


――デカダンスの演出で大事にしていることはどんなことでしょうか。

立川 作っていて気づいたのは、1000mでも3000mでも大きすぎると細かい違いを出すのが難しいということですね。単体ではほとんど違いがないので、例えば雲海からデカダンスが飛び出しているような見せ方で、そのスケール感を表現するようにしています。比較対象になる木や雲の位置はかなり気を使いました。

――ここまで大きいと人物との対比も難しいのではないですか?

立川 そうですね。例えば、デカダンスの側に人物が立っているとして、それをリアルに描こうとすると背景が全部鉄板になってしまいます。富士山級の大きさですから、どの角度から描いても、どれだけアオリにしても見えるのは鉄の壁。画的に困ることもありました。そういう場合は、ちょっと嘘をついて背景に配管のようなパーツを映し、単調な画面にならないようにしています。

――やはり、一番の見せ場もデカダンスになるのでしょうか?

立川 もちろんデカダンスは設定としても見せ場としても大事な要素です。ただ、一番描きたかったのはドラマの部分なので、自分の生き方を貫きたい少女・ナツメといろいろと諦めてしまった男・カブラギの関係性を大事に描くようにしています。

――本作には、「ガドル」との戦闘を担当する「ギア」、そしてギアをサポートする「タンカー」という役割が存在します。ナツメは「タンカー」にもかかわらず、「ギア」になることを夢見ている少女ですが、彼女を描く上で大事にしていることを教えてください。

TVアニメ「デカダンス」PVより
TVアニメ「デカダンス」PVより(C) DECA-DENCE PROJECT


立川 ナツメは感情に従ってまっすぐに進んでいく素直な子です。普通の人だったら踏みとどまったり、躊躇したりすることもまったく気にしません。見方を変えるとちょっと“あほ”なところがありますが(笑)、その突き抜けたところが魅力なのかなと。悪気なしに周囲をどんどん巻き込み、物語を引っ張っていくキャラクターなので、そのまっすぐさ、勢いを大事にしています。

ただ、自分の目標のためにしっかり動けるタイプって、動けない人からすると憧れや妬みの対象にもなり得るんです。少し話はそれますが、今ってYoutuberの勢いがすごいですよね? 中にはせきららな私生活の動画をアップして、生活している人もいる。簡単に見えますが、並大抵の精神力じゃできないと思うんです。ナツメもまさに半端でない精神力を持ったタイプ。今の時代だったら、Youtuberになっているかもしれないですね。

――ナツメ、Youtuber説!

立川 あくまで普通の人だったら躊躇しちゃうようなことでも、いっさい構わず突き進んでいく、という意味ですが(笑)。それをうざいと感じる人もいれば、かっこいいと憧れる人もいる。それがナツメというキャラクターです。

――画として何か気をつけていることはありますか?

立川 感情が顔に出やすく表情がころころ変わるキャラクターなので、感情的になったときにどこまで表情を崩すかというのはかなり気を使います。ベースはかわいらしい女の子なぶん、悲しいとかつらいとか特にネガティブな心情になったときの表情が難しいです。

――では、もう一人の主人公であるカブラギについても聞かせてください。彼はナツメが就くことになる外装修理工のボスに当たる存在です。

TVアニメ「デカダンス」PVより
TVアニメ「デカダンス」PVより(C) DECA-DENCE PROJECT


立川 魅力的だと感じるのは、物語の導入から生きるのを諦めているところですね。過去のある出来事もあり、自分というものに疑問を持って生きています。もちろん芯の部分には熱意も意思もあるんですが、それをうまく表に出せないでいる。逆にナツメは自分を信じて、自分がしたいことに忠実に進んでいくので、二人は影響しあっています。その対比と関係性に注目していただけたら嬉しいです。

――デザインもどこか諦観したような表情が印象的です。

立川 カブラギも表情が難しいキャラクターですね。諦めた雰囲気というのが、なかなか表現しづらくて。ベースとしては冷静に見えるようにして、ふとしたときに背負っているものの哀しさや切なさが見えるようにしています。

――くたびれた感じとはちょっと違うのでしょうか?

立川 そうですね。それはそれで好きになってくれる人もいると思いますが、諦めた雰囲気はありつつもかっこよさは大事にしたいと考えています。

――ナツメとカブラギは、楠木ともりさんと小西克幸さんが演じられます。キャスティングのポイントを教えていただけますでしょうか。

立川 お二人ともオーディションで、ナツメはスムーズに決まりました。彼女の魅力でもある、人を引っ張っていくパワー、元気がよくてちょっと抜けているところを楠木さんがしっかり表現してくださったのが大きかったですね。対して、カブラギは最後の最後まで悩みました。先ほど言った、「諦めた感じ」をどうするか。結果として、暗くて哀しげな雰囲気を大事にしてくださった小西さんにお願いすることになりました。

――アフレコ現場で監督からオーダーしたことなどはありますか?

立川 オリジナルアニメーションで設定も細かいので、最初は世界観やキャラクターの説明に時間を取らせていただきました。ただ、お芝居そのもので何か注文するということは特になかったです。ナツメもカブラギもオーディションを経ていますし、お二人ともしっかりキャラクターを掴んでくださっているので、スムーズに進んでいます。

――ナツメとカブラギ以外で注目してほしいキャラクターは誰ですか?

立川 クレナイというナツメが憧れる女性ですね。一見、お姉さん気質のかっこいいキャラクターですが、実は意外とギャップがあって。頼れるところ、笑わせてくれるところと、いろいろな表情を見せてくれるので、彼女が出てくるとほっとします。

TVアニメ「デカダンス」PVより
TVアニメ「デカダンス」PVより(C) DECA-DENCE PROJECT


――では最後に、放送を楽しみにしている読者へ改めて注目ポイントを教えていただけますでしょうか。

立川 巨大な要塞の存在感、ギアたちのアクションなど、重量感、躍動感溢れる映像をぜひ楽しみにしていただきたいんですが、何よりもまず見ていただきたいのはナツメとカブラギのドラマです。二人の関係性がどうなっていくか注目していただけたら嬉しいです。

【取材・文:岩倉大輔】



■TVアニメ「デカダンス」
放送:AT-X…7月8日より毎週水曜23:30~
   TOKYO MX…7月8日より毎週水曜25:05~
   テレビ愛知…7月8日より毎週水曜26:35~
   KBS京都…7月8日より毎週水曜25:05~
   サンテレビ…7月8日より毎週水曜25:30~
   BS11…7月9日より毎週木曜23:00~
配信:ABEMA…7月8日より毎週水曜24:00~ ※地上波先行・最速単独配信
   dアニメストア…7月11日より毎週土曜24:30~

スタッフ:原作…DECA-DENCE PROJECT/監督…立川譲/構成・脚本…瀬古浩司/キャラクターデザイン・総作画監督…栗田新一/キャラクターコンセプトデザイン…pomodorosa/サイボーグデザイン…押山清高(スタジオドリアン)/デカダンスデザイン…シュウ浩嵩/ガドルデザイン…松浦聖/音楽…得田真裕/音響監督…郷文裕貴/アニメーション制作…NUT/製作…DECA-DENCE PROJECT
キャスト:カブラギ…小西克幸/ナツメ…楠木ともり/ミナト…鳥海浩輔/クレナイ…喜多村英梨/フェイ…柴田芽衣/リンメイ…青山吉能/フェンネル…竹内栄治/パイプ…???

リンク:TVアニメ「デカダンス」公式サイト
    公式Twitter・@decadence_anime
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