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期待のオリジナルTVアニメ「デカダンス」の放送まであと少し! WebNewtypeでは本作の魅力を掘り下げるべく、スタッフ&キャスト陣によるリレーインタビューをお届けします。第3回は、NUTの角木卓哉プロデューサーにお話をうかがいました。
――企画が立ち上がった経緯について教えていただけますでしょうか。
角木 NUTを立ち上げたタイミングでオリジナル作品をやろうという話があり、ちょうどそのときにKADOKAWAの田中翔プロデューサーから、何かやりませんかというお話をいただきました。一方で、立川(譲)監督とはマッドハウスの同期で、以前一緒に作った「デス・パレード」の縁もあり、彼ともオリジナルで何かやろうという話をしていたんです。そこで、2つを結びつけて企画を揉んでいきました。
今の「デカダンス」の形ができたのは3年前ぐらいですね。立川監督は「名探偵コナン ゼロの執行人」があったり、「モブサイコ100」シリーズがあったりしたので、完全に「デカダンス」にかかりきりというわけにはいかなかったんですが、方向性については少しずつ話を詰めてだんだん形になっていきました。
――3年前というと「幼女戦記」を制作されていた頃ですか?
角木 そうですね。その頃には概要ができていました。足かけでいうとかなり長い期間、関わっていることになります。
――その概要は現在と同じようなものなのでしょうか?
角木 要塞の中で生活している人がいて、なかには怪物と戦う人もいるけれど、普通に暮らしている人たちはそれを知らない……というような内容だったと思います。そういう意味では、要塞があって何か大きな怪物と戦うという構図は最初から変わっていないですね。
――本作を制作されるに当たって、角木プロデューサーが大事にされていることはどんなことでしょうか?
角木 世界観や設定については監督がいろいろなアイデアを出してくださり、監督がクリエーターとしてやりたいことがたっぷり盛り込まれています。その上で、僕としてはせっかく立川監督がやるのであれば、「誰がどんな生き方をするのか」、「どんな人間関係をつくっていくのか」というドラマをちゃんと入れてほしいとお願いしました。
「デス・パレード」を制作しているときも、オムニバス・ストーリーの中に何もない人形のような主人公がどうなっていくのかという軸がありましたし、「デカダンス」でもそういうドラマを入れてほしかったんです。シナリオ会議もカブラギとナツメの関係性や二人の想いというものを意識して読むようにしていました。
――最初から「要塞」という設定はあったとのことですが、デカダンスのデザインはそこからどのように生まれたのでしょうか?
角木 イメージボードをつくっていくときに、立川監督がパンチさせたいというコンセプトを発言していて、キャラクターデザインの栗田新一さんがざっくりしたデカダンスの設定を出してくださったんです。それが前身となるデザインになりました。その後、具体的なデザインをシュウ(浩嵩)さんにお願いすることになり、シュウさんがかなり攻めたデザインを提示してくださって、これは面白いなと思いました。
――しかも全高3000mという途方もないスケールです。
角木 人が住んでいるならどれぐらいの大きさになるのかという話をしていたらだんだん大きくなってしまい、このサイズになりました(笑)。動いているところを見ていただければその迫力に圧倒されるはずです。映像に関しては、監督と3DCGのチームがディティールを詰める作業に時間をかけている様子を見ると、相当大変なことをやっていると思います。
――デカダンスのアクションも楽しみですが、人物も空間を縦横無尽に飛び回るすさまじいアクションを繰り広げるそうですね。
角木 浮遊感を出すのが大変みたいで(笑)。なんだか申し訳ないことをしてもらっているなとは思っているんですが、ただ参加されているスタッフが存分に力を発揮してくれていて、飛びながら戦っている感じはとてもよく出ているので、戦闘描写も世界観の一部として楽しんでいただきたいですね。
――「幼女戦記」の空中戦とはまた違った雰囲気になるのでしょうか。
角木 そうですね。「幼女戦記」の戦闘シーンはファンタジーの中にもリアル寄りの要素を取り入れていましたが、「デカダンス」は遊ぶところは遊ぶ、自由に描くという形にしているので、雰囲気は全然違うかもしれないですね。それから、「幼女戦記」は銃撃戦が多かったのに対して、「デカダンス」は近接戦が多いところも大きな違いだと思います。
――では、本作の主人公であるカブラギとナツメについても聞かせてください。まずは、角木さんから見てナツメはどんな女の子でしょうか。
角木 ナツメは自分のやりたいことや、どう生きたいかを明確に示せる子です。ただ、あくまでも十代の女の子。まっすぐ進んでいこうとしながらも、迷いがあったり、葛藤があったりと、“ゆらぎ”の多い子でもあります。目の前にあるひとつひとつの問題をいかに解決して、いかに決断して進んでいくかという部分がキモになってくるのかなと。「この子はこういう子だから、こういう行動しかしません」という、型にはまったキャラクターにならないよう気をつけています。
――バイタリティのある女の子なんですね。
角木 そうですね。だからこそ、あまり嫌味にならないようにしたいと思ったんです。自分の信念を貫こうとして「それはしたくないです」と平気で言える子ですが、嫌味でいっているのではなく、本心から発言し、行動しているとわかるような見せ方にしています。それと楠木ともりさんの演技がそういった雰囲気が出ていて自然に感じられると思います。
――カブラギは、そのナツメの師匠的な立ち位置になると考えてよいのでしょうか。
角木 ええ。嫌々ながら(笑)、ナツメに戦い方や生きる術を教えていくという役割になります。
――カブラギはキャラクター紹介文に「無気力な日々を送っている」とありますが。
角木 カブラギはそれなりに年齢を重ねた大人で、自分が何かを変えられるとは考えていない、とりあえず決められたことをまっとうして生きていけば、それなりに暮らしていけるという考えの持ち主です。その考えを否定したくはないですし、それもひとつの生き方だと思います。ただ、ナツメと出会ったことでその考えが揺らいでいく、そういうキャラクターです。
――ナツメとの出会いによって少しずつ心情に変化が起こる、と。
角木 成長というよりは、考え方が変化していくのが面白いと思います。その結果、頑張るところが出てきたり、何かに抗おうとしたりする。その部分を見ていただきたいですね。そして、カブラギのアクションはかなりダイナミックに描かれているので、そちらも楽しみにしていただけたら。
――では最後に、放送を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
角木 オリジナルアニメーションということで、見たことのない特殊な世界観と映像、そして重厚なドラマを楽しんでいただけるはずです。今まさに制作中ですが、声優さんの声や音楽が入り画面が完成していくのを見ると、さらに作品世界が広がっていく感覚になり、早く皆さんに楽しんでいただきたい思いでいっぱいになります。OPテーマ、EDテーマも素晴らしい内容なので、そちらも合わせて楽しんでください。よろしくお願いします。
【取材・文:岩倉大輔】