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「デカダンス」リレーインタビュー ガドルデザイン・松浦聖「ガドルのテーマは“深海生物”と“キモかわ”!」

ナツメのため、ガドル工場襲撃の準備を整えるカブラギ。果たして計画の行方は……。大きなうねりが起こりそうな「デカダンス」。本作の魅力を掘り下げるリレー連載第13回は、ガドルデザインの松浦聖さんにお話を伺いました。“かわいらしくて気持ち悪い”ガドルたちは、どのように生まれたのでしょうか!?

「デカダンス」よりパイプ
「デカダンス」よりパイプ(C) DECA-DENCE PROJECT


――アニメのお仕事は「デカダンス」が初めてだと伺いました。

松浦 そうです。Pinterest(写真やイラストの共有サイト)というサイトで角木(卓哉)プロデューサーが僕の絵を見てくださったみたいで、そこからTwitterを経由して連絡をいただきました。それが1年以上前ですね。アニメの仕事は初めてでしたし、とても興味深い内容だったので即決しました。

――「デカダンス」のどんなところに惹かれたのでしょうか。

松浦 ガドルというモンスターの存在と、そのモチーフを深海生物にしてほしいという依頼ですね。結果的に深海生物っぽくないガドルも出てきましたが、動物を描くのが好きなのでこれは楽しそうだなと。

――以前のインタビューで、角木プロデューサーが「(ガドルは)かわいいの中に怖さがあるようなデザイン」を求めていたとおっしゃっていました。実際にそういったオーダーがあったのでしょうか。

松浦 自分はもともと、かわいいものとかっこいいもの、かわいいものと気持ち悪いものをミックスして絵を描くので、それを気に入っていただけたのかなと思います。基本的にはお任せいただいて、描いたものをチェックしていただくという流れでした。

ガドルの対比表
ガドルの対比表(C) DECA-DENCE PROJECT


――最初に描かれたガドルはなんでしょうか。

松浦 ユムシですね。最初に、ガドルはいくつかのタイプがあると伺ったんです。食肉タイプ、攻撃タイプ、防御タイプ。ほかには小型浮遊タイプと特殊タイプ、大型タイプという分類もあり、ユムシは食肉タイプのガドルとして描きました。ピンク色で気持ち悪いけれど、どこかおいしそう……という感じになったらいいなと。タンカーたちの食料になることは知っていたんですが、どんなふうに食べるかまでは知らなかったので、タンカーたちが普通に肉を切り取っているのを見て、結構、気持ち悪いんだなと思いました(笑)。

――ユムシの変形も松浦さんが考えられたのでしょうか。

松浦 変形のアイデアは立川監督ですね。2パターン提出したところ、立川監督から六本足のほうから二足歩行のほうに変形して攻撃させたいという確認の連絡がきました。

「デカダンス」よりユムシ
「デカダンス」よりユムシ(C) DECA-DENCE PROJECT


――攻撃タイプの代表的なガドルはどれになるのでしょうか。

松浦 トリピアスとダル・マモスですね。トリピアスは深海生物の要素が少ないんですが、攻撃タイプということでトゲトゲしたデザインにしました。ダル・マモスは「毛が生えたガドル」というオーダーがあり、深海生物には手足に毛を生やしたカニがいるので、それをイメージしています。

――では、防御タイプは?

松浦 セルハワーですね。これはダイオウグソクムシやダンゴムシをモチーフにしています。

――前半のクライマックスである第5話には大型ガドル・スターゲートが登場しました。ラスボスの風格すらあったガドルですが、こちらはどのようなイメージで?

松浦 腐ったガドルということで最初は「ニクズレガドル」と呼んでいて、当初からヒトデをモチーフに描こうと決めていました。顔や手足がヒトデの形になっているのはそういう理由からです。スターゲートという名前もスターフィッシュ(ヒトデの英語名)から取られたのかもしれないですね。膿のような膨らんだ部分を潰してバランスを崩させるという設定だったんですが、スケール感や質感をどうするか悩んでしまって。スターゲートに関しては何度も描き直した記憶があります。

「デカダンス」よりスターゲート
「デカダンス」よりスターゲート(C) DECA-DENCE PROJECT


――立川監督や角木プロデューサーから何か指示はあったのでしょうか?

松浦 スターゲートに関してもほかのガドルに関してもほとんどなかったですね。どちらかというと、アニメの仕事が初めてなので不慣れさから悩むことが多かったです。例えば、この部分は画面に映るのかとか、色味の指示をどうするかとか。ゲームだと肌の質感などについてストレートに要望をお伝えするんですが、アニメはどこまで指示すればいいのか、どこまで描き込めばいいのかわからなくて。細かすぎてアニメーターさんが「ふざけんな」と思ったらどうしようと(笑)、常に頭を悩ませながらの作業でした。

――第5話はスターゲートと霧ガドルという2体のボスクラスが登場しましたね。

松浦 1話の中で2体のボスを倒すのかと驚きました。前半で霧ガドルが倒され、後半のスターゲートも意外と退場が早くて(笑)。同じく大変だった第1話のダイランドも一瞬でしたからね。でも、その思い切りのよさが気持ちいいテンポ感に繋がっているのかなと思います。

――ダイランドのモチーフはなんでしょうか。

松浦 クジラをベースにしつつ、背中は貝の化石をイメージしました。

「デカダンス」よりダイランド
「デカダンス」よりダイランド (C) DECA-DENCE PROJECT


――パイプも松浦さんのデザインだそうですが、どんなアイデアから生まれたのでしょうか。

松浦 最初に「ペットのようなマスコットキャラクター」というオーダーがありました。とりあえずかわいい感じにしようかと思ったんですが、ただかわいいだけだとつまらないので、ちょっと気持ち悪さを足すことにして。そこで思い浮かんだのが、シロイルカでした。シロイルカって一見かわいいんですが、頭がぶよぶよしていて実はちょっと気持ち悪いんです。その“キモかわいさ”がベースになっています。

あとは犬っぽさもほしいとのことだったので、四本足だと普通だから六本足にして、後ろ足をセイウチのヒレのようにしました。頭から空気が出るのは立川監督のアイデアです。

「デカダンス」よりパイプ
「デカダンス」よりパイプ(C) DECA-DENCE PROJECT


――クジラが潮吹きするようなイメージですか。

松浦 ええ。もしかすると島根の水族館にいるベルーガ(シロイルカの別名)もイメージしていたのかもしれないですね。テレビで口からエンジェルリングと呼ばれる輪っか状の泡を出すベルーガを見たことがあって、そういうイメージなのかなと。

――パイプは表情豊かでかわいいですよね。

松浦 細かい表情付けはすべてアニメーターさんがやってくれているので、これはアニメーターさんのおかげです。喜多村英梨さんの演技もすごくかわいいですし、キモかわいい生き物をここまでかわいくしていただけて本当に嬉しいです。僕の子どもも「パイプ、かわいい!」と言って気に入っています(笑)。

「デカダンス」よりパイプ
「デカダンス」よりパイプ(C) DECA-DENCE PROJECT


「デカダンス」よりパイプ
「デカダンス」よりパイプ(C) DECA-DENCE PROJECT


――パイプに限らずですが、ご自身の描いた絵がアニメで動くのをご覧になってどんな感想をお持ちになりましたか。

松浦 鳥肌ものですね。ゲーム業界に入って20年ぐらい経ちますが、最初に作ったゲームで自分のキャラクターが動いているのを見たときと同じくらい感動しました。

――特にアニメになったことで愛着がわいたガドルはいますか。

松浦 一番はやっぱりパイプですね。かっこいいなと思ったのが、そのパイプを食べようとしたメガロアイン(第4話)。リュウグウノツカイやフクロウナギのような、牙が特徴的な深海生物をモチーフにしました。これもアニメーターさんが生き生きと描いてくれて感謝しています。

――物語の感想についても聞かせていただけますでしょうか。

松浦 物語についてはほとんど知らないまま作業をしていたので、毎回、新鮮な気持ちで観ています。ガドルがどのように登場するのかも楽しみですし、個人的にはサイボーグがかわいくて、「あのデザインいいなぁ」なんて思いながら楽しんでいます。

――特に気に入っているキャラクターは誰ですか?

松浦 カブラギですね。ゲームでもそうですが、若くてかっこいいイケメンキャラよりも、無精ひげを生やしたちょっと陰のあるおじさんに惹かれるんです。特にいいなと思ったのが、第5話ですね。ナツメをつれて霧ガドルから逃げようとしたときに、限界まで足掻きたいと言われて感情を高ぶらせますよね? 何かを諦めた男が、ふと熱い部分を見せる……。そんな姿にグッときました。

――今後、どんなガドルが登場するのか楽しみです。

松浦 まだ登場していない大型ガドルもいますし、どんな描かれ方をするのか僕も楽しみにしています。物語については皆さんと同じ目線で楽しんでいるので、後半戦も皆さんと一緒に楽しく観られたらいいなと思います。

【取材・文:岩倉大輔】

■TVアニメ「デカダンス」
放送:AT-X…毎週水曜23:30~
   TOKYO MX…毎週水曜25:05~
   テレビ愛知…毎週水曜26:35~
   KBS京都…毎週水曜25:05~
   サンテレビ…毎週水曜25:30~
   BS11…毎週木曜23:00~
配信:ABEMA…水曜24:00~ ※地上波先行・最速単独配信
   dアニメストア…毎週土曜24:30~

スタッフ:原作…DECA-DENCE PROJECT/監督…立川譲/構成・脚本…瀬古浩司/キャラクターデザイン・総作画監督…栗田新一/キャラクターコンセプトデザイン…pomodorosa/サイボーグデザイン…押山清高(スタジオドリアン)/デカダンスデザイン…シュウ浩嵩/ガドルデザイン…松浦聖/音楽…得田真裕/音響監督…郷文裕貴/アニメーション制作…NUT/製作…DECA-DENCE PROJECT
キャスト:カブラギ…小西克幸/ナツメ…楠木ともり/ミナト…鳥海浩輔/クレナイ…喜多村英梨/フェイ…柴田芽衣/リンメイ…青山吉能/フェンネル…竹内栄治/パイプ…???

リンク:TVアニメ「デカダンス」公式サイト
    公式Twitter・@decadence_anime

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