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「ニャッキ!」伊藤有壱監督と川村万梨阿が対談

NHK Eテレで放送されている「プチプチ・アニメ」で20年間「ニャッキ!」を作り続けてきた伊藤有壱監督と、「ニャッキ!」には欠かせない女の子“ピンク”と“フルール”を演じる川村万梨阿のニュータイプ本誌(5月号)対談から、掲載しきれなかったこぼれ話を公開!

――「ニャッキ!」では、川村さんへどのようにディレクションされるのでしょうか。

伊藤:まずアフレコ前に、絵を軽くつないだ仮編集のムービーをお渡しして、次に完成した映像だけのバージョンをお渡しして見ていただくんです。

川村:音は入っていないんですけど、ほぼできあがっている状態のフィルムと、絵コンテも見せていただくので、あとはそこに声を乗せていくだけの状態ですね。

伊藤:台本もないし、コンテのどこ見ても「ニャ」とか「ミ」とか描いていないんですけど、川村さんはそこをうまく拾ってくださいます。

川村:いえいえ、描いてあるに等しい感じなんですよ。その時その時の表情が、はっきりと絵にありますから。

伊藤:僕はアフレコではほとんど指示してないですね(笑)。

――川村さんは、「ニャッキ!」のアフレコ収録の際にもプランを綿密に組んで臨まれるとうかがいました。

川村:本当は勢いでできたらいいんですけど、タイミングを見誤っていたらどうしようと思って、絵コンテにタイムコードを書いておきます。でも、それにこだわらないで画面の表情を見ていた方が、思いもかけない演技ができるときもあるんですよ。そもそも収録が年に一本くらいなので、前回把握した声のトーンを忘れてしまうことがあります(笑)。それを戻すのに、一番時間がかかりますね。

伊藤:川村さんには、ニャッキのガールフレンドみたいな女の子“ピンク”と憧れのお姉さん“フルール”のふたつをやってもらっているんですけど、見事に演じ分けていらっしゃいますね。

川村:見た目がぜんぜん違うので、“フルール”はフランス人で、“ピンク”はアメリカ人、私の頭の中ではそういうふうになってるんです(笑)。

伊藤:ちなみにフルールは、フランス語で「花」という意味なんですよね。ですので、“フランス”というキーワードは「まさに」なんです。お伝えしてないのに、感じ取る感性はさすがだなと、びっくりしています。

川村:私の中でフルールは、ジジ・ジャンメールというフランスのバレリーナのイメージなんです。演じる時は低め、鼻にかかった感じでゆっくりとやってます。

伊藤:その声にエフェクトがかかると、すごくキュートになるわけですよ。演じる方の気持ちとか感覚とか経験値とかボキャブラリーが、声として反映されている。だから、声が入ることで意外性というか発見があるんでしょうね。

――伊藤監督の最新作「Blue Eyes -in HARBOR TALE-」で川村さんが演じられたビスクドールは、どんな人形なんでしょうか。

伊藤:口も動かない本当の人形に、百何十年後か経って命が宿る。そこからさらに30年ぐらい生きてきた感じの女性、というむずかしい設定です。言葉で注文するのは簡単なのですが、「大人で華もあって、生身の人間より長い長い時間を見てきた」というような声を見事に演じていただきました。横浜をモデルにした港町が舞台のお話ですが、そういう古い物に命が宿ったらどんな人生を辿るのかな、というのがもうひとつのテーマなんです。

川村:ビスクドールは憧れの人形ですよね。お話をいただいた時にフィルムも見せていただいたんですけど、かわいいだけじゃない、気の遠くなるような長い時間を過ごしてきて、苦い思いもしている。そういうところまで表現させていただけるんだなあってうれしかったです。

――現在WebNTでは「Mr.ブリック Mr.Brick in HARBOR TALE」という描き下ろし漫画を連載していただいています。

伊藤:アニメで描ききれなかったエピソードや展開というのをこの先たくさん描いていきます。ビスクドールも出ますので、もしモーションコミックとかになる際にはご相談させてください(笑)。

川村:はい、こちらこそ!【記事=WebNewtype】

伊藤有壱監督が描くコミック「Mr.ブリック in ハーバーテイル」https://webnewtype.com/comic/harbortale/

取材・文=細川洋平

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