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設立5周年を迎えたTRIGGERが制作するテレビアニメ「宇宙パトロールルル子」。WebNewtypeでは連載企画としてキャストやスタッフの方々に登場してもらい、さまざまな角度からその魅力に迫っています。
クリエイティブディレクターの若林広海さんと、オープニング主題歌を担当しているフジロッ久(仮)の藤原亮さん(Vo)、高橋元希さん(パッションモンスター)が登場した連載第4回。後編では、オープニング曲「CRYまっくすド平日」ができるまでと本編について、3人に語り合ってもらいました。
――オープニング主題歌を作るに当たっては、どのような話し合いがあったのでしょうか?
藤原:ショートアニメなので30秒の曲が欲しいと言われました。手がかりとして渡されたA4の紙1枚に「ルル子」のプロットがぎっしり書いてあって、「OGIKUBO」「宇宙犯罪」「宇宙万引き」といった単語が並んでいて(笑)。
若林:普通の人が見たら何が書いてあるのかわからない、情報過剰な紙を渡したはずなんですけど、藤原さんはすごい読解力で僕らが狙っているものをポンと投げ返してくれて。「これは外さないだろうな」と直感しました。
藤原:僕らも情報をいっぱい詰めこんであるような音楽だし、ノリの近さは感じました。「これならできるかも知れない」と。でも、今石監督や雨宮さん、プロデューサーの宇佐(義大)さんと若林さんの4人がいる時に「具体的じゃなくていいんですけど、どんな曲だと嬉しいというのはありますか?」と聞いたんです。そしたら、それぞれバラバラに言うんですよね、30秒に入れるには多すぎる情報を(笑)。例えば若林さんは「最後エモくて感動するやつ」とか、宇佐さんは「スペース感があるといいですね!」とか(笑)。何鍋かはわからないけどうまい鍋を作ってほしいんだな、ということだけ持って帰りました。
――曲作りはスムーズに行ったのでしょうか。
藤原:完パケまで2か月しかなかったのと、やっぱり30秒というところで試行錯誤しましたね。世の中にある30秒の曲というのは、ウルトラスーパーアニメタイムや「パンスト」のオープニングとかもそうですけど、一節のメロディだけだったり、展開がないんです。その尺の中にイントロ・Aメロ・Bメロ・サビ・アウトロというように展開しようと思うと、どう頑張っても45秒かかる。サビだけの展開を感じる27秒ができた時は思わず叫びました。
高橋:しかも「まだ2秒あるよ!」って言って2ビートを入れたんですよね。
藤原:無駄をカットしていくと30秒でこんなにいい曲ができるんだとわかりましたし、CMソングじゃなく歌もので、ずっと情景が変わり続ける曲は他にはないかも知れない、もしかしたら初めてなんじゃないかなって思います。
若林:30秒にいろんな展開を盛り込むというのは、「ルル子」自体のストーリーともマッチしているし、自分が思っていた以上の曲が来たので感動しましたね。
――まさに「ルル子」にピッタリの曲ですよね。
藤原:そう思っていただけるのであれば、「いい仕事したな俺たち!」って思います。
高橋:もちろん今までも自信を持って活動してきたけど、今回はちゃんとそれが形になって評価してもらえたので、大きな自信に繋がりましたね。
藤原:オープニングを4回変えるというネタも含めてオンエア後の反応が楽しみだったんですけど、アニメファンにも楽しんでもらえてるみたいでよかったです。
――音源としては先日CDがリリースされました。聞きどころも教えていただけますか?
高橋:まず、正しい歌詞が明らかになります(笑)。
藤原:そうですね。あとは曲の展開も「ルル子」のシーズンの進行と同じように流れているので、毎回オープニングも一緒に「ルル子」を愛してくださっている方にはすごく楽しめると思います。あと、最後にドラムが激しくなっているところでは「宇宙パトロールルル子!」って言ってます。絶対聞き取れないんですけど(笑)。
――思わぬ真実ですね(笑)。本編の感想もうかがいたいのですが、フジロッ久(仮)のお二人は印象に残っている回はありますか?
藤原:2話ですね。ルル子がノヴァくんに惚れる演出を見た時には「やられた、とんでもないものを見てる!」って興奮しました。
高橋:僕もやっぱり2話は印象に残ってますね。
――ルル子とノヴァくんの恋物語(?)のはじまりのシーンですね。
藤原:ノヴァくんって全然喋らないし、感情移入させないくらい孤高の存在だったりするので、それに惚れてるルル子も「何考えてんだ、この子」みたいになってて。だから最初は「よくこの2人の物語をやろうと決めたな」と思いましたね(笑)。でも見ていると、ハチャメチャな展開の中にハッとさせられる二人のシーンがあって、しかもそのシーンは鳥肌が立ってしまうくらい感動する。そのままエンディングテーマが流れたりすると、もうたまんないですね。
高橋:ノヴァくんはまったく語らないことで逆に「こうなんじゃないか」ってこちら側が考えさせられますよね。それに、誰かを好きになる瞬間って実はあんまり理由がなかったり自分でもよくわからなかったりする。だから「ルル子」では壮大な、初恋に至る過程を見せられているような気になります。フジロッ久(仮)のラブソングも、言っちゃえば「君が好き!」ってだけなんですけど、そこを紐解いて言葉にしていくと「人生とは」「生きるとは」みたいなことに繋がっていくんです。「ルル子」も、少女の初恋が宇宙の創造に繋がる、という話にも置き換えられるくらい壮大な話になっていて、シンパシーをすごく感じます。
若林:うれしいですね。「ルル子」の根底には中学生時代の初恋感というか「気づいたらあの子が気になってた」みたいな微妙な恋心とか気持ちの揺れみたいなものを自分たちなりに描こう、と企画当初話していたんです。それに個人的に勝手に言いふらしているんですが(笑)、今作は「パンスト」「SVM」に続く今石監督恋愛3部作の完結編にして一番”純”な作品になったと思うので、そのあたりも期待してもらえたらと思います。
――ありがとうございます。ラスト2話となりましたが、今後の見どころを教えてください。
若林:ついに「キズナ」チームも合流してTRIGGERの社内外含めた強力な援軍総動員でお送りする12話、13話。今石監督作品なりの「普通のクライマックス」、ぜひ楽しみにして頂ければと思います!最後の最後まで見てね!【取材・文=細川洋平】