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押井守監督がProduction I.G社内向けに開いた企画者養成講座「押井塾」。その中から産み落とされた「BLOOD THE LAST VAMPIRE」はやがてTVシリーズ「BLOOD+」、「BLOOD-C」へと展開していきます。シリーズを結びつけるキーワードは「日本刀で戦う少女・小夜」。「BLOOD」シリーズの最新作「BLOOD-C」はクリエイター集団CLAMPとの共同原作ということもあり、さまざまな反響を呼びました。メディア展開も活発化し、劇場アニメ化、2.5次元での舞台化が実現。そして今回、全く新しい息吹を吹き込まれた実写映画が完成しました。
映画「阿修羅少女(ASURA GIRL・アシュラガール) ~BLOOD-C異聞~」には「BLOOD」シリーズ立ち上げから全作品に携わっている藤咲淳一(脚本)さん、舞台「BLOOD-C The LAST MIND」や舞台「攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE」で演出を手がけた奥秀太郎(監督)さんが続投。また、多くのキャスト陣が舞台版「BLOOD-C」から引き続いて主要人物を演じています。しかし、“異聞”とサブタイトルにあるように、時代設定や作品舞台は”特高警察が暗躍する戦前の日本”と全面的に刷新されました。
<山奥の寒村に暮らす主人公・蘭は血の病の冒され診療所に入院している。懸命に介抱しているのはたった一人の身寄りで弟の蓮(松村龍之介)。ある日、小夜はその村に危険な気配を察し姿を現すが――>
本作で主演・蘭を務めるのは青野楓さん。舞台版「BLOOD-C」では同じく蘭を、舞台版「攻殻機動隊ARISE」では草薙素子役を務めた注目の若手女優です。藤咲さんや奥監督からの信頼も厚い青野さんに、この作品の魅力をうかがいました。
――舞台版「BLOOD-C」で蘭を演じた流れで、今度は主演として映画で蘭を演じる事となりました。映画化の知らせを聞いた時はいかがでしたか?
青野:舞台の「攻殻」が終わったくらいにうかがったのですが、最初は「あ、やるんだ」という感じで聞いていたんです。でも私が主演というお話を聞いて「どういう意味なんだろう」って思いましたね(笑)。舞台は小夜(宮原華音)が主人公だったのに、「役もそのまま」と聞いて本当に意味が分からなかったんです(笑)。
――「BLOOD」シリーズといえば小夜ですから確かに戸惑うかも知れません。脚本を読んだときはどんな感想を抱きましたか?
青野:藤咲さんって元々アニメのシナリオを書かれている方だし、脚本にはすごいアクションやグロテスクなことも書いてあったので、パッとアニメを想像してしまって「どうやって実写化するんだろう……」と(笑)。私が演じる蘭も、舞台版で演じた役と同名ですが、役柄がぜんぜん違ったので、お会いした時に直接いろいろ伺って「ぜんぜん違う役として自由にやっていい」と言っていただきました。ただ見方としては、いろんな見方ができると思うので、映画と舞台版を見比べていただいたり、繋がりを想像していただいてもいいのかなと思います。この作品が「BLOOD」シリーズ全体に触れるきっかけになればいいなと思います。
――そもそもアニメ版「BLOOD-C」はどんな印象でしたか?
青野:元々アニメといえば「ドラえもん」を昔見ていたくらいだったのですが、舞台をきっかけに見るようになって、それこそ「攻殻機動隊」も全部見て、今のアニメってすごくおもしろいんだなと思いました。「BLOOD-C」で言うと小夜の抱える悩みや、彼女が探しているものが今回の蘭と似ているんじゃないかと思っています。
――「BLOOD-C」の小夜は悲劇的な人生を歩んでいる印象がありますが、今回の蘭も同じと感じたのですね。蘭は病床にあるはかなげな女性としてまず描かれています。
青野:そうですね。両親もいなく、弟と二人姉弟。でもすごく簡単な言葉で言ったら被害者というか、いろんな辛い目に遭っているという役柄です。
――弟の蓮を演じた松村さんとのやりとりはいかがでしたか?
青野:彼と一緒にやるのは3作目で、最初に共演した舞台「BLOOD-C」では敵対する役だったんです。それが今回いきなり身内、しかも精神的に深いところまで踏み込む役。距離感をうまく作れるか不安でしたが、素の感覚がお互いに近いことは舞台の時から分かっていたので、とても自然に深い演技ができたなと思います。舞台の頃から松村くんと小夜役の(宮原)華音ちゃん、陽(ハル)役の石渡真修くんは同世代で、家族のように接していたんです。その信頼感が今回にまで活かせました。特に小夜との殺陣。お互い「(攻撃が自分に)当たってもいいや、むしろ燃える!」というくらい思いっきりやれて本当にたのしかったです。
――長回しの殺陣は大きな見どころです。
青野:はい、泥だらけになりながらやりました(笑)。段取り上無理でしたが、最初は殺陣のシーン全てを長回し(1カット)でやろうとしたくらい最小限のカット割りでやっています。役を演じた上でのアクションには苦労しました。私は空手をやっていて、きれいに蹴るのが特技なんですけど、蘭が蹴る場合、崩れた姿勢になる方がリアルなんです。それを意識的にやるのは本当に難しかったですね。
――奥監督はどんな方なのでしょうか。
青野:天才ですね。頭の中に完成図ができているけどそれを細かく伝えてはくれない。オーダーもあまりないんです。でも完成図は私の想像を超えているものなので、とにかく奥監督の出す「OK」を信じてやっていきました。
――ついに公開となりましたが、今どんなお気持ちですか?
青野:まだ私自身客観的に見られていないのですが、みなさんがどう感じるのかはとても気になります!舞台はその場でリアクションが返ってくるけど映像は本当に分からなくて。海外配給もあるので、国によっても違うと思いますし。ただ、作品全体には奥監督の世界観や、奥監督をはじめ才能溢れたスタッフが作り上げた「BLOOD」の世界が見られます。ぜひ一人でも多くの人に見てもらいたいと思っています!
【取材・細川洋平、撮影・奥西淳二】
【青野楓 プロフィール】
あおの・かえで/11月21日生まれ、兵庫県出身、O型。空手初段の持ち主で、特技はハイキックと利き海苔とソフトボール。TV、舞台を中心に活躍中。