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TVアニメ「かげきしょうじょ‼」監督・米田和弘×シリーズ構成・森下直対談【前編】 「この作品を書けるのは森下さんしかいない」

間もなくスタートするTVアニメ「かげきしょうじょ!!」。華やかな舞台で活躍するスターをめざす少女たちを描く本作のメインスタッフである、監督の米田和弘さんとシリーズ構成の森下 直さんの対談を前後編でお届けします!

――森下さんと監督・シリーズ構成としては初タッグですね。お願いしようと考えたのは、なぜですか?

米田 森下さんが2008年にNHKで手がけた「フルスイング」というドラマにとても感銘を受けたからです。放送当時、演出になって5年目くらいで、シナリオの重要性を強く意識するようになって、シナリオ集を読んだり、自分でもいろいろと勉強をしてみていました。そんなときにそのドラマの第1話を見て、ありえないくらい号泣してしまったんです。すぐにシナリオを書いた方の名前をチェックして、監督になったら絶対にこの人と仕事すると決めました。それで初監督作の「暁のヨナ」のとき、プロデューサーにわがままを言って、全然面識がなかったんですけど直接お願いをしにいって、3話分だけ森下さんにシナリオを書いていただいた。遡ると、それがきっかけですね。

――「フルスイング」のどんなところが、そこまで監督の心に響いたのでしょう?

米田 実話をベースにした話なんですけれど、「こんなに登場人物の心の機微に寄り添ったシナリオを書ける人がいるんだ」と感じました。その印象があったから、「かげきしょうじょ!!」でシリーズ構成をお願いしようと思ったんです。この作品は深い闇というか、いろいろな事情を背負った登場人物が多い作品なので、これを書けるのは森下さんしかいないと。

――森下さんは、今作のオファーをいただいたとき、いかがでした?

森下 アニメのシナリオは、今お話にあった「暁のヨナ」と「名探偵コナン」を何話かのみで、ほぼ書いたことがなかったんです。だから、本当にお恥ずかしいのですが、「シリーズ構成をお願いしたい」とお聞きしたときに、どんな仕事をするのかすら知らなくて……(笑)。実写の作品でいうところのチーフライターのような役職で、「暁のヨナ」のときに猪爪慎一さんがやられていた仕事であると説明を受けて、緊張しつつ、やらせていただくことに。監督にご指名をいただいたものですし、「暁のヨナ」のときにすごく誠実につくってらっしゃったのと、何も知らない私を一生懸命サポートしてくださったのを覚えていましたし。いいご縁をいただきました。

――では、そこから具体的なシリーズ構成は、どのように組んで行ったのでしょうか?

森下 まず、これはアニメでも実写でも関係なくやることですが、原作ものの脚本を書く前には、全てのシーンを全部書き出すんです。この作品でも、米田監督の「このエピソードまでは今回アニメ化したい」みたいな要望を受けて、その区切りのところまで全部のシーンをゼロから書き起こして、それを読みながらどうエピソードを区切っていくと、次回までの引きも含めて一番おもしろくなるのかを考えていきました。

――原作のエピソードの取捨選択を行う上では、どこがポイントだと考えておられましたか?

森下 全体の流れでいうと、最初は間違いなくさらさと愛を中心に話を進めようと思いました。そうしつつも、他の生徒たちや先生たちのキャラクターやバックグラウンドがじわっとわかるようにする。そのあと、別の生徒たちのエピソードに入っていくのですが、主役になったキャラクターの話が終わると、その子の話がストンと切れるんじゃなくて、誰かが主役になる回の伏線になる。原作はそうした非常に重層的な構成になっていて、そこも大きな魅力だと思ったので、アニメのシリーズ構成でもその重層的な要素を大事に壊さないように心がけました。くわえて青春群像をただ描くだけではなくて、彼女たちは舞台をめざす人たちなのだから、その部分をきっちり大事に置くことも意識しました。そうした軸に絡まないエピソードにもいいものがたくさんあって、泣く泣く削ったものもあります。スピンオフ的なエピソードは、本編には何とかギリギリ一本だけ入れられた感じですね……。

米田 原作を読んじゃうと、どうしても欲張りたくなってしまうんですけど、エピソードの区切りの良いところまではアニメ化したいというのが大前提であったので、どうしても学校生活のエピソードが中心にはなりました。ただ、森下さんにエピソードの取捨選択は基本お任せしていたんですが、僕の大好きなスピンオフのエピソードが一本、何も伝えてないのに構成に入っていたんですよ。あれはうれしくて、見たときに「よっしゃ!」と思いました(笑)。

【取材・文:前田久】

■TVアニメ「かげきしょうじょ!!」
放送:AT-X… 7月3日より毎週土曜 24:00~
TOKYO MX…7月3日より毎週土曜25:00~
BS11…7月3日より毎週土曜25:00~
HTB…7月7日26:00〜 ※編成の都合により放送時間変更。以降、毎週水曜25:50~

配信:ABEMA…7月3日より毎週土曜25:00~
dアニメストア…7月3日より毎週土曜25:00~

スタッフ:原作…「かげきしょうじょ!!」 斉木久美子(白泉社『メロディ』連載)/監督…米田和弘/シリーズ構成…森下 直/キャラクターデザイン…岸田隆宏/サブキャラクターデザイン…飯田恵理子、髙田 晃、牧 孝雄/プロップデザイン…古賀美裕紀/総作画監督…今岡 大、髙田 晃、福永智子、牧 孝雄/美術設定・美術監督…谷川広倫/色彩設計…坂上康治/撮影監督…浅黄康裕/編集…今井大介/音響監督…長崎行男/音楽…斉藤恒芳/音楽制作…キングレコード/制作…PINE JAM

キャスト:渡辺さらさ…千本木彩花/奈良田 愛…花守ゆみり/杉本紗和…上坂すみれ/星野 薫…大地 葉/山田彩子…佐々木李子/沢田千夏…松田利冴/沢田千秋…松田颯水/野島 聖…花澤香菜/中山リサ…小松未可子/竹井朋美…寺崎裕香/安道 守…諏訪部順一/奈良田太一…野島健児/里美 星…七海ひろき/白川暁也…高梨謙吾/白川煌三郎…子安武人

リンク:「かげきしょうじょ!!」公式サイト
    公式Twitter・@kageki_anime
    公式Instagram

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