アニメ

美しい旋律が会場を包んだ「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」レポート

8月14日、『竜とそばかすの姫』公開1周年を記念して、東京国際フォーラムにて「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」が開催されました。細田守監督がこれまでに手がけてきた『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』『竜とそばかすの姫』の6作品を、迫力のオーケストラサウンドとともに楽しむという、オムニバス形式のこのコンサート。大勢のファンが詰めかけ、満員御礼となったこの公演の模様をリポートします。

まず最初のブロックは『バケモノの子』。客席のライトがゆっくり消えると、東京フィルハーモニー交響楽団のメンバー、そして指揮者の栗田博文がステージに登場。ファンファーレとともに、会場に「お前ら、本当に困ったヤツらだな。だがどうしても知りたいなら、俺たちが話してやるから」という多々良のセリフが流れ、映画の冒頭を飾った曲「祝祭」からコンサートが始まります。続いて、重厚な弦のアンサンブルが緊迫感を醸し出す「三千世界の迷い子」、主人公・九太と熊徹の賑やかな日常をハンドクラップが柔らかに彩る「充たされた子ども」、ノスタルジックなハープの音色から始まり、高揚感あふれる展開を迎える「胸の剣」が演奏され、観客は一気に細田ワールドに引き込まれていきます。

次の『おおかみこどもの雨と雪』のブロックでは、ゲスト・ヴォーカルのアン・サリーと本作の音楽を担当した高木正勝がステージへ。まるで子守唄のように優しい歌声が会場を包み込む「ほしぼしのはら」と、映画を観た人なら忘れられない主題歌「おかあさんの唄」の2曲を演奏。また、主人公の花、そして雨と雪の姉弟が雪原を駆け抜けていく場面に合わせて演奏された「きときと-四本足の踊り」では、ピアノのキラキラとして響きが会場いっぱいに広がり、続く「雨上がりの家」ではクラリネットとピアノのアンサンブルが、大自然の中で営まれる花たちの時間を演出。雄大な自然の風景とともに、映画を観たときの感動が思い出されるようです。

そこから一転、ピッピッと刻む電子音とともに幕を開けたのは、第1部のラストにあたる『サマーウォーズ』のブロック。愛らしいエレクトロ・サウンドとオーケストラの厚みのある音響が重なって、『サマーウォーズ』ならではのユニークな音世界が広がっていきます。バイオリンのピチカートとピアノが絡み合いながら、次第に大きなスケールへと発展していく「栄の活躍」を経て、美しいコーラスが印象的な「1億5千万の奇跡」では、『サマーウォーズ』のクライマックスシーンを模した仕掛けも。最後には、映画のテーマ曲ともいえる「The Summer Wars」が演奏され、第1部は幕を閉じました。

そこから短い休憩を挟みつつ、第2部は『未来のミライ』からスタート。まずは映画のオープニングに使用された「ミライのテーマ」をインストゥルメンタル・バージョンで。そこから本作の音楽を担当した高木が再び演奏に加わり、軽やかなピアノの音色に心躍る「Trans Train」、静かな弦の響きがノスタルジックな情景を彩りながら、後半ではラテンのリズムが力強く高揚感を演出する「Marginalia Song」、そして感動的な「Of Angel」へ。高木のピアノが繰り出す深く優しい響きに包まれて、まるで夢のような時間が広がっていきます。

続くブロックは、細田守監督の名前を世に知らしめた傑作『時をかける少女』。電子音の響きとともに、スクリーンには赤く点滅するタイムコードが映し出され、そこからオープニングへ。バイオリンのピチカートとともに真琴たちの賑やかな日々を描く「スケッチ」、ゆったりとした弦の響きが印象的な「少女の不安」、そして来るべき変化の予兆を感じさせる「からくり時計~タイムリープ」。大画面に投影された名場面の数々は、公開されて15年経った今でも、この映画が忘れられないマスターピースになっていることを感じさせてくれます。

そしてステージにはもうひとりのゲスト・ヴォーカル、奥華子が登場して、演奏されたのは挿入歌の「変わらないもの」。夏の日の切ない恋心を歌ったこの曲は、まさに今のシチュエーションにぴったり。「僕は今すぐ君に遭いたい」という歌詞は、大切な人を想う気持ちを思い出させてくれます。
そんな落ち着いた雰囲気から一転、最後のブロックは、細田監督の最新作となる『竜とそばかすの姫』。トライバルなリズムに導かれて、映画のイメージを決定づけた「U」に続いて、主人公・すずの秘めた思いが明かされる「歌よ」、竜とベルの華麗なダンスも印象的な「竜の城」と、名曲が次々と披露されていきます。そして最後に、ネットワークの住人たちによる大合唱も強い印象を残した「はなればなれの君へ」が演奏されると、観客の興奮もピークへ。会場のすべてが一体化したような、そんな高揚感に包まれます。

湧き上がる拍手に応え、続くアンコールパートでは、まず『サマーウォーズ』から映画のオープニングを彩った「Overture of the Summer Wars」を披露。華やかなファンファーレに続いて繰り出される、疾走感あふれるメロディが会場を明るく盛り上げたあとは、再びステージに奥華子が登場。『時をかける少女』の主題歌「ガーネット」を切なく歌い上げて、2時間、全30曲におよぶコンサートを締めくくりました。
大スクリーンに映し出される映像とともに、迫力のオーケストラサウンドをたっぷりと堪能できたこの「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」。心に残る「夏」の名シーンをいくつもスクリーン上に描き出してきた細田監督だけあって、ファンにとっては忘れられない夏の一夜になったのではないでしょうか。

「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」は、8月28日(日)までローチケ、ステージクラウド、日テレゼロチケにてアーカイブ配信中。チケットその他は下記情報および公式サイトをご確認ください。

【取材・文:宮昌太朗】

「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」
アーカイブ配信期間:8月28日(日)23:59まで
視聴チケット料金:3000円(税込)
※配信プラットフォームにより、お客様手数料がかかる場合がございます。
視聴チケット販売期間:8月28日(日)18:00まで
配信地域:全世界(一部地域を除く)

※チケットのご購入前に、各配信プラットフォームのサイトに記載の注意事項をよくお読み戴き、動画視聴に適したインターネット環境・推奨環境をお持ちかどうか必ずご確認ください。
※チケットご購入後は、配信延期・中止以外の理由に伴うキャンセル・変更・払い戻しはできません。
※インターネット回線やシステム上のトラブルにより、映像や音声の乱れ、一時中断・途中終了の可能性がございます。その場合もチケット代の払い戻しは致しかねますことを予めご了承ください。
※お客様のインターネット環境、視聴環境に伴う不具合に関しては、主催者は責任を負いかねます。
※本映像の一切の権利は主催者が有します。カメラ・スマートフォンなどによる画面録画・撮影・録音は全て禁止いたします。
※視聴方法、チケット購入に関するご不明点は、各配信プラットフォームへお問い合わせください。
※ご購入の際、チケット代金の他に、システム利用料、各種手数料がかかります。

リンク:「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」公式サイト
    スタジオ地図公式Twitter・@studio_chizu

この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2024年5月号
月刊ニュータイプ
2024年5月号
2024年04月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype
  • HOME /
  • レポート /
  • アニメ /
  • 美しい旋律が会場を包んだ「スタジオ地図 シネマティックオーケストラ2022」レポート /