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22/7「曇り空の向こうは晴れている」MV 山﨑雄太監督インタビュー

新メンバーが加入し、14人体制では初となる9thシングル「曇り空の向こうは晴れている」が発売中のアイドルグループ「22/7」(ナナブンノニジュウニ)。楽曲発売日同日からYoutubeで公開されているミュージックビデオ(MV)は、全編アニメーション仕様。22/7のキャラクターPV「あの日の彼女たち」にも参加していた山﨑雄太さんが監督を務め、キャラクターデザイン・作画監督を堀口悠紀子さん、アニメーション制作をCloverWorksが担当しています。

22/7「曇り空の向こうは晴れている」MV 山﨑雄太監督インタビュー
22/7「曇り空の向こうは晴れている」MV 山﨑雄太監督インタビュー(C)22/7 PROJECT

たちこめる雲の向こうの晴れた空、また、そのさらに向こうに広がる宇宙という、無限の可能性をも感じさせる〝未来〟との遭遇――。新たな世界へと駆け出す彼女たち、そしてそれを見守るファンへ届けたかった思いとは? 山﨑監督にお話を聞きました。

――監督を担われた経緯からうかがわせてください。
山﨑「あの日の彼女たち」で制作進行だった、CloverWorksの梅原(翔太)さんに声を掛けていただいたんです。メンバー編成が大きく変わる節目にあって、堀口悠紀子さんが梅原さんに直接「協力してほしい」と頼まれたと聞いて、「自分で力になれることがあるのなら」と。多少でもナナニジにかかわった人間として消化不良というか、ちょっとしこりが残っちゃってるような感じもあったので。

22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより
22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより(C)22/7 PROJECT

――「あの日の彼女たち」で、やり残したことがあったということですか?
山﨑 僕がどうこうできる話でもないのですが、あとから配役が決まった3人の「あの日の彼女たち」が作られていなかったことです。その中でも神木みかみ役の涼花萌さんは活動を続けられていたので、今回のMVで何かしら埋め合わせができないかな、と。初期案として、みかみの回想でパラレル22/7史を振り返るようなストーリーの構想もあったんですよ。形こそ変わりましたが、キーマンの立ち位置にあることは踏襲されています。

――制作はどのように進められましたか?
山﨑 当初は歌詞がなかったので、曲の印象を手がかりに作り始めました。抽象的な表現ではなく、ストーリー仕立てにしたのも、少しずつ変化していくドラマチックな構成に合わせて映像も盛り上がっていくような仕掛けが必要だと思ったからです。

22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより
22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより(C)22/7 PROJECT

 

22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより
22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより(C)22/7 PROJECT

――映画を撮影するキャラクターたちを軸とし、さまざまな考察を呼ぶ構造のストーリーですが、その着想はどこから得られたのでしょうか?
山﨑 レゴブロックみたいに、見た人がそれぞれストーリーを組み立ててもらえればと。正解は自分の中にもひとつありますが、そこはレゴなので、パッケージと違うものを作るのも自由と思ってます(笑)。今回は最初に「いつ誰が卒業して、ブログに何を書いていた」とか、ファンがこの2年間に何を感じたのだろうか、というようなことを年表にまとめて、そこからストーリーを考え始めているので、ナナニジの現在の状況をメタフィクション的に俯瞰した内容にもなっているんです。なので、このMVの解釈がファンの方それぞれの思いの合わせ鏡になっている、という面もあるかもしれません。「ナナニジファンにエールを送りたい」というのは自分の中で大きな軸のひとつでした。

22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより
22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより(C)22/7 PROJECT

――「あの日の彼女たち」day06で丸山あかねと河野都が取ったUFOキャッチャーのぬいぐるみが登場したり、過去のMVでも舞台となった渋谷が描かれたりするなど、ファンに寄り添った要素の数々からもその思いが伝わってきます。
山﨑 グループが大きな変革を迎えると、「過去と現在が断絶されてしまうのではないか」とか、「何か大事なものが上書きされてしまうのではないか」みたいな不安を覚えるファンの方もいらっしゃると思うのですが、そうではなく「つながっているんだよ」と示すことがこのMVの目的でもありました。ぬいぐるみを置いたのは、該当シーンを担当したRaruruさんというアニメーターの方のアイデアで、実はナナニジのファンでもあるんですよ。渋谷を使ったのもたまたまで、「作り物のセットと対極にある、現実の開かれた場所」くらいのイメージだったのですが、そこに「割り切れないラジオ」の看板が掲げられたことで僕の考えていた以上の意味が込められました。いろんなセクションの方のアイデアが入って、より作品がファンの思いに寄り添うものになっていったと思います。

22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより
22/7「曇り空の向こうは晴れている」Music Videoより(C)22/7 PROJECT

――手応えを感じたシーンを教えてください。
山﨑 廊下を走るスローモーションの場面は、「バラバラの個性をもったキャラクターたちが、全員同じところをめざして、ひとつになっている」という、このMVでいちばん最初に浮かんだ画なのですが、「ドラゴンボール」のコミックスの背表紙みたいな雰囲気にしたかったんですよ。敵も味方もいろんな種族がいっしょになっていて、なんかシュールだけど多幸感がある、というか。横並びのオールスター感も含めてナナニジにうまくハマった気がします。景色が後ろに流れていくことで、彼女たちといっしょに世界も動き出すようなイメージが作れたらいいなとも思っていました。あと、地味だけど好きなのが2番で叶愛が階段を駆け上がってきて「関係者以外立入禁止」の立板が映るところです。バラまいたヒントのひとつですが、いろいろと想像して楽しんでもらえれば。UFOが飛び立つシーンが曲中の決めのセリフにうまくハマったのは、ガッツポーズでしたね(笑)。見てくださった方の解釈も加わって、当初の想定からいちばん飛躍した場面かもしれません。
 

プロフィール

●やまざき・ゆうた/演出家。1983年生まれ。千葉県出身。22/7のキャラクターPV「あの日の彼女たち」の「day6 丸山あかね」「day8 藤間桜」で絵コンテ・演出を担当。TVアニメ「ワンダーエッグ・プライオリティ」(若林信監督)には副監督として参加している。
 

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9月9日(金)発売のアニメ誌・月刊ニュータイプ10月号(KADOKAWA)では、本インタビューのロングバージョンを掲載しています。また、22/7のキャラクターたちをフィーチャーしたオリジナルショートストーリーも収録(新メンバーのキャラクターが初登場!)。イラストを描き下ろしているのは、もちろん堀口悠紀子さんです。あわせてお楽しみください。

【取材・文:キツカワトモ】

■「曇り空の向こうは晴れている」Music Video
●22/7 OFFICIAL YouTube CHANNELで公開中

リンク:22/7 OFFICIAL YouTube CHANNEL
    22/7(ナナブンノニジュウニ)公式サイト
    22/7(ナナブンノニジュウニ)公式Twitter・@227_staff

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