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林原めぐみ史上最“恐”ソング完成!? ニューシングル「集結の果てに」発売記念インタビュー

林原めぐみ史上最“恐”ソング完成!? ニューシングル「集結の果てに」発売記念インタビュー
林原めぐみ史上最“恐”ソング完成!? ニューシングル「集結の果てに」発売記念インタビュー

林原めぐみさんの新譜「集結の果てに」が発売中! 「Pゴジラ対エヴァンゲリオン G細胞覚醒」のテーマソングとなっている本作は、本人曰く「強強(つよつよ)ソング」とのこと。果たしてどんな経緯で生まれたのでしょうか。そしてジャケットからもにじみ出る「強強ビジュアル」についても伺いました。

林原めぐみさん 近影
林原めぐみさん 近影

――シングルのジャケットの写真、めっちゃカッコいいですね。
林原 ありがとうございます。今回はジャケットも、楽曲も、林原めぐみ史上最“恐”という結果になりました。(笑)まず、衣装で「ゴジラとエヴァ初号機とキングギドラを着る」と決めて、そこからそれぞれを象徴するアイテムやデザインを考えて。やっぱり、私自身が初号機みたいなものだったこともあり(笑)、女性らしさ、どこか柔らかいイメージを持たせたかったんです。で、シフォン系の柔らかなスカートで下から支えて、上から、ゴジラとキングギドラのイメージの衣装で固める。GODZILLAではなくゴジラとして、和風を意識して、黒い帯で、キングギドラは金の三つ首をイメージしたアクセサリー。アクセサリーは衣装さんのアイデアで、「三つ首竜のイメージだったら、首と両手首に金をつけませんか?」って提案されたときは、さすがだなって思いました。

――プロの仕事ですね。
林原 さらにそこに赤と青のイメージの背景を重ねる。この2色にはいろいろなものを込めているので、見た方がそれぞれに想像してみてくれたらうれしいですね。そして、それだけのものを身にまといながら、ゴジラの味方でもないし、初号機の、人類の味方でもないし、ましてや今回は使徒として登場するキングギドラの味方でもない。かといって戦いを面白がり、三者の魂を食らっているわけでもない。ただ静観しているだけの、人ならざるもの。それが今回のテーマ。からの、最恐なんです(笑)。

今回の強強ビジュアルバージョンの林原めぐみさん
今回の強強ビジュアルバージョンの林原めぐみさん

 

畏怖もせつなさも孤独も包み込んで作った楽曲

――曲は今回、どんなことを考えながら制作されたんですか?
林原 曲を作ったのも、レコーディングしたのも、実は去年なんです。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が終わって、世間的にはまだまだザワついていたけれど、私としては「エヴァロス」ならぬ、「エヴァ安堵」みたいな状態にあったところにお話をいただいて。そこから「エヴァ」に対する気持ちをあらためて呼び起こさなきゃなぁ……と思っていたら、「今回のパチンコでは、初号機がゴジラと一緒にキングギドラと戦います」と説明されて、「起こすも何も、もうそこは、どうでもいいか」って開き直った(笑)。「シン・エヴァ」のあれこれは、ちょっと1回忘れよう、と。

――一旦切り離して考えよう、と。
林原 そう。ストーリーもWILLEの存在しない、ミサトさんがNERVにいる世界での話だったし。だからあくまでこのパチンコでのストーリーの内容に倣う気持ちと、あとはもう、自分の目線をどこに置くかの問題ですよね。

――「最恐」に繋がる話でしょうか。
林原 そう。これまでのパチンコの「エヴァ」のための曲……「集結シリーズ」と私が勝手に呼んでいる、「集結の園へ」「集結の運命」の2曲では、初号機目線だったり、世界の流れ全体を俯瞰で見ている目線で歌詞を書いて来たんです。「集結の運命」で一度、あの世界を外側から見たからには、今回も外側から攻めるかな……みたいなのが始まりでしたね。あとは、私自身も、「ゴジラ」オタクのみなさんほどではないにせよ、「ゴジラ」シリーズには思い入れがあるんです。庵野(秀明)さんの撮った「シン・ゴジラ」はもちろん、「三大怪獣 地球最大の決戦」や「ゴジラ対ヘドラ」が昔からすごく好きで。世代的に、ゴジラをある種のヒーローのように見てきた。

――そうなんですね。
林原 だから自分の中に、ゴジラに対する敬愛もあれば、キングギドラに対する気持ちもあって。キングギドラって、何だろう……うまく言葉にしづらいんですけど、ちょっとせつないんですよね。絶大なる恐怖の対象でありながら、どこか地球で、孤独を感じさせる。

――設定も、デザインも、怪獣たちの中で異物のようなところがありますよね。
林原 そうしたいろんな「ゴジラ」の歴史を踏まえつつ、その根底にあるものを大事にしようと思ったんです。庵野さんの「シン・ゴジラ」のゴジラとはまたちょっと違うんだけど、地球の敵、人類の敵でありながらも、どこかヒーロー像が拭えない感じ。今回初号機と融合することもあって、そこを意識しようかなと考えました。その上で、結局はゴジラ、初号機、キングギドラの三つ巴の戦いを外から見ているだけの私として、人に繋がるようなワードを選びたいな、と。

――人に繋がる?
林原 立ち上がるような気持ちを伝えたいんですね。それは私の中でいつもそうで、(「スレイヤーズ」の)リナ・インバースのいる世界を映像として意識して書いた曲であろうと、ゴジラを意識して書いた曲であろうと、根底には人が大変な状況から立ち上がるときの気持ちを込めたいと思っているんです。……それにしても、キングギドラが使徒って、ねえ?

――PVのナレーションで設定が明かされたときは驚きました。
林原 言ってみればこういうのは、「エヴァ」が「シン・エヴァ」でちゃんと終わったからできる本気の遊びともとれるし、一方で「エヴァ」と「ゴジラ」が本格的にコラボするという意味では、本気の本気の企画ともとれるし……っていうようなところで、バランスは難しいですね。ただ、遊びだとしても、一度終わった気持ちでいる人も多い「エヴァ」に手をつけるって、結構な行為だと思うので、冒涜にならないようにも意識しました。たとえずっと作品に関わっていた人間だとしても、「林原めぐみが歌うならいいだろう」で済ませるんじゃなくて、「そう来たか!」と納得してもらえる作りにしないといかんよなと。

――歌い出しからハイトーンのシャウトですし、その後のキー(音の高さ)も林原さんのこれまでの楽曲の中でも、かなりチャレンジングな方では?
林原 高いです! そこもまた、林原史上最恐の要素ですね。多分、作曲のたかはしごうさんの意図は、「人じゃないところまでいってください」みたいな感じだったんじゃないかと思います。もうちょっと歌いやすくしてくれよ?って思う気持ちもあったけど、それだとゴジラ対エヴァンゲリオンにキングギドラも混ぜ込まれた世界にはきっとたどり着けないんだろうなぁ。だからサビの転調で、あえて地声で歌いきったりもしたんです。ファルセット(裏声)で歌う解釈もありかなと思ったんですが、がんばって地声で出した方が、そのキツキツ感をあえてのせる方が、よりエモいなと。

――もう1曲の「集結の時~Territory~」のもアグレッシブな曲調で、歌詞も意味深です。
林原 1曲目と少し毛色を変えたものにしつつ、こちらも「集結」にしようと思ってタイトルは決めました。「Territory」=「領域」という言葉は、「動物の戦いはそもそも縄張り争いから始まる」みたいな発想から考えついたものです。そこからゴジラたちのテリトリー争いを、人の問題に落とし込みたかった。

――どういうことでしょう?
林原 パーソナルスペースなんて言葉がありますけど、「ひとりでいる方が楽」「大勢の方が楽しい」「ふたりでいると、最初は楽しかったけど、だんだん不安になる」って、人それぞれですよね。人と人との距離、パーソナルスペースの感覚って、個人で微妙に違う。それはたとえ親子でも、恋人でも、夫婦でも、同僚でも、どんなに仲の良い親友でも同じ。なのになんだか、同じ場所を共有することが幸せかのように押し付けられたり、SNSを含めて、パーソナルスペースがどんどん浸食されている気がする。

――距離感がおかしくなりますよね。
林原 これはよく言うんですけど、友達が辛い目にあったときに、「応援してるよ」とか不特定多数にツイートするよりも、極端な話だけど、相手の家に行けよ、みたいな。まあ、それは無理でも(笑)本人に伝えようよ、みたいなね。それから、どなたかにご不幸があったときに、追悼の長文を投稿する人と、報せを聞いてから三日三晩泣き続けて何もしなかった人。どちらもそれぞれの悲しみ方であって優劣はないのに、今の世の中では前者の人の方が故人への愛が深かった、距離も近かったように思われてしまう。書きたい人はいいけれど、「絶対に思い出を投稿しなきゃいけない」みたいな雰囲気はどうかな…と。友達かどうかって確認し合うもんじゃないし、愛情にしたって可視化し続けないと不安になってしまうのは、違う気がする。

――たしかに。
林原 人って、もっともっとシンプルで、世の顔色うかがうよりも、根っこにある本能は泣いてないか? 疲れてないか? もっと一途な本能というか、自分の場所、テリトリーも大事にしてほしいな……というのを、ゴジラの姿に重ねてみました。私にとっての「ヒーローとしてのゴジラ」の像って、そういう、倒れて、何度目を閉じても、絶対にふたたび目を開ける存在のイメージなんです。

――人と人の距離感の話は、何だか「新世紀エヴァンゲリオン」を思い出しました。「ヤマアラシのジレンマ」とか言っていたころの。今回のパチンコの設定があってのこととはいえ、「シン・エヴァ」を経て林原さんの中からまたそうした問題意識が出てくるのは、不思議な感覚です。
林原 ああ~。別に昔の「エヴァ」っぽさを入れ込もうとはしたわけではないけど、血の中にいますからね。私自身が「エヴァ」を通して考えていたこともいますし、血の中にはレイちゃんもいれば、ユイさんも、なんなら初号機もいて、ふらっと顔を出す。それがMEGUMIという作詞家さんらしさかな、って。

――それにしても、あらためて思いますが、「エヴァ」は完結しても、まだまだ展開が続きますね。
林原 今度「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のBlu-rayも出るし、あと、舞台劇になるんでしょ(笑)? どうなるのかしら。完結したとはいえ、サブの展開はこれからも、いろいろあるかもしれませんね。そういえば、このあいだフジテレビの「ミュージックフェア」にひょんなことから出演しましたけど、あの現場にも「エヴァファン」のスタッフさんが沢山いて、20年前くらいにちょっと冷やかしみたいな感じでTVに呼ばれたときとは全然扱いが違ったの。本当に手厚く、いろいろしてくださった。エヴァ愛は、これから、どこへ、どう流れていくんでしょうね。

「集結の果てに」ジャケットデザイン
「集結の果てに」ジャケットデザイン

【取材・文:前田久(前Q)】

■林原めぐみ「集結の果てに」
発売中/1320円(税込) ※初回製造分のみデジパック仕様

リンク:林原めぐみ公式サイト
    キンクリ堂内「集結の果てに」ページ
    キンクリ堂公式Twitter・@kinkurido

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