アニメ

「次(THE NEXT)」を描く河森正治最新作「重神機パンドーラ」発表会レポート

「パンドラの箱が開いてしまった時代に残された希望は何だろう」――。「マクロス」シリーズ、「アクエリオン」シリーズを手掛ける、河森正治監督の新作が10月17日、東京六本木のニコファーレで開催された「河森正治 NEW PROJECT BRIEFING」にて発表されました。

イベントには河森正治監督が登壇。「重神機パンドーラ」というタイトルとスタッフを発表すると、この作品に込めたコンセプトを明かします。

「いまの時代は科学技術の進歩が速すぎる。ひと昔前では未来を予測しながらSFアニメを作っていましたが、いまは今日考えたことが翌日には発表されている時代。素材技術、AI技術、バイオテクノロジー技術の進歩が著しくて、時代に追い立てられている感じがします。今回は、その中で描けるヒューマンアクションを追求してみたいです」

タイトルの「パンドーラ」とはギリシャ神話に登場する人類最初の女性の名前。彼女はゼウスから贈られた箱を開けてしまい、その中に込められていた災いを世界中に撒いてしまいます。かくして世界は災厄に満ち、人々は苦しむことになるのですが、その箱の中には最後に「希望」が残されていた――という逸話があるのです。「今はパンドラの箱が開いてしまった時代のようなもの。残された希望は何だろうと思ったんです」と語る河森監督により、発表された新作「重神機パンドーラ」の舞台は、2031年の“ネオ翔龍(シャンロン)”という中国をモデルにした絶対防衛都市。そこでは過去に、量子リアクターの暴走により「翔龍クライシス」と呼ばれる事故が発生して環境が激変、特異進化生物「B.R.A.I(ブライ)」が生まれたことで、人類が絶滅の危機に瀕している事態が起こっています。物語はそのネオ翔龍に住む、追放された天才科学者のレオン・ラウと、彼と家族契約を結ぶクロエがB.R.A.Iに対抗するために独自の研究を行う……というもの。河森監督は物語に登場する都市・ネオ翔龍を作るために中国の様々な都市へ足を運び、取材を重ねたそうです。

制作は「マクロス」シリーズを手掛けているサテライト。監督の佐藤英一さんは、河森監督と「イーハトーブ幻想~KENjIの春」以来20年の付き合いのクリエイター。代表作には「ノブナガ・ザ・フール」や「アクエリオン・ロゴス」があります。また、シリーズ構成は現在も「マクロスΔ」で河森監督とタッグを組む根元歳三さん、そしてキャラクターデザインは「マクロスF」の江端里沙さんが担当されます。

今作で人類と敵対することとなるB.R.A.Iは生物、機械、植物などの枠を超えて融合して生まれた存在。それに対して人類が対抗するために用いる多目的可変ビークル「MOEV(モーヴ)」について河森監督は「アニメというよりは、特撮作品に登場するようなメカです。ロボットものとヒーローものの中間あたりに位置するメカで、それが怪獣(B.R.A.I)と戦うという感じですね」とコメントし、人類とB.R.A.Iの戦闘シーンへの期待をますます高まらせます。と、思いきや「いま絵コンテを描いているんですが、ひさしぶりに歌を歌わない戦闘シーンを描いています(「マクロス」シリーズは歌を武器にして戦うため)。どうやって盛り上げたらいいんだっけ?(笑)それが久しぶりの挑戦ですよね」と、まさかの告白に会場が笑いに包まれる一幕も。

イベントには、主人公レオン役の前野智昭さんと、クロエ役の東山奈央さんが登壇され、まだ物語の詳細について明かすことの出来ないギリギリの制限のなかで、「重神機パンドーラ」の内容を掘り下げていきます。東山さんからは「この作品はいろいろと美味しそうな食べ物が出てくるんです」という情報が明かされ、中国で取材をしていて楽しいのは、美味しいものをたくさん食べられることと河森監督が盛り上げました。また、前野さんは「今回の作品のオーディションのときに、なんとしても合格したいなと行く途中で『一万年と二千年前から~』の歌(創聖のアクエリオン)を聴きながら(笑)、自分を高めて高めて会場に向かったことを覚えています。河森監督の作品でいつかメインキャラクターを演じることが自分の目標のひとつでした」と、オーディションのときにかけた想いと喜びの気持ちを明かしました。

最後に前野さんと東山さん、河森監督からこの作品にかける想いが飛び出しました。

「THE NEXTという企画が発表されてから私もどんな話になるんだろうと気になっていました。まさか、私がこの場に立たせていただくことになるとは夢のような気分です。今日はイベントが始まる前に河森監督からいろいろな設定などのお話を聞いていました。アフレコをしていると、現代のいろいろな問題を絶妙なかたちでエンタテインメントにしている作品だなと感じています。作品を観ているとかっこいいとか、すごいとか、驚くところがいろいろあると思いますが、今日の発表をご覧になったように河森監督がいろいろな問題提起をしている作品でもあります。ぜひこの気持ちを春まで持っていただいて、いろいろな角度でオンエアを楽しんでもらえればうれしいです」(東山)

「僕がこれまで培ってきた技術をフルオープンにしてアフレコに臨んでいます。レオン・ラウという役に、心を込めて命を吹き込んでいこうと思います」(前野)

「春に向けてスタッフ一同がんばっています。第1話がだいぶ形になってきて、手ごたえを感じているところです。ものすごい勢いで時代が加速していく中で、その進化に追いつかれないように、新しいものを作っていきたいと思います。ぜひご期待ください。今日はありがとうございました」(河森)

来年春に放送がスタートする「重神機パンドーラ」。河森正治監督が新たに開く世界に私達はどんな希望を見つけるのでしょうか。今後の新情報に注目です!

【文:志田英邦】

■TVアニメ「重神機パンドーラ」
放送  :2018年 春放送開始
スタッフ:原作…河森正治・サテライト/総監督…河森正治/監督…佐藤英一/シリーズ構成…根元歳三/キャラクターデザイン…江端里沙/重神機…河森正治/アニメーション制作…サテライト
キャスト:レオン・ラウ…前野智昭/クロエ・ラウ…東山奈央

リンク:TVアニメ「重神機パンドーラ」公式サイト
    公式Twitterアカウント・@unit_pandora
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