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刺激的で油断ならない物語づくりの現場「重神機パンドーラ」脚本:根元歳三インタビュー

河森正治さん原作・総監督作品「重神機パンドーラ」。特異進化生物B.R.A.Iに対抗すべく結成された特殊部隊「パンドーラ」の戦いがいよいよ本格化していくなかで、今作のシリーズ構成・脚本を担当される根元歳三さんにお話を伺いました。彼が語る、パンドーラの敵とは?

――「重神機パンドーラ」が第4話までオンエアされました。ここまでは全話根元さんが脚本を書かれていますが、振り返っていかがですか?

根元:第4話までは特殊部隊パンドーラが結成され、レオンがそこに入隊するまでを描いています。そこまでかけて「パンドーラ」という作品の王道パターンを示したつもりです。レオンという主人公を軸に、B.R.A.Iとの戦闘などを通じてのキャラクター同士のドラマが本作の王道パターンですよ、と。ちなみにフィルムになったものを見て、自分がイメージしていたよりもレオンが二枚目だったなぁと(笑)。僕が考えていたレオンは、もっと「もっさり」していたんです。もちろんキャラクターデザインもカッコいいし、前野(智昭)さんの芝居もあって、それに戦闘シーンもあるから、そんなに「もっさり」もしていられないかとは思っていたんですけどね。

――レオンの過去も描かれますが、彼はもともとかなり内向的な人物だったんですね。

根元:そうですね。レオンは、今よりももっと人づきあいの必要性を感じていない、研究の虫でした。当初はそこから本編をスタートさせようというアイデアもあったのですが、さすがにその状態だとほかのキャラクターとの会話が難しいと思いまして、当時の自分を反省し、今の性格になってから……物語を始めることにしました。

――クロエとの「家族契約」の応酬は楽しいですね。

根元:そうですね。契約の条項をめぐるやりとりは楽しいです。過去に何があったんだろう、と想像してしまいますね。当初の設定では家族契約は108条まであって(笑)。これから随時、新しい家族契約の条項が判明していくと思いますし、もっと増えていくかもしれません。

――今回は根元さんがシリーズ構成を担当され、複数の脚本家の方が各話をお書きになっています。

根元:大野木寛さん、入江信吾さん、望月真里子さんのお三方に入っていただいています。今回は、特に同じ方向性を向いていない方、自分には書けないものを書いてくださる方にお願いしました。もちろん、伏線ややらなきゃいけないことだけは抑えていただきながら、それ以外は、おもしろいアイデアがあったらどんどん織り込んでいただくようお願いをしました。

――入江さんは第5話、第6話の脚本を担当されています。

根元:入江さんはエンタメを書ける方なんです。第5話の時点で、メインとなるキャラクターは一通りそろってきているので、メンバー同士の楽しい掛け合いを書いていただこうと思っていました。ダグがグレンのことを「番長」と呼び、グレンが「大尉だ!」と返す。こういったことの発明がすごいですね。第5話と第6話はクイニーのエピソードが中心ですが、入江さんの筆のおかげで、重いものを背負ったクイニーがもつ、本来の純粋さや真っ直ぐさを表現できたと思います。

――望月さんは第7話を担当されていますね。

根元:女性の脚本家の方にも参加していただきたいと思い、第7話を担当していただきました。女性キャラクターに思わぬ個性を足していただけて、すごく魅力的になりましたね。

――大野木さんにお願いしたポイントは?

根元:SFとシブい話をしっかりと描ける方に入っていただきたいと思っていたんです。ダグがスナイパーという設定が決まったときから、ここは僕じゃなくて、オトナの話が書ける方に担当していただいたほうが良いだろうと思っていました。あと、大野木さんは神話にもお詳しいので、ミステリアスなキャラクターのバックグラウンドを大野木さんに補強していただいています。とても助かりました。

――ホン読みはどんな様子でしたか?

根元:僕はとても楽しいかったですね。そもそも今回の話のベースには「量子論」があって。第2話の脚本を打ち合わせしているときに、河森さんが「(ハイパードライブは)多重次元からエネルギーを集めているという要素を入れてほしい」とおっしゃって。ええっ!? そういう仕組みなのかと。そう言う想定していなかった設定が次々と生まれる。刺激的で油断ならない打合せでした(笑)。

――今回の物語は明確に、暗躍している人物がいますね。そのボスの名前は……Mr.ゴールド。すごい名前ですね。

根元:僕が参加する前から企画書にMr.ゴールドという名前があったんです。良い名前だと思って、そのまま使わせていただきました。アメコミのヴィラン(「悪役」「憎まれ役」のこと)っぽい名前だなと。ただ、今のようなルックスになるとは思ってもいませんでしたけど(笑)。彼が火鍋を食べるシーンを書いたら、河森さんが「ゴールドに口はないよ」……と。

――彼のそばにはジーク、ワン、フォーがいますが、敵はどんなチームなのでしょうか?

根元:チームというよりは、初期パンドーラの関係性と近くて。忠誠心はあまりない。みんな利害が一致して集まっているだけで、お互いに利用しあうことで、それぞれの目的を果たそうとしている。

――ジーク、ワン、フォーはどんなキャラクターなのでしょうか。

根元:ジークは、中村(悠一)さんが楽しそうに演じられているのがとても印象的です。かなりセリフが多い役なのですが、大野木さんが芝居がかった口調を考えて下さって。しゃべり口調やその内容に注目してもらえると。ワンは主義主張よりも強さを純粋に求めている存在。だからこそ自分同様、より強くなる可能性があるクイニーに複雑な思いを抱いているわけです。フォーは寡黙なキャラクターなのですが、後半に見せ場があるのでぜひ期待していただきたいです。

――今回のストーリーは、大きく分けて何部構成ぐらいのイメージでしょうか?

根元:3部構成ですね。第1部はB.R.A.I編、第2部でさらなる敵が現れて、第3部からクライマックスという感じです。まだまだこれから物語が大きく展開していくので、ぜひ楽しみにしてください。

【取材・文:志田英邦】

■テレビアニメ「重神機パンドーラ」
放送:TOKYO MX…4月4日より毎週水曜23:30~
WOWOW…4月6日より毎週金曜21:30〜
BS11…4月6日より毎週金曜23:30~
    MBS…4月7日より毎週土曜27:38〜
配信:Netflixにて日本先行独占配信/全世界展開決定
スタッフ:原作、総監督、重神機デザイン…河森正治/監督…佐藤英一/シリーズ構成…根元歳三/キャラクター原案…江端里沙/キャラクターデザイン…安彦英二/B.R.A.Iデザイン…宮崎真一/アニメーション制作…サテライト
キャスト:レオン・ラウ…前野智昭/クイニー・ヨウ…花澤香菜/ダグ・ホーバット…津田健次郎/クロエ・ラウ…東山奈央/グレン・ディン…内田雄馬/ケイン・イブラヒーム・ハサン…石塚運昇/ジェイ・ユン…梅原裕一郎/セシル・スー…茅野愛衣/ジーク…中村悠一/ワン…近藤孝行/フォー…石川界人/ロン・ウー…石田彰

リンク:「重神機パンドーラ」公式サイト
    公式Twitterアカウント・@unit_pandora
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