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大西沙織×近藤玲奈「ブギーポップは笑わない」対談“得体の知れないリアルな怖さが漂う作品”

作家やアニメーターなど多数のクリエイターからも愛される、珠玉の名作「ブギーポップは笑わない」シリーズ。20周年イヤーの締めくくりに放送が始まったTVアニメでは、「ブギーポップは笑わない」「ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター」「夜明けのブギーポップ」が映像化され、ファンから絶賛の声が上がっています。

今回は、霧間凪役の大西沙織さんと末真和子役の近藤玲奈さんの対談から、本作の魅力に迫っていきます。

――「ブギーポップ」シリーズの魅力をどのように感じていますか。

大西 実はオーディション前は「ブギーポップ」という作品を知りませんでした。でも、凪役に決まってから、たくさんの人に祝福いただいて、そのすごさを知りました! その後、原作を読んで感じたのは、さまざまな魅力が詰まっているということ。物語やキャラクターももちろんですが、私が気に入ったのは、気がつくと没入して読んでいる世界観。作品全体に得体の知れない怖さが漂っていて、どんどん先を知りたくなるんです。そして、考えさせられることも多いなって。凪のお父さんの霧間誠一は小説家。著作を通じて作中の人たちに影響を与えてきた人物なのですが、そのことばが心に響くんです。原作を読んでいくと、今まで私がもっていた“常識”や“良識”は本当に正しかったのかと感じさせられます。きっと、多くの読者に、これまでの人生を振り返るきっかけを与えたのではないでしょうか。

近藤 私もオーディションを通じて、この作品を知りました。「ブギーポップは笑わない」の刊行年が私の生まれた年とほぼ同じで、親近感を覚えました。そして、実際に作品を読んで感じるのは“不思議なリアルさ”です。起こっている出来事は実際にはあり得ないのですが、日本のどこかで同じような現象が発生しているんじゃないかと……そう思わせてくれる世界観にどっぷりとハマりました。

大西 うんうん。

近藤 大西さんが、キャラクターはみんな魅力的だと話していましたが、私が特に好きなのは凪なんです。

大西 うれしい! どんなところ?

近藤 悪な雰囲気を醸し出しながら、正義の味方として戦う姿がすごくかっこいいなと思います。あこがれます!

大西 私があえて好きなキャラクターをあげるなら、「夜明けのブギーポップ」編の黒田さんです。

近藤 わかります!

大西 「笑わない」では凪はすでに人間としてできあがっていると感じたのですが、その凪があるのは、黒田さんがいるから。凪が正義の味方となる原点の人物だと考えると、黒田さんのポイントが上がります。

――キャラクターを演じるときに気をつけていることを教えてください。

大西 最初に凪を演じたときは、しゃべり口調がいわゆる男ことばなので、乱暴な感じを意識していたんです。でも、ディレクションで、女性らしさを失ってほしくないと言われました。口調と、凪の女性らしい部分とのバランスをとるのに気を使っています。凪は一匹狼風なのですが、末真や(紙木城)直子としゃべっているときは世話焼きな一面もあって、弟の(谷口)正樹にも愛情を注いでいます。敵に対する尖った部分と、やさしさが滲み出る部分のギャップは演じがいがありますね。

近藤 末真は相手の話をじっくり聞いて、それに対して自分の考えを含めて答えてくれる女の子です。それでいて好奇心旺盛で、どんな状況にもくじけない心の強さをもっているので、そのしっかりした芯を表現したいと思いました。特に印象に残っているのは「VSイマジネーター」編で飛鳥井仁に立ち向かう姿。本当に肝が据わっていました。見習いたいです(笑)。

大西 誰のことでも助けようとするからスゴイよね!

近藤 人のために立ち上がろうとするけど、駆けつける前に事件が解決するのが少し切ないですけどね(笑)。

大西 人の役に立ちたいという意味では2人は似ていますね。でも、その方向性は違います。末真は“知りたい”という好奇心が原動力。凪は、“事件を解決したい”という思いが強いタイプですね。

――第二話では、凪と末真が会話するシーンがありました。

大西 この作品の登場人物のなかでは、凪と末真って、かなりまともな人物だと思うんです。だから、落ち着いて、かみ合った会話ができました。

近藤 そう思います。同じ波長を感じながら、演じていました。

大西 2人の会話がしっくりくるもうひとつの理由としては、「笑わない」の前日談である「夜明けのブギーポップ」で、凪と末真の間にある程度の人間関係ができあがっていたからなのかなって。だから、凪としても、末真を自分に近い人間として、懐に入れて会話ができたんだと思います。

近藤 大西さんの凪の演技にすごく安心感を覚えるんです。とても温かみを感じます。

大西 ありがとう。以前、悠木(碧)さんにも、「大西ちゃんの演じる凪は人のよさが滲み出ている」と言われたことがあります(笑)。

近藤 わかります! 

――だから、凪に大西さんが選ばれたのかもしれないですね。大西さんから見て、近藤さんの末真はどう感じられますか?

大西 末真は、いろんな人を助けなきゃと、なかば空回り的に奮闘するのですが、その雰囲気がなんとなく近藤ちゃんに近いなって(笑)。何事にも動じない強さも近藤ちゃんにはあって、そんなところもリンクしているように思います。

近藤 確かに、私も一歩引いて人間観察するタイプなので、そこが末真に通じているのかもしれませんね(笑)。

――これまでで印象に残っているエピソードを教えてください。

大西 「VSイマジネーター」編で、衣川琴絵との戦闘に突入した正樹を救うために凪が登場するのですが、そこで正樹を凪がスタンガンで殴るシーンは衝撃的でした(笑)。同時に、命を救うためにはケガくらいいとわないという強い気持ちは、家族だからこその必死さだったのでしょう。凪の家庭もいろいろあるけれど、悪くないなと感じました(笑)。

近藤 第6話のセリフが衝撃的でした。Bパートで末真が(織機)綾と会話をしているシーンがあるのですが、「このままじゃ、彼に嫌われてしまう」と言った綾に対して、末真がそれって他の人の『嫌いになる権利』を侵害してるのよ」とさとすシーンがあったんです。そのことばに衝撃を受けました。なんて核心を突いたことを言うんだろうって。

大西 末真は誠一の本の影響を受けているから、ことばでいちばん説得力があるのは彼女なのかなと思うんですよね。

――「夜明けのブギーポップ」編で思い出に残っているエピソードはありますか。

近藤 私は来生先生がすごく印象に残りました。ひとつは、白衣っていいなと思ったから(笑)。あとは、彼女の好奇心に共感しました。私も進化薬を手に入れてしまったら、誘惑にまけて使ってしまいそうだなって。そんな心情の描写がリアルでした。

大西 私は、黒田さんとモ・マーダーが凪と対峙しているうちに、自分なりの正義を見つけるところですね。それは所属している機関の正義とは違うのですが、他人との関わりを通じて考えを変えられたというのは、本当の正義を彼らが見つけたということなのでしょう。

――お2人の話から、作品の魅力がたっぷりと伝わってきました。ありがとうございました。

【取材・文:星政明 撮影:松本順子】

■テレビアニメ「ブギーポップは笑わない」
放送  :AT-X…毎週金曜21:00~
     TOKYO MX…毎週金曜22:30~
     テレビ愛知…毎週金曜27:05~
     KBS京都…毎週金曜24:30~
     サンテレビ…毎週金曜24:30~
     BS11…毎週金曜23:00〜
配信  :AbemaTV…毎週金曜22:00~ その他サイトでも順次配信予定
スタッフ:原作…上遠野浩平(電撃文庫 刊)/原作イラスト…緒方剛志/監督…夏目真悟/シリーズ構成・脚本…鈴木智尋/キャラクターデザイン…澤田英彦/副監督…八田洋介/総作画監督…筱 雅律・土屋 圭/アニメーション制作…マッドハウス
キャスト:ブギーポップ・宮下藤花…悠木 碧/霧間 凪…大西沙織/末真和子…近藤玲奈/竹田啓司…小林千晃/新刻 敬…下地紫野/紙木城直子…諏訪彩花/早乙女正美…榎木淳弥/田中志郎…市川 蒼/百合原美奈子…竹達彩奈/エコーズ…宮田幸季/谷口正樹…八代 拓/織機 綺…市ノ瀬加那/飛鳥井 仁…細谷佳正/安能慎二郎…長谷川芳明/衣川琴絵…阿澄佳奈/スプーキーE…上田燿司/水乃星透子…花澤香菜

リンク:アニメ「ブギーポップは笑わない」公式サイト
    公式Twitter・@boogiepop_anime
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