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「魔法少女特殊戦あすか」スタッフ対談【第2弾 前編】 深見真×山本秀世「第12話も、くるみは最後まで飛ばしっぱなしです!」

魔法少女という題材ながら、自衛隊との連携やテロリストとの戦いといったハードな物語がひと際目を引く「魔法少女特殊戦あすか」。2019年1月から放送が始まったTVアニメも、いよいよクライマックスへと向かっていきます。WebNewtypeでは、原作者であり、TVアニメのシリーズ構成も担当している深見真氏を軸にインタビューを実施。

第3回目は、深見真氏と山本秀世監督の対談の前編をお届けします。

――本作への第一印象はどのようなものでしたか。

山本:原作を拝見したら拷問シーンがあって「これはえらいのがきたな」と思いました(笑)。同時に、ハードな世界設定やバトルにはとても魅力を感じましたので、これはやり甲斐のある作品になりそうだと思い、受けさせていただきました。登場人物がいつ命を落としてもおかしくなさそうな一種の危うさが魅力のひとつで、拷問シーンなども含め、他の作品にはあまり見かけない部分が「あすか」のアイデンティティなのかなと思っています。

――監督として、最初に描きたいと思ったことはどのようなところでしょう。

山本:TVアニメという形でどこまで許されるかという問題はありましたが、忖度せずできるところまでやろう、それこそが「あすか」である、という差別化に繋がる……そういう思いがありました。生首でお手玉とか、意外といけるものですね……(笑)。

深見:山本監督は、「これは絵として動かすにはちょっときついです」というように、明確に基準を示してくださるのでこちらとしてもとても分かりやすかったです。

――メインキャラを描くうえで気を付けたことはありますか。

山本:戦いは勇ましく。でも、着地するときに膝を少し内向きにしたりと、男性っぽくなりすぎないように気を付けました。あすかは心に弱さを抱えつつも凛々しいというキャラ造形ですので、最初はうまく両立させられるだろうかと手探りの部分もありました。でも、洲崎(綾)さんの芝居にも助けられ、矛盾した感じにはならなかったと思っています。くるみはいわゆる"顔芸"のときは振り切ってもらうよう、作画スタッフにお願いしました。ミアは、マジカル・ファイブの中では一番分かりやすいキャラですね。松井(恵理子)さんにもイメージ通りにかっこよく演じてもらえました。ペイペイは出番が少なくて申し訳ない気持ちもありましたが、少ないなりに、日笠(陽子)さんに整形前と整形後で演じ分けをお願いしたりしました。

深見:そして監督はタマラ推しなんですよね(笑)。

山本:推しって(笑)。「あすか」は洲崎さんをはじめ役者さんに恵まれた作品になったと思っています。

深見:本当にそう思います。でも、実は僕と山本監督が初めてお会いしたときはひと悶着あったんですよ。

――差し支えなければ、どのようなことがあったのでしょうか。

深見:原作をご覧の方はお分かりだと思いますが「あすか」はパンチラ厳禁の作品なんです。決して見えないんですよ。ですので、山本監督にもその旨を最初にお話したのですが、山本監督はサービスシーンが多めな作品も監督されておられるからか、一瞬雰囲気がピリっとして(笑)。

山本:そんなことないですよ!(笑) 深見さんは脚本家としてだけでなく、原作者として僕たちの意図や要望も事細かに汲んでくださって、制作しやすい環境を整えてくださいましたので感謝しています。温和な方なのに、打ち合わせすると「拷問」とか「殺す」とかそういう単語がよく出てくるので、プライベートで交友を持ったらやばさが見えてくる人なのかもしれないとは思いましたが(笑)。

深見:山本監督こそ、第4話の拷問シーンは明らかに原作超えしていたじゃないですか!?(笑)

山本:いえいえ、原作通りにやっただけですよ!? あそこは高橋(李依)さんのすばらしいお芝居で凄惨さが増しましたね。こういう残酷なシーンもひっくるめての「あすか」だと思っていましたので、うまくいったと思います。視聴者のみなさんの感想を追いかけてみたら「これはキツい」というものも結構あって。

――感想をリサーチしてみていかがでしたか。

山本:「グロくて引いた」というお声を見かけることもあって、こういうのに耐性がない方も結構見てくださっているのかな、とは感じました。また、紗綾子が強くなろうと決心してプールの飛び込みをする第3話や、第6話で悲しい過去を持つサンディノの生い立ちに考えさせられたと言ってくださる方たちもおられて、お話をきちんと評価していただけているなと感じました。それはもちろん原作のすばらしさあってこそですが、僕らもより一層制作しがいが出るというものです。

――サブキャラクターたちもとても魅力的に描かれていますよね。

山本:そう思います。個人的には、ミアと組んでいるCIAのジュリアを主人公にしてハードなスパイモノとか作れたらおもしろいんじゃないかなと思ってます(笑)。ミアの軽口をさらっと受け流しそうな、かっこいい大人の女性を演じてくれました。

深見:山本監督イチオシのジュリアは、行成(とあ)さんのお芝居もとてもよかったですね。「あすか」って、言ってしまえば「マーベル・シネマティック・ユニバース」なんですよ。

山本:それはどういうことですか?

深見:たとえば「アベンジャーズ」には大勢のスーパーヒーローたちがいて、それを管理する組織であるS.H.I.L.D.のエージェントたちがいるじゃないですか。そして、フィル・コールソンをはじめとするそのエージェントたちも、一般人と比べるとめちゃくちゃ強いんです。その辺をモチーフにしている面もありますので、公安の刑事たちも魔法少女を抜きにすればアクション映画の主人公を張れるレベルで強いんですよ。

山本:なるほど。単なるにぎやかしではないんですね。

【取材・文:勝田周】

■TVアニメ「魔法少女特殊戦あすか」
放送  :MBS… 毎週金曜日 26:25〜
     TBS… 毎週金曜日 26:25〜
     CBC…毎週木曜日 26:35〜
     BS-TBS… 毎週土曜日 25:30〜
     AT-X… 毎週日曜日 22:30〜 (リピート放送あり)
配信  :Amazon Prime Video…放送に先駆け、国内独占配信
スタッフ:原作…深見真・刻夜セイゴ(掲載月刊「ビッグガンガン」スクウェア・エニックス刊) /監督…山本秀世/シリーズ構成…深見真、海法紀光/キャラクターデザイン…鈴木陽子/音楽…R・O・N/アニメーション制作…ライデンフィルム
キャスト:大鳥居あすか…洲崎綾/夢源くるみ…関根明良/ミア・サイラス…松井恵理子/タマラ・ヴォルコワ…M・A・O/ラウ・ペイペイ…日笠陽子/与那嶺ちさと…竹達彩奈/牧野希美…高橋李依/羽田紗綾子…橋本ちなみ/飯塚義明…乃村健次/サッチュウ…菊池こころ 

リンク:アニメ「魔法少女特殊戦あすか」公式サイト
    公式Twitter・@MGSO_asuka
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