アニメ

のん、コトリンゴ、片渕監督が登壇した「この世界の片隅に」初日舞台挨拶

こうの史代さん原作の同名漫画を、数々の名作アニメーションを手がけてきた片渕須直監督が6年以上の歳月と限りない情熱を傾けて映像化した「この世界の片隅に」が、いよいよ11月12日(土)より全国公開となりました。

公開初日となる本日、東京・新宿のテアトル新宿にて舞台挨拶が行われ、主人公・すずを演じたのんさん、本作の音楽を担当したコトリンゴさん、そして片渕監督が登壇し、公開を迎えた今の心境と本作への想いを語りました。

冒頭、初日を迎えた感想を質問された片淵監督は「本当にたくさんの人が作った作品だと、みなさんご記憶いただけたらと思います」と、クラウドファウンディングで応援してくれた人たち、そしてスタッフ・キャストへ感謝の言葉を述べました。

また、片渕監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」に続き音楽を担当したコトリンゴさんは、「自分の人生の中でも一生の宝物になる作品の音楽を作らせてもらって幸せです」とコメント。

そんなコトリンゴさんが作られた音楽を聴いての感想を尋ねられると、片渕監督は音楽を収録した時期に亡くなられた作曲家の冨田勲さんが作曲した「きょうの料理」のテーマ曲を思い出し、まるで「すずさんの“きょうの料理”だ!」と感じたとのこと。そんな片渕監督の言葉に、のんさんとコトリンゴさんからは「すずさんの料理番組、みたいです!」という言葉も飛び出しました。

すずの印象について質問されたのんさんは、「日々の生活を一所懸命、だけれど楽しんでいる姿が印象的で素敵でした」とコメント。ご本人曰く“生活の才能がない”というのんさんですが、すずさんの楽しい姿をみて、ご飯を作り洗濯をするという生活の楽しさを知り、毎日が楽しくなったそうです。

そんなのんさんが演じたすずについて感想を求められた監督は、作画監督の松原秀典さんがのんさんの声を聞いた時に「僕たちの想像力の中の声が、なぜここに入っているのだろう」と語ったエピソードを披露。のんさんをはじめ、本作キャスト陣の素晴らしさに「こんなに恵まれた声の入り方はないと」と感想を述べました。

この作品で好きな場面として、のんさんは周作とすずが夫婦喧嘩をするシーンを挙げ、「ここで本当に夫婦になったと感じました」とコメント。2人の息がぴったりあった印象的な場面ですが、実はこのシーンは別々に収録されていたそうで、ひと足先に収録した細谷佳正さん演じる周作にあわせて何度も練習して収録に臨んだそうです。そんなのんさんを片渕監督は「全部普通に会話をしているのがすごい」と絶賛していました。

コトリンゴさんは好きなシーンに冒頭の「すずの絵の中で波のうさぎが跳ねる」シーンを、監督はちょっとひねって「すずが気を失って画面が真っ暗になり火花が散る」シーンを挙げました。

原作でこうの史代さんは多彩な手法でこのシーンを描いていましたが、アニメーションでもそれに負けないようにフィルムに傷を付けてアニメーションさせるシネカリグラフィーという手法を模した表現を行ったそうで、これはカナダのアニメーション作家ノーマン・マクラレンのオマージュとのこと。片渕監督はアートアニメーション系の作家が集まる日本アニメーション協会で本作の感想を求めたところ、ノーマン・マクラレンの話題は一切出ず、のんさんの感想しかでてこなかったと語ると、場内は笑いに包まれました。

そして「幸せに感じることは?」との質問に、のんさんは「ポテトチップとチョコレートを食べる時」と語り、場内の笑いを誘います。現在は食べるのを少し制限しているそうですが、そんなのんさんに対して監督からは「でも、この前キャラメルをたくさん食べてたよね」というツッコミが入るひと幕も。「キャラメルはまだ制限してないんです!」というのんさんの言葉に、場内はさらに大きな笑いに包まれました。

コトリンゴさんは仕事が一段落してぼんやりしている時とのことで、「なんでもないのにみんなと笑っている、そういうのがいちばん好きですね」と語りました。しかし片渕監督は“まだぼんやりできそうにない”そうで、日々の記録に朝食の写真をTwitterにアップするとコトリンゴさんが論評してくれるのが幸せと、すこし照れくさそうに語りました。

作品同様、とても暖かな雰囲気で進んだ舞台挨拶も終わりの時間。最後にみなさんからの挨拶で初日舞台挨拶は終了となりました。

のん:みなさんがどう感じられたのかすごく気になりますが、素晴らしい作品だと思います。ぜひお友だち、家族のみなさんに進めていただけたらな、と思います。ありがとうございました。

コトリンゴ:たくさんの方に私たちのすずさんに会いに来てもらいたいです。観た後に、きっといろんな話ができると思うので、お子さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、みんなで観ていただけたらうれしいです。

片渕監督:11月12日、ようやく封切りを迎えることができました。でも、これからがはじまりで、13日も14日も15日も、12月も1月も2月もあります。全国、いろんな映画館でやっている、どこにでも宿る愛です。もうすずさんはみなさんのものですので、どんどんすずさんに会いに映画館へ来てください。【取材・文=小川陽平】

■劇場アニメ「この世界の片隅に」
公開  :11月12日(土) テアトル新宿、ユーロスペース他で全国ロードショー
スタッフ:原作…こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)/企画…丸山正雄/監督補・画面構成…浦谷千恵/キャラクターデザイン・作画監督…松原秀典 /美術監督…林孝輔/音楽…コトリンゴ/プロデューサー…真木太郎/監督・脚本…片渕須直/製作統括…GENCO/アニメーション制作…MAPPA/配給…東京テアトル
キャスト:北條すず…のん/北條周作…細谷佳正/黒村晴美…稲葉菜月/黒村径子…尾身美詞/ 水原哲…小野大輔/浦野すみ…潘めぐみ/ 白木リン…岩井七世/北條円太郎…牛山茂/北條サン…新谷真弓 他

リンク:「この世界の片隅に」公式サイト
    公式twitterアカウント・@konosekai_movie
この記事をシェアする!

MAGAZINES

雑誌
ニュータイプ 2024年5月号
月刊ニュータイプ
2024年5月号
2024年04月10日 発売
詳細はこちら

TWITTER

ニュータイプ編集部/WebNewtype
  • HOME /
  • レポート /
  • アニメ /
  • のん、コトリンゴ、片渕監督が登壇した「この世界の片隅に」初日舞台挨拶 /