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タイトル通算8期獲得、史上最多対局数、史上最年長勝利など数々の記録を獲得した「神武以来(このかた)の天才」。昨年、現役棋士を引退した加藤一二三さんが、次に挑戦したものはなんと声優!
「何か新しいことをするのであれば、アニメーションの声優をしたいとお話ししていました。けれど、率直に言いまして、私は夢を言ったのであって、それがまさか実現するとはまったく思っておりませんでした。以前、音楽家の青島広志先生にオーケストラの指揮を教えていただいたことがあるのですが、そのときに加藤さんの声はテノールで、声質も音程もとてもいいと言われたことがあったんです。クラシックの大家である青島先生からそう言っていただけるということは、声は自信をもっていいのではないかと。そこで声優をやってみたいと手を上げた次第です」
加藤さんが出演した作品は、4月よりオンエアが始まったばかりの「レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~」。その第4話にて、主人公カトリーの助手ノアの通う大学にある巨大コンピュータの役を演じた。声のお仕事には手ごたえを感じていたようす。
「声優も将棋の対局も、楽しいしおもしろい、そして深いです。どんなことでも、将棋の対局と同じように、最善を尽くすというのが私のスタンスです。初めて挑戦をした声優の仕事ですけれども、やはり挑戦する以上は、なんとしても成功させたいという意気込みでした。ただ、私はこれまで2000局以上、将棋の対局を戦ってきましたけれども、対局の前日に負けると思ったことは一回もないんです。そういう意気込みにおいても、声優と将棋は共通していました」
コンピュータの役ではあるが、「機械的な声」や「感情入れた声」などいろいろなバリエーションを多彩に収録したのだとか。
「監督からも細かい指示をいただき、収録は非常に楽しかったです」
棋士として勝負の世界に生きてきた加藤さんは、アニメはお好きなのでしょうか?
「もともとアニメは好きで『赤毛のアン』(高畑勲監督作品/’79年)や『ニルスの不思議な旅』(鳥海永行チーフディレクター作品/’80年)、『名犬ジョリィ』(早川啓二チーフディレクター作品/’81年)を家族や子供たちといっしょに見ていました。今後も、児童向け作品などでいろいろとやってみたい役どころがあります。悪役とは言いながら、どこか少しズッコケているような、そういう憎めない悪役などはやってみたいと思います」。
声優・加藤一二三さんの今後の活躍を期待です。
取材・文:志田英那